
パルマローザ ブラッシュアップセミナーで
「『話題』の見つけ方、つくり方、ふくらませ方」
--人生を活性化する「話題力」を強化する--
という演題で、講じた。
(2017年9月23日 10時30分~17時30分
横浜市技能文化会館)
話題とはなにか。
今回は、こう定義してみた。
「人と話し合うときや、手紙やその他の文章で
用件を人に伝えるときに、中心となる内容のこと。
会議などでは『議題』といい、講演では『演題』『テーマ』」
という。社会的に多くの人の関心事などについて
「いま話題の……」「話題の人」などという。

さらに「話題力」については、
「TPOに応じて、
同席の人の関心を引きつける話題を提示したり、
ときに問いかけたりして、話の場をよりおもしろく、
より有意義に展開させる能力」とした。

栄養士をはじめ、健康支援者に限ったことではないが、
公的にも私的にも、
対面やスピーチ、
そして、メールや手紙、ハガキの内容が
ありきたりでおもしろくないものが多い。
日本人は「話題不得意民族」だから、
そうであったととしても不思議ではない。
だとしても、
健康支援者の中には、
開き直って、相手に対して高飛車に出て、
不得意の話題力不足をごまかしている人が少なくない。
その代表は医師かもしれない。

「3時間3分」(実際には待ち時間は改善されたか。
しかし、診療時間は、私の主治医の場合、
短いときは1分12秒)という医療現場では、
医師は、患者と会話をする時間など、あるわけがない、
ということはわかっている。

しかし、「どうですか」と
2~3秒、問いかけるだけでも、
ほかならぬ、医師自身の健康度をあげるのだが、
そのことをわかっていないプロが多すぎる。
医師の過労死の一因に、
患者との関係づくりの不備があることだろう。

全国の医師が、
表情やアイコンタクトで患者と会話をするとか、
「こんにちは」と患者にひと声かけるようにしたら、
それだけでも、
医師の過労死のリスクの数パーセントは
軽減されるはずだし、
患者の数パーセントの治癒率も高まるはず。

会話は、口でする前に、目でし、表情でし、
身だしなみでするものである。
いきなり「会話力」といっても、
そういう言語行動の前に、
表情をつくるという、
いわば助走がなくては、
「いかがですか?」程度の一声さえ、
出てくるものではない。

健康支援者のトップポジションにある医師が
そんなふうだから、
その下で働く栄養士の話題力や、
それ以前の言語・非言語コミュニケーション力が
他の業種より低くなったとしても、
やむを得ないところがある。

しかし、厨房仕事や献立を立てる業種の栄養士も含めて、
栄養士は、健康支援者の中では、
話力を問われる業種の上位グループに入るだろう。
「話す」「聴く」時間の長さでいえば、
医師や看護師をはるかに超える栄養士も少なくない。
食事相談の担当者などである。
特定保健指導にかかわる栄養士の場合、
病気の予防ということよりも、
対象者のライフスタイルを支えるという要素が
大きくなってくる。
つまり、一生の健康を支援するという、
長期的な仕事になってくる。
(いろいろの世代とかかわるという点において)

ライフスタイル、
言い換えれば、生き方にかかわってくるとなると、
現代の哲学者にもなり得るのである。
新聞の人生案内で、
回答者としての哲学者の文章を読むことがあるが、
その文章力を見て、
これでは一般人の支援はできない、と残念に思う。
話題が常識的で、広がらない。
哲学者のコトバを引用されても困るが、
もっと人間について、
考察を深めてもらいたいと思う。
心理学や医学、脳科学や経済学などの
下敷きが、いかにもなさそうに思える。
哲学者は、哲学史の解説者ではなく、
現役の市井人に対する
「健康哲学」「人生哲学」を身につけてほしい。

田中美知太郎氏の文章に、
ギリシャ時代の初期の哲学者には、
著書というものはなく、
対話や講義が中心であった、
という記述があったのを覚えている。
近隣とのトラブルの相談にも応じたというから、
今日でいうカウンセラー的な仕事も
していたらしい。
「話題力」とは、
おもしろい話題を提供するだけではなく、
相手から話題を引き出す能力をも含む。
話題は相手の中にある場合が少なくない。
セミナーでは、
相手から話題を引き出す問いかけのトレーニングとして、
「動物のキリンに5つの問いかけをしてみよう」
という出題をした。
思っているよりもおもしろい答えがあった。

*「上から目線って言われることが多いと思いますが、
そんなとき、どう答えていますか」
*「このサバンナで、おすすめのビュースポットといったら、
どこがおすすめですか」
(注意深く見渡してるので
いろいろのことに気づいているはず)

*「タートルネックのセーターを
着たいと思ったことはありますか」
*「世の中にアリ(またはモグラ)という動物が
いることをご存じですか」
*ビールのブランドのうちで、
2番目におすすめなのは?
お遊びではない。
話が苦手な相手からも、話題を引き出すには、
キリンが相手でも
会話を成立させる根性を鍛えておきたい。

インタビュアーにとって、
むずかしい相手の代表は、
取り組みが終わったばかりの力士だとは、
昔から言われるところ。
無口なうえに、息が弾んでいる。
そういう人に、自分の取り組みを説明させる、
確かに難題である。

だから、無口で、上から目線のキリン相手に、
話題を引き出す体験しておくことは、
遠からず、いや、すぐにでも役に立つ。
話題は、相手が参加してこそ成り立つのだから、
相手が乗ってくる話題の提示や問いかけが
瞬時にできなければならない。

さらに話題力は、
人と対面しているときだけに発揮されるものではない。
メール、ハガキ、手紙での話題もある。

マツタケを送ってくれた人に
ハガキでお礼を伝えるのに、
「初秋の候、いかがお過ごしですか。
さて、このたびは、産地の松茸を
お送りくださいまして、ありがとうございます。
大変おいしくいただきました。
秋を実感しております。
季節の変わり目、みなさまにおかれましては、
ご自愛ください」
では、味も素っ気も、リアリティも話題性もない。

文章による話題づくりについては、
セミナーでもお話しした。
その内容については、
いずれ機会があれば……
ということにしておこう。

▲ by rocky-road | 2017-09-27 00:16