立ち食い文化よ 「アニョハセヨ」
ソウル、2泊3日の旅を楽しんできた。
といっても、ミョンドン(明洞)、インサドン(仁寺洞)、
トンデムン(東大門)などの繁華街と、
チャンドックン(昌徳宮)という名所旧跡を
ちらと見た程度。
印象に残ったのは、屋台で立ち食いをする若い女性が多かったこと。
屋台が出ているどの通りでも、立ち食いの主役は若い女性。
なぜか頼もしい気分になってレンズを向けていたら、
結果として、女性の立ち食いシーン調査の旅みたいになった。
時間的には夕方の4時くらいから夜更けまで。
そういえば、博多にも似たような風景があった。
あれは夕食なのか間食なのか、
ときには夜食なのか。
見ていると、食べているのは、四群点数法でいう
第二群(動物性食品ほか)か第四群(穀物)のようである。
しかし、彼女たちの体型にさしたる問題はない。
準備のない旅だったので、帰ってから、
韓国の食生活事情を知りたくなった。
統計的には、韓国国民の1日の野菜摂取量は
世界一の約700グラム。
しかし、その原因はあの屋台にはない、
少なくとも私が見た範囲では、
野菜中心の立ち食いではなかった。
ところがきょう、新聞には、韓国の「保健福祉家族省」が
肥満の原因になるような食品……エネルギーの高い菓子やカップめん、
ハンバーガー、炭酸飲料などのテレビコマーシャルや
学校周辺での販売を禁止することを検討している
という記事が載っていた。
当然、食品会社が反対するだろうから、
決定するにしても、それまでには時間がかかりそうだ。
その結果はともかく、
行政機関が、こういう発案をすることに興味がある。
数千、数万とある食品の中から、〝肥満原因食品〟と、
そうでない食品をどうやって分別するというのか。
それはそれとしても、国家がそこまで責任を感じる姿は
美しくも涙ぐましく、そしてちょっと怖い。
食育基本法は日本の発案だが、
韓国流にやるなら、1日1回、
一家団らんを実行しない家庭は告発する、
車中でカップラーメンを食べたり化粧をしたヤツは逮捕する、
とでもやるか。
国民の健康管理を教育や情報でではなく、
実際行動による介入で行なう場合、
その程度を決めるのはきわめてむずかしい。
たとえば、食育基本法の精神を貫くために、
栄養士を動員して家庭単位に「指導」でも始めたら、
栄養士は市民の敵になりかねない。
現在の「行動変容」のかざし方を見ていると、
「○○○○に刃物」ほどに怖いことになるだろう。
何かというとわが国の食糧自給率の低さを嘆く人がいるが、
ずっと嘆き節を唸っていてほしい。
文化大革命みたいに、
「若者よ、農場へ」なんてことになったら、それは職業選択の自由を奪うことになる。
ソウルの屋台で立ち食いをするレディよ、あなたたちは、だれがなんと言っても美しいし、チャーミングである。
by rocky-road | 2008-11-22 00:38