
去る7月23日、
食コーチングプログラムスが
継続的に行なっている
「栄養士のライフデザイン
いま、5年後、10年後……。」
というセミナーに特別講師としてお招きいただき、
講話をする機会を得た。

ポイントは3つ。
1.現在の立ち位置の把握。
現職についてどの程度満足しているのか。
2.栄養士・健康支援者の方向性。
20年前、10年前とは
栄養士・健康支援者の仕事のあり方は
かなり変わってきており、
これからも変わっていくだろう。
3.ライフデザインの描き方。

健康支援者に限らず、
いまの日本人の多くは
国や自分の行く末などには関心がうすく、
生きている実感さえなく、
日々をついでに生きている。

周辺の複数の国が、
日々、軍事力を強化し、
間近で軍事的威圧を続けているのに、
わが国会やマスメディアは、
どうでもいいようなちっぽけな案件を
争点にしたりニュースにしたりしている。
平和ボケもここまできた、
と認識しておく必要がある。
ついでにいえば、
国民が日用雑貨しか買わなくなったから、
国会もマスメディアもコンビニ化して、
清涼飲料やサンドイッチ程度のものしか
扱わなくなった、ということである。

新聞やテレビ、ラジオの
政治や時事問題を見るときには、
自分がコンビニの店頭に立っていると思えばよい。

健康支援者としては、
平和も健康も、ある頂点を超えると
今度はマイナスのほうに向かい始める、
という点は押さえておく必要がある。
つまり平和や健康も、
限度を超えると逆走する可能性がある。

人間は、栄養以外にも、
心の栄養、つまりモチベーションを補給して生きる動物だから、
先になんの展望もなく、
その日暮らしをしているタイプは、
一見、極楽の生活のよう見えても
パワーダウンで失速する。

栄養士、健康支援者の仕事の質も大きく変わりつつある。
「食コーチング」は
「生きがいづくり」をテーマにしているように、
少なくとも栄養士も、
いつまでも話題を食卓まわりに限定して、
すましているわけにはいかない。

なのに、「生きがいづくり」のプロ自身が、
自分の人生をどう生きるか、
展望を持っていないのでは、
登山経験のない山岳ガイドのようなもので、
人を安全にガイドすることなどできはしない。
ところで、
去る7月18日に、105歳で亡くなった
日野原重明先生には、
かつて『栄養と料理』の誌上で
香川 綾先生との対談に出ていただいたことがある。
確か、聖路加病院までお迎えにあがった記憶がある。
当時、日野原先生は79歳、
綾先生は91歳だった。

対談のタイトルは
「どの人みたいになりたいか、
探してごらん。」
サブタイトルは
「〝健康な心〟を語る。」であった。
健康な生き方について、お2人のプロが語り合う、
有意義な対談であった。
日野原先生は、この中で、
電車の中で出会う高齢者を見て、
自分の将来のカタチをイメージするとよい、
ともおっしゃっている。

そして、結びのところで、
こんなことを話しておられた。
長くなるが、紹介しておこう。
日野原氏の発言。
講演のときに、こういうことをよく言うんですよ。
みなさんが死ぬときに閻魔(えんま)さんが
出てくるかもしれませんよ。
そのときに、あなたの生涯の中で、
あなたが人から、親でも、先生でも、社会でもいい、
とにかくだれかからもらったものと、
あなたが人に与えたものと、どっちが多いかを
はかりにかけるとしたらどうか、とね。
もらうばっかりで、人に与えなかった人、
できるだけ与えようと努力した人……、
そのバランスは死ぬときに自分でわかると思います。
私がそう思うようになったきっかけは、
タゴール(インドの詩人、哲学者)の詩です。
タゴールが80歳くらいのとき、
来年の自分の誕生日には
もう自分はいないだろうという遺書のような詩を作っています。

その詩というのは、
「私がさげているずた袋はすっかり空になった、
与えることのできるものはすべて与えつくした。
その空になったずた袋に
なにかほしいものを入れられるのだったら、
私が犯した罪の許しを入れてほしい、
そして友の愛を入れてほしい。
それをさげて、
私は三途の川を渡ろう」
という意味なんです。
日野原先生にして、
やはり生き方の手本となる人が存在した。
(タゴールはその中の1人にすぎない、だろう)
日野原先生の死生観は、
旧来の地獄か極楽か論を思わせるが、
現代の健康論でいえば、
人に与えるもの、貢献できる力がある人ほど、
健康度が高くなる、健康寿命が延びる、
ということになるだろう。

くだんの
「栄養士のライフデザイン
いま、5年後、10年後……。」セミナーでは、
人生の地図として、
名作といわれる文学作品を読むといい、といったが、
考えてみると、文学を読みつけない人には、
シンドイかもしれない。



そこへのつなぎとして、
いくつかの本が頭に浮かんだ。
あえて「厳選」せず、ジャンル不問であげておこう。
比較的軽く読めるものばかりである。
手元にあるものは写真に撮ったが、
デザインが変わっているものがあるかもしれない。
『海からの贈物』は、紛失中で写真なし。

*海からの贈物
(新潮文庫) 文庫
アン・モロウ・リンドバーグ (著), 吉田 健一 (翻訳)
女性の生き方を述べた短編のエッセイ集。
ダイビングの入門書ではない。
小林カツ代さんが好きだった著者でもある。

*人間について(司馬遼太郎対話選集7)
(文春文庫)
*僕はいかにして指揮者になったのか
佐渡 裕著 (新潮文庫)
*世界一豊かなスイスとそっくりなニッポン
川口マーン恵美著 (講談社α新書)
これの前に『住んでみたドイツ……』が出ている。
*日本人へ リーダー編
塩野七生著(ななみ) (文春新書)
*思考の整理学
外山滋比古著 (ちくま文庫)
今回はここまで。

▲ by rocky-road | 2017-07-31 22:17