さすが栄養士の「ライフスタイル」。

だいぶ間があいてしまったが、
2025年9月28日(日)に行なわれた
「食ジム」 第144回
「さすが栄養士」と、いわれるだけの
健康でハッピーなライフスタイルとは?
について振り返っておきたい。

とはいえ、
ここでは出席者の発言内容の記述は別の機会に、
ということにして、
今回は、
このテーマで話し合うことの意義について書くことにする。

座長/三上聡美さん

アドバイザー 影山なお子さん 大橋禄郎

進行プロットは以下のとおり。
1.お手本にしたい「さすが栄養士」のライフスタイル、
こんな事例、あんな事例から学ぶ……。
2.それに比べて、「さすが栄養士」(その他の人)とは、
とても思えない、モチベーションダウンのライフスタイル。
3.この際だから、ご披露――このワタクシの「さすが」と、
勝手に思っちゃってるライフスタイル、ほどほど大公開。
4.栄養士がライフスタイルについて考える意義とは?
5.栄養士が自身のライフスタイルを活性化させることに
なるアクションプラン。

そもそも「ライフスタイル」とはどういう意味か。
広く使われているコトバではありながら、
その意味を正しく理解している人は多いとはいえない。
そこで、プロット表示の冒頭で、
「ライフスタイル」の定義を示しておいた。

(ライフスタイルとは)「人生観、価値観、生き方、生き様。
個々の感性、知性、思想、衣食住などを含む暮らし方、仕事、
将来の目標、経済感覚、趣味、宗教、人間関係など、
個人のアイデンティティを含む固有の生き方。」 (大橋)

もともと、指で示すことのできない抽象概念であり、
各種の辞書の定義もコトバ足らずであるために、
このコトバを「生活習慣」と誤訳・誤解をしている人は少なくない。
日本語から、意味が近いコトバを見つけるとすれば、
「生き様」(いきざま)だろうか。

栄養士、健康支援者に限らず、
人は、健康になることを目標としているわけではなく、
より愉快な、より楽しい、よりハッピーな人生を送りたいと思っている。
健康は、そのための手段の1つであって、
けっしてそれが最終目標ではない。

アブラハム・マズローのいう
人との連帯、自己実現の欲求を満たそうとすると、
さらにモチベーションはアップし、
結果として健康度もあがる。

一方、不健康の要因は
少なからず「ライフスタイル」にある。
なかには、個人に責任のない、
先天的なケースや、事故などに起因する不健康もあるが、
健康であっても、
やることがなく、ボーっと生きている人間には、
食事や運動、人づきあい、身だしなみ、
表情づくりなどに不備が生じやすく、
それらが〝不調〟を呼び込みがち。

健康支援者は、そういうことがないように、
それぞれの専門分野の範囲で、
ほんのちょっとでもモチベーションがあがるような
働きかけをすべきである。

とはいえ、「ライフスタイル」に無関心な者には、
他者のモチベーションをあげるような材料がない。
いまは核家族化がますます進む時代。
「情けは人のためならず」「人の振り見てわが身を直せ」
「鹿を追う者は山を見ず」「虎の威を借りる狐」
「急がば回れ」「急(せ)いては事を仕損じる」
などのことわざや格言を、
さらっと言ってくれる親や祖先が近くにはいない。

ことわざや格言は、いわば生活の中の哲学である。
ところが、「愛とは何か」「平和とはなにか」「人生の目標とは?」
という問題を、わかりやすく説くことができる哲学者は減少の一途。
「哲学者」を名乗る者は少なくないが、
その大半は「哲学史教員」である。
その区別もできない「自称 哲学者」のなんと多いことか。

書物や雑誌記事には、
生き方に関する内容のものもあるが、
「ボーと生きている」タイプには、
もともと読書習慣がないので、
こういう有意義な情報は
「馬の耳に念仏」「猫に小判」でしかない。

それと、
近年の出版傾向として、
高齢者向きの生き方論が多く、
そのうえ、日本人が好きな「何歳になったら……」といった、
年齢にからめたものが圧倒的に多い。

それとて、「遅すぎる」とは言えないが、

理想を言えば、
「お父さん・お母さんのための生き方論」
「子供に伝えたい生きる意味」
「中学生のための生き方教科書」
「高校生のための生き方教科書」
「10歳になったら考える人生の歩き方」
というような読み物を
どんどん提供してほしい。

手前味噌になるが、
栄養士・健康支援者には、すでに
『食コーチング』や

『栄養士のためのライフデザインブック』

『「予暇」で自分を組みかえる』などが出版されている。

これらは、生き方そのものを説く書物ではないが、
栄養士・健康支援者のあり方を示すことにもなっている。

問題は、
栄養士養成校や健康支援者養成校のカリキュラム。
いまも、栄養学に置いた軸足を1ミリも動かすまいと、
きょうも、栄養素の話に明け暮れているのではないか。
栄養学は、人の心身の健康を支える学問。
「健康とは何か」「幸せとは何か」「食行動とは何か」
「ライフスタイルと食生活の関係」
「食コミュニケーションとは何か」

……そういうテーマを扱うことのないカリキュラムは、
火事の火元ではなく、煙に水をかけることを教えている
消防署のようなものである。
こういう社会環境の中で、
「ライフスタイル」を説くのはチョー チョー チョーむずかしい。
しかし、たとえば栄養士は、
定刻に食事をとることの意味について語ることができる。
季節感を感じる食材の選び方、調理の仕方は説明できる。
「いただきます」「ごちそうさま」と言うと
食事がおいしくなる理由を解説することができる。

それらを理屈ではなく、
実践で示すことができる栄養士が
わずかではあるが生まれつつある。
「食ジム」に集まった栄養士は、
そういう人たちの一部であろう。

実情はどうあれ、
夢と希望は持ち続けよう。
それもまた、健康行動であろう。

by rocky-road | 2025-10-14 22:49 | 「食ジム」

