
中高年世代を中心とするダイビングクラブ、
「日本シニアダイバーズクラブ」が
創立20周年を迎えた。
その記念パーティ(新年会)に招かれて出席した。
(1月26日、東京・表参道「ホテル フロラシオン青山」)

1994年、当時70歳だった上村敏郎(としろう)さんらの
呼びかけで発足したクラブである。
ダイビング雑誌『マリンダイビング』が、
それに賛同し、同年5月号で座談会記事を掲載した。
題して「さあ、シルバーエイジ軍団を結成しよう!」

この座談会には、上村さんと同年代の溝口寿茂(とししげ)さん、
6歳若い大明美代子(おおあき)の3名に、
司会者として大橋が出席した(当時58歳)。

創設のおもな理由は、若い人とツアーに行っても、
話が合わない、だから世代の近い人と仲間になりたい、
ということだった。

時代のニーズ合って、会員数はどんどん増え、
10年までに300人にまでなった。
今日までの登録者数は延べ800人を超えたという。
会員の中心は50~60歳代、
その6割が女性だという。

私は、クラブというものは、
性や世代を超えて集まる、人脈の接着剤だと思っているので、
世代別にクラブをつくるという発想には違和感を持ったが、
実際には、異世代交流を得手とはしない人は多く、
そのニーズはいまも、今後も変わらないことだろう。

ダイビングクラブの歴史を振り返ると、
かくも大勢の会員が、各地にまたがり、
その状態を20年間持続しているダイビングクラブは
これまでにはなかったと思われる。

私は、クラブづくりを始めて50年、
以後、いくつかのサークルやクラブの創設、運営にかかわってきたが、
300人もの会員をかかえるクラブの経験はない。
が、いろいろのいきさつから、
約10年、顧問としてこのクラブとかかわってきた。

20年もたつと、初期の発起人は他界していて、
初対面の人の割合は増えたが、
活気はますます盛んになっているようだった。
長寿国日本の高齢者のモチベーションの高さを
実感することができた。
ライフワークをもっている高齢者は、
思っている以上に多いのである。

来賓として、ごあいさつをした。
ポイントは3つ。
1.クラブの、コミュニケーション環境としての意義。
若い人と話が合わないというが、
先輩の役割は、年少者のモチベーションを
あげることではないか。
それには、自分の豊富な経験を披歴するのではなく、
その経験をベースにして、
適切な問いかけをすることではないか。
「どんなお仕事をしていらっしゃるの?」
「いまの会社の定年は? 定年後のプランは?」
「今度、予定している海は?」
「海に潜っていちばん楽しいことはなに?」
こうしたコミュニケーションスキルは、
高齢社会を迎える、
世界中の高齢者に求められるものではないだろうか。

2.年を重ねると、どうしても表情のバリエーションが減ってくる。
意識的に笑顔を維持して、
明るい環境づくりに参加してはいかが?
それは、自分と社会の健康度をあげる。

3.水中で野生生物と至近距離で対面できるのは、
個人にとって、人間にとって、
貴重なコミュニケーション環境ではないか。
非言語コミュニケーション力を開発することは、
自分の健康、人間の健康にとって、
どれくらいプラスになるかわからない。
「オレはお前を愛している」
といった人間を引きづったコミュニケーション法ではなく、
自分も一動物になりきって、
動物対動物という関係で向き合う楽しさ、
このことを自覚してはいかが?

などという話をさせていただいた。

ところで、その前々日の24日、
日本橋三越で、中村征夫写真展、
「海への旅」を見てきた。
中村さんとも長いつき合いである。
構図に自信を持つカメラマンで、
広い絵を得意とすると同時に、
寄りの写真もこなす、
ワザの多様性を持つカメラマンである。
かつて私は「書けるカメラマン」と呼んだこともある。
文章もうまい。

カメラマンには悪いが、
カメラマンの文章に接したとき、
「カメラマンにしては文章がうまい」と
評することがある。
カメラマンで書ける人はきわめて少ない。
当然である。

が、中村さんは、
「写真も撮れる文章家」と言ってよいほど、
文章もうまい。実際、写真集以外の本も何冊か著わしている。
写真展では、さらに表現の幅を広げた作品を
鑑賞させてもらった。
やはり、正真正銘のカメラマンである。

真冬の東京で海に接する2日間だった。

▲ by rocky-road | 2014-01-29 20:56