
久々に、
少し離れたところにあるスーパーをのぞいてみたら、
カワハギの尾頭つきが売っていた。
1匹ずつパックしてあるのだが、
大きめの1匹が入ったパックには
2,600円の値がついていた。
私の知る範囲では、
東京の家庭では、カワハギは食べない。
そういう食文化はないように思う。
海への旅では、
しばしば食するが、
2,600円を出して
食べるほどの魚かね、と内心は思う。

この一件から、
9月のロッコム文章・編集塾
能登教室のとき、
初めて入る能登の海で、
カワハギと出会ったことを思い出した。

彼は、岩に巻きついた廃棄漁網にかかって
もがいているのだった。
この段階では、
東京なら、2,600円でも売れる
上物であることなど思いもよらず、
いや、そんなことはどうあれ、
このピンチを見捨ててはおけなかった。

彼にまきついている細い漁網の糸を、
「暴れるな、いま外してやるから」と
何度も言い聞かせて、
背にある棘(トゲ)にからまっている糸を
なんとか外した。
彼は、礼をいう余裕もなく、
脱兎のごとく、脱カワハギのごとく
泳ぎ去った。

写真だけは撮っておいた。
昔、同じように、
岩にからみついている釣り糸に
かかったままのウツボを
海の底で見つけたことがある。
釣糸にかかったが、
切って逃れたらしい。

が、糸を引きずっていたので、
その糸が岩にからまってしまい、
ニッチモサッチモいかなくなっていた。
なんとか救助を試みたが、
歯をむいて、
のたうちまわっているので、
手の出しようがない。
あきらめざるを得ないときの
切ない思いは忘れられない。

同じ海つながりでいえば、
昔、神奈川県江の島海岸の岩場で
海を見ている父と子を見かけた。
ときどき、波は岩場を越えて
彼らが立っている近くにまで迫ってくる。
波の見方を知らないと見て、
「危ないから、もっと下がったほうがいいですよ」
と警告した。
父親は、それを薄笑いで受けて、
しかし、無視した。

そこで懸念が当たった。
彼が連れていた男の子をさらって、
大きな波が海に戻っていった。
万事休す、と思った瞬間、
次の波が男の子を岸に運んできた。
岩と岩の間に、波しぶきに巻かれて
男の子が流れ込んできった。
一瞬のタイミングで、
私が男の子を手をつかんで引っ張りあげた。
「だから言ったでしょう!!」
とは、こういうときは、言えないものである。
その救出場面は淡々と展開した。
父親は、私に「どうも」くらいのことを言って
去っていった。

以上は、
私が助けたほうの話だが、
以下は、私が助けられた、
というよりも、とんだ被害を受けたが、
なんとか復元してもらったという話。

電話とパソコン時代にありがちなトラブル、
いつか、あるかも知れないので、
心にとめておいたほうがいいかも知れない。
10月のある日、
電話がかかってきて、
電話やパソコンの回線を
NTTからKDDIに変えないか、
というセールスがあった。
月々の料金が安くなる、
という話に乗ったのが大誤算。

接続業者に
回線取り換えの工事をしてもらった直後から、
パソコンが不通になった。
その原因を調べてもらおうと思ったら、
「かけつけ設定サポート」なる
有料の業者が派遣されてきて、
すぐに原因をつきとめた。

なんと、最初の接続業者が、
ルーターのつけ間違いをした、
そういう単純ミスだった。
それでヤレヤレとはいかない。
それをつきとめた「かけつけサポーター」は、
そのあと、パソコンをチェックし、
無駄な「アプリ」(と、いうのかな?)が多いと、
整理をしていってくれた。

親切なサービスと感謝したが、
そのあと、
アドレス帳が消えてしまったり、
写真のプリントサービスのための
ソフトが消えてしまい、
プリントの注文ができなくなったりした。
接続業者、かけつけサポートと、
2人の人間がやってきたが、
彼らの残していった書類には、
住所が書いていない。
もちろん、本人は
ネームプレートをつけてはいないし、
名刺を置いていくわけでもない。

最初に電話で勧誘をしてきたDTIについては、
住所を言ってもらい、
ファックスで書類も送ってもらった。
が、回線工事を行なった者は、
DTIの社員ではなく、
新しく開通した《auひかり》通信の
会社《KDDI》の社員でもなく、
それを専門に行なう業者らしい。

つまり、DTI、KDDI、
回線接続業者、
かけつけ設定サポート業者の4社が
別々に動いているのである。
1か所に電話すると「それはうちではない」と言い、
別のところに電話すると、
「それは有料のサポート会社です」と言う。
そもそも、初回の回線接続が不備だったのに、
割引料金ながら請求書が手渡された。
それのクレーム先がわからない。
《かけつけサポート》は
DTI経由で依頼したので、そこなのか、
接続をしたKDDIなのか。

細かいことは省くが、
要するにコンピューター関連ビジネスは、
住所を示さず、所在を思いきり不透明にしてある。
責任の所在を初めからボカそうとしてある。
従来は「ああ、交差点の近くの白いビルね」
などといって、生物的な、
またはアナログ的な認知をするが、
相手は電話機の向こう。
出る相手はその都度違う。
「念のために録音させていただきます」などと
もっともらしい音声を流すが、
社内のコミュニケーションはきわめて不完全。

電話をかけるたびに、同じことを繰り返す。
申し送りができていないのである。
人と人のコミュニケーションが
社内でも行なえないらしい。
ましてや、
クライアントとのコミュニケーションなど、
まともにできるわけがない。
ここに現代の悲喜劇がある。
コンピューターという、
最先端のコミュニケーションツールを扱いながら、
対面コミュニケーションが不成立。
「ひかり通信」だと自称するが、
このトラブルの修復にかかった日数は10日あまり。
光どころか、通常のオフィス事務よりも遅い
処理能力、「ひかり」とはちゃんちゃらおかしい。

ビジネス形態としては、
明治維新後、
初めてカンパニーなるものができたころを
彷彿とさせる。
社員教育はゼロ、
会社の信用性は最低。
なにしろ住所不定だから
どこに逃げられても捕まえようがない。
オレオレ詐欺同様、
電話勧誘は、ほとんどの例外はなく、
その場で断ったほうがよい。
次善の先として、
業種や商品アイテムのパンフレットを
送ってもらってから対応開始するくらいがよい。

もっとも、
いきなり玄関にピンポンとやってくる、
生物としての人間とて、
あまり信用しないほうがよい時代ではあるが。
▲ by rocky-road | 2014-11-26 23:29