1曲が、どこまでストレスを支えるか。

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11月30日に開催された
「パルマローザ 214回 ブラッシュアップセミナー」で
『ヘルスサポーターが理解しておきたい
ストレスとモチベーション』を担当した。
パルマローザのホームページにある
「活動結果レポート」には、
4人の方が感想を寄せておられる。

さすがパルマローザのメンバーだと思ったのは、
私が「ストレス」や「モチベーション」の定義にこだわっていることを、
しっかり理解してくださっていること。
そう、コトを論じるのに土俵を決めねば
守備範囲が決まらないし、決着もあいまいになる。
講演や論文を始めるときには、
定義や目標を整えてからスタートしたい。
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ストレスについて、
正しく把握していなかった人が多かったとしても、
それを無知と思う必要はない。
これまで、ストレスを論ずる人たちが
丹念に定義してこなかったからである。
いつもハンス・セリエの説に戻るのではなく、
その時代にわかっていることを加味して、
更新していく必要がある。
定義は、不変の真理とはいえない。
時代とともに見直す必要があるものが多い。

今回のセミナーで、
「慢性ストレス」や「手づくりストレス」というものがあること、
ストレスは簡単には「解消」できないものが多い。
あらゆるストレスを解消するなどということは、ありえない。
あるとすれば、それは死亡か認知能力を失った状態である。

一部の論者が「よいストレス」「悪いストレス」などといったのは、
ストレスが、好ましいモチベーションを
引き出すことがある、ということをいいたかったのだろう。
交通事故や親しい人との離別がきっかけとなって、
新しい意欲が起こることはある。
だとしても、それを「よい交通事故」「よい離別」などとはいわない。
事故や不幸と、転機や幸運とは
カテゴリー(定義)が違うように、
ストレスとモチベーションも、カテゴリーが違う。
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いずれにしても、ストレスについての理解度は、
ヘルスサポーターのサポート力の底力になる。
結果報告を書いた方々には、
その認識があるようなのはうれしい。
お1人、「ゆず」の曲を聴くことがストレス緩和法だと
書いていたが、少女のような、極楽のような
穏やかストレス環境がうらやましい。

危険分散という意味では、ゆずのほかに、
ワーグナーやプッチーニーや、
アンドレ・リューや、ナナ・ムスクーリや、
音楽ジャンルだけでも、多様性がほしいが、
世の中には、ストレスのダメージを受けない人、
ストレスそのものを感じない人も多いから、
余計なことはいうまい。

# by rocky-road | 2008-12-06 23:26  

人間研究家 ヘルスサポーター

人間研究家 ヘルスサポーター_b0141773_0331777.jpg
パルマローザのセミナーで、
「ヘルスサポーターが理解しておきたい
ストレスとモチベーション」という演題で
話をさせていただいた。

ヘルスサポーターに、なぜそんな話が必要なのか。
それはいうまでもなく、
人間、いや動物の存在は、モチベーションとストレスなしでは
説明しきれないからである。
ストレスの学会はいくつもあるから、
そういう話は専門家に任せておきたいが、
「ストレス&モチベーション学会」というのはなさそうだし、
仮にあったとしても、専門家は、その学問を
生活の中でどのように活用するかを説くのがヘタだから、
いわば翻訳家が代わってやるしかない。

ストレスとモチベーションはセットである。
過労死するような人は、
仕事に強いモチベーションを感じている。
が、ストレスも相当にたまる。
モチベーションが強いと、それによるストレスを感じない。
ここに危険がある。
モチベーションは、かならずしもプラスに働くとは限らない。
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講演では、「よいストレス 悪いストレス」という分類は誤りだと言った。
が、モチベーションのほうは、強弱だけでなく、適否もある。
宅配便を語って人の家に侵入するのは
社会にとってマイナスのモチベーションである。
自分自身を破滅させるモチベーションでは困るが、
それもまたモチベーションではある。

仕事への高いモチベーションそれ自体は悪くはない。
問題なのは、モチベーションに多様性がないこと。
大小・強弱・長短・物質性・精神性……
いろいろのモチベーションに動かされている人は、
ストレス病へのリスクを軽減できる可能性がある。
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食事相談だからといって、栄養素や食卓の上の話に
終始しているのは、もはや古典的手法。
人の人生、人のモチベーション、
人のストレス、人の幸福感などを
考えたことがない者が、「患者さんの行動変容を……」
などと口走るとは、恥ずかしい。
さらに、そういう青臭いスキルを
組織的に教えている者があるとすれば、
それはガマの油売りほどにいかがわしい。

# by rocky-road | 2008-12-03 00:48  

立ち食い文化よ 「アニョハセヨ」

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ソウル、2泊3日の旅を楽しんできた。
といっても、ミョンドン(明洞)、インサドン(仁寺洞)、
トンデムン(東大門)などの繁華街と、
チャンドックン(昌徳宮)という名所旧跡を
ちらと見た程度。

