
『文藝春秋』の12月号に、
作家でイタリアに住んでいる塩野七生さん(しおの ななみ)が、
評論的なエッセイを書いている。
日本が民主党政権になって変化が起こるであろうが、
期待していることの1つは、
日本の記者クラブの全廃だ、という。
閉鎖的で、外国人記者にはなかなか門戸を開かなかったし、
自由な質疑応答の機会が与えられていないからだ、
と指摘している。
一方的な情報提供の場なら、そんなのなくてもいい、と。

また、日本人記者は、予定した質問はするが、
臨機応変の議論はしない、とも指摘している。
これは、記者会見を設定する省庁の役人や国会議員のほうに
より大きな原因があるのだと思うが、
その程度のことしかできない記者クラブなら、
不要だ、廃止してしまえ、というのである。
大賛成である。
過日、中国の要人と天皇陛下との会見を
政府が急遽設定したことについて、
小沢一郎氏が記者団からの質問を受けているシーンが
テレビ放映されていた。

天皇との会見は、1か月前にアポをとる慣例になっている、
それを破って会見を設定したのは、
天皇を政治の世界に巻き込むことにならないか、
という突っ込み質問である。
宮内庁は、一度は断ったが、政府(小沢幹事長?)から逆襲されて、
慣例を破って会見を設定した。そこを記者が突く。
が、さすがは「豪腕」といわれる政治家、
「そういうことは法律に書いてあるのか、
あなたは法理を読んだのか」と逆質問をした。
これは、相手を封じる詰問の典型的なパターン。
この政治家の得意とするワザの1つである。

か弱い日本の記者のこと、
この問いに、さらに逆質問をするなんていう根性はない。
たじたじとなって、だから翌日の新聞には、
ひどく政治家を批判的に書いた。
犬の遠吠えの見本のような対応である。
こんな一方的な記者会見なら、
確かに記者クラブごと廃止してしまったほうがいい、
と考えたくもなる。

相手の質問に、突っ込みを入れる逆襲タイプは、
世間にもときどきいる。
「そういう質問をすること自体、この問題を真剣に考えていない証拠だよ」
「そんな発言をするっていうことは、
この闘争に真剣に取り組む意志がないということ?」
会議などで、こういう指摘をされると、出席者は、こわくてなにもいえなくなる。
恫喝型(どうかつがた)とでもいうのか、
アンフェアな、せこい戦術を使うヤツは、
どこの職場や組織にも、1人や2人はいるのではないか。
食事相談の現場でも、こういうタイプに遭遇している栄養士が
日本のあちこちに、少なからず存在するのではないか。
「酒をやめれば糖尿病が治るって断言できますか」
「あなたは私がパーティに出ることに反対らしいけれど、
私の人脈がか細くなってしまうことに責任をとってくれますか」

世の中には、「ちょいワル」どころか「すごワル」もいる。
ひ弱な日本記者クラブのようにならないためにも、
栄養士はタフにならなければならない。
「私が責任をとる前に、あなた自身、ご自分の人生について、
ご両親や周囲の方にどんな責任をとるおつもり?」
(ケンカになるかな??!!)
食事相談は、なんだかんだいっても、
会話による格闘技の要素もある。
小沢一郎氏の写真を眼前に置いてトレーニングに励むと、
少しは腹が据わってくるかもしれない。
▲ by rocky-road | 2009-12-22 09:44