印象に残ったのは、屋台で立ち食いをする若い女性が多かったこと。
屋台が出ているどの通りでも、立ち食いの主役は若い女性。
なぜか頼もしい気分になってレンズを向けていたら、
結果として、女性の立ち食いシーン調査の旅みたいになった。

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時間的には夕方の4時くらいから夜更けまで。
そういえば、博多にも似たような風景があった。
あれは夕食なのか間食なのか、
ときには夜食なのか。
見ていると、食べているのは、四群点数法でいう
第二群(動物性食品ほか)か第四群(穀物)のようである。
しかし、彼女たちの体型にさしたる問題はない。

準備のない旅だったので、帰ってから、
韓国の食生活事情を知りたくなった。
統計的には、韓国国民の1日の野菜摂取量は
世界一の約700グラム。
しかし、その原因はあの屋台にはない、
少なくとも私が見た範囲では、
野菜中心の立ち食いではなかった。
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ところがきょう、新聞には、韓国の「保健福祉家族省」が
肥満の原因になるような食品……エネルギーの高い菓子やカップめん、
ハンバーガー、炭酸飲料などのテレビコマーシャルや
学校周辺での販売を禁止することを検討している
という記事が載っていた。
当然、食品会社が反対するだろうから、
決定するにしても、それまでには時間がかかりそうだ。

その結果はともかく、
行政機関が、こういう発案をすることに興味がある。
数千、数万とある食品の中から、〝肥満原因食品〟と、
そうでない食品をどうやって分別するというのか。
それはそれとしても、国家がそこまで責任を感じる姿は
美しくも涙ぐましく、そしてちょっと怖い。

食育基本法は日本の発案だが、
韓国流にやるなら、1日1回、
一家団らんを実行しない家庭は告発する、
車中でカップラーメンを食べたり化粧をしたヤツは逮捕する、
とでもやるか。

国民の健康管理を教育や情報でではなく、
実際行動による介入で行なう場合、
その程度を決めるのはきわめてむずかしい。

たとえば、食育基本法の精神を貫くために、
栄養士を動員して家庭単位に「指導」でも始めたら、
栄養士は市民の敵になりかねない。
現在の「行動変容」のかざし方を見ていると、
「○○○○に刃物」ほどに怖いことになるだろう。

何かというとわが国の食糧自給率の低さを嘆く人がいるが、
立ち食い文化よ 「アニョハセヨ」_b0141773_0464678.jpgずっと嘆き節を唸っていてほしい。
文化大革命みたいに、
「若者よ、農場へ」なんてことになったら、それは職業選択の自由を奪うことになる。

ソウルの屋台で立ち食いをするレディよ、あなたたちは、だれがなんと言っても美しいし、チャーミングである。

# by rocky-road | 2008-11-22 00:38  

「現代はストレスの時代」だなんて!!!

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以前、著名な精神科医のストレス入門のような本を読んでいたら、
序文に「最近は素人がストレス論をやるので困る」とあり、
本文の中でも、「現代は人間関係が複雑になり、
またコンピュータの普及したことによって、
だれもがストレスをかかえるようになった」と述べていた。
即座に「ホントかね?」と疑った。

カエサル(シーザー 紀元前100年)は、
腹心の部下、ブルータス(ブルトゥス)の一派に
暗殺されたとき「ブルータス、お前もか!」と叫んだという。
織田信長は配下の明智光秀に討たれた。
ストレスは大昔からあった。死を伴うものも多かった。
「地震、雷、火事、おやじ」そして、台風、津波、
飢饉、戦(いくさ)などがあった。

「現代はストレスの時代」だなんて!!!_b0141773_23215186.jpgなかったのは、「ストレス」というコトバだった。
ハンス・セリエが「ストレス学説」
(論文名「各種有害作因によって惹起された症候群」)を
発表したのは1936年7月4日というから、
言語的には、それ以前には「ストレス」はなかった。
私は、東京大空襲を小学校3年生で体験したが、
確かにそのころは「きのうの空襲のストレスはひどかった」
などという大人は1人もいなかった。
まだ日本には、「ストレス」はなかった。

しかし、今日いうところのストレス的なものは、
人類が始まる以前から、強烈なものがあった。

ストレス学説は、人体の生理反応の考察だから、
その反応を知っていようが、知っていなかろうが、
もともと動物には起こりうる現象なのである。

現代だけがストレスの時代のようにいうのは、
専門家を鼻にかけた人間の、視野狭窄からくる誤解である。
それじゃぁいうが、そもそも精神科医はストレスの専門家なのかね。
あの文庫版の入門書を読んで以来、
ストレス論もまた、専門家に任せておけばいい、
というものではないことを、再認識した。

「現代はストレスの時代」だなんて!!!_b0141773_23223251.jpg以来、ストレスについて小論を書いたり論じたりしてきた。
人間の行動傾向を知る手かがりの1つは、その人のモチベーションやストレス因に着眼することでもある。
食事相談を担当する人が、
人のモチベーションやストレスを洞察することは、
「問いかけストーリー」をつくっていくうえで、
欠かせない手法の1つであろう。

モチベーションとストレスは、
1セットの研究ではないが、
あえて、この2つを同時に論じてみたらどうなるか、
かねがね論じてみたいと、思っていた。
素人なりのアイディアもある。
今度、パルマローザから機会をいただいたので、
ヘルスサポーター向けのバージョンでご披露してみたい。

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パルマローザ栄養士ブラッシュアップセミナーからのご案内
 ■日にち  2008年11月30日(日)     
 ■時間  10時30分~17時30分
 ■場所  横浜崎陽軒会議室2号室
 ■研修費 1万円(昼食代含む)

 ■人数:35名

  第215回栄養士ブラッシュアップセミナー、
  「クライアントのモチベーションとストレスをどう把握するか」
  大橋禄郎先生のセミナーにご参加ご希望の方は、
  palmarosa@yours.biglobe.ne.jp
   パルマローザ栄養士ブラッシュアップセミナーまで、
  おなまえ、ご連絡先(お電話も)、ご所属名を明記のうえ
  ご連絡ください。
  お振込み口座、場所などのご案内を個別にご返信させていただきます。 
  みなさまのご参加お待ちしております。  

# by rocky-road | 2008-11-13 23:23  

壮にして学べば、即ち老いて衰えず。

壮にして学べば、即ち老いて衰えず。_b0141773_0464151.jpg旧知の栄養士さんからハガキが届いた。
永年勤めた私立大学の健康管理室を
定年退職をしたという近況である。

彼女は、ご自分が属する大学の学生の食生態を、30年以上調査し続け、それを冊子にして関係機関に配布してきた。私の『栄養と料理』時代には、その一部を誌上で紹介した。その調査によると、大学1年生のころは、外食の機会も少なく、喫煙や飲酒の習慣も当然ながらごくわずか。
しかし、学年があがるにつれて、
男女とも、右肩あがりに夕食の外食が増え、
朝食さえ家でとらない人が現れ始め、
コンビニの利用率が増え、就床時刻も起床時刻も不安定になる。

学生時代の4年間は、人生の中では短い期間だが、
このときに、大人になることとは、生活習慣がラフになることだと
刷り込まれてしまうと、生活リズムの狂いにも気づかなくなり、
健康度の低い人生を歩くことになる、
そんな予兆を早ばやと示してくれた研究だった。

栄養士として、どんな業績を残すかを
考えながら仕事をしている人は少ないだろうが、
60歳くらいから先の状態をイメージしておくことは意味がある。
職場のある人は、その職場にいたからこそ続けられることがあるだろうし、
フリーや開業して活動している人は、
その利点を生かすことを考えるだろう。
あるいは、いずれも、まったく違う道へ転進するケースも珍しくはない。
壮にして学べば、即ち老いて衰えず。_b0141773_051469.jpg

今から20~40年前、
「クッキングスタジオ」を開設し、「フードドクター」を名乗った人、
食事サロンやマスメディアでの仕事を中心にする会社を興し、
「ヘルスプランニング」とネーミングした人、
ダイエットなどを支援する会社を設立し、「カロニック」と命名した人、
料理雑誌や書籍の栄養計算を一手に引き受ける仕事を始めるとき、
「メニューデータ プレゼンテーション」と名乗った人など、
どんな時代にも、自分の道を見つけ、歩き続ける人はいる。

そうした人のお1人、東畑朝子先生(フードドクター)には、
来年の1月10日、パルマローザ・ブラッシュアップセミナーで
お話しいただくことになったので、
もっとも先駆的なパイオニアの、力強いライフスタイルの一端に
接することができるだろう。

壮にして学べば、即ち老いて衰えず。_b0141773_0522292.jpg志のある人には、順風も逆風もない。
あるのは「わたくし風」だけである。

幕末に活躍した朱子・陽明学者、佐藤一齋は、
自著『言志四録』(げんししろく)にこう書いた。

少にして学べば、即ち壮にして為すことあり。
壮にして学べば、即ち老いて衰えず。
老いて学べば、即ち死して朽ちず。

(渡部昇一著 『ものを考える人 考えない人』 
三笠書房による)

いずれにしろ、大人である自分の動機づけは、
自分が主体となってするしかない。

# by rocky-road | 2008-11-10 00:49