「輪読」で理解と記憶が深まる理由。
2021年6月6日から始まった『ライフデザインブック』の
輪読会は、この4月12日で11回を数えた。
13年かけてまとめられた書物が、
輪読会形式で、いまも読み継がれているのは喜ばしい。

何度も言うことだが、
職種別の、あるべき「ライフスタイル」を示す本は
世界にそう多くはない。
いわゆるマニュアルではなく、
スキル以前の考え方、
まさに個々人の「ライフスタイル」(生き方、価値観など)を
問う書物である。

もしも、
『公務員のためのライフデザインブック』
『自衛官のためのライフデザインブック』
『テレビタレントのためのライフデザインブック』
『演歌歌手のためのライフデザインブック』
『マスメディア関係者のためのライフデザインブック』
『リサイクルショップ経営者のためのライフデザインブック』
などなどがあったら、
個人も社会も、いまより数倍はハッピーになることだろう。

いま、出版界は不況の時代といわれるが、
「ライフデザインブック」だけは、
その名のとおり「ブック」である必要がある。
ページを折ったり、マーカーでシルシをつけたり、
そして、数人で輪読をするという利用法によってこそ、
行動に結びつく情報となる。
人類は、この先も活字離れを続けることはなく、
いずれは、そのリスクの大きさに気がついて
Uターンするときがくるはずである。

文字は、黙読と音読とでは、脳への刺激、
言い換えれば、情報の残存率が異なるように、
1人読みと輪読とでも、
認知レベルが異なる。
自分で書いた文章が、
音読することで完成度が高まるのも、同じ理屈である。

脳科学者は言う。
「本を読むと、
その情報が自分の脳内に入ってくるのではなく、
その刺激がトリガー(引き金)となって、
脳内の記憶が引き出され、新規の思考が体系化される。
『理解する』とは、
外部からの刺激によって引き出された
もともとは自分の記憶を材料にして
脳内で新しいプログラムを組み立てる状態を指す」と。

これを私は、こう意訳して理解している。
「手持ちの小麦粉と、新しく入荷した小麦粉をブレンドして
パンの新製品を作ること。新製品として売り出すと同時に、
保存もして(記憶して)、次の新しい小麦粉の入荷に備える、
それが『理解すること』であり、『思考を深めること』である」と。

建築工学や脳のメカニズムの本を読んでも
さっぱりわからないのは、
字は読めても、関連する手持ちの記憶がないから、
処理しようがない、つまり理解できないのである。
(この仕組みは、糖質をはじめ、取り込んだ栄養素を
代謝するインスリンの役割を思わせる。
インスリンの分泌が少ないと、
栄養素を取り込めない=情報の場合、理解できない)

輪読会の話に戻ろう。
1冊の本を、いろいろの人が輪読すると、
その刺激が、いろいろの記憶を引き出すことになる。
読む人の音量、速さ、国語の正確さや理解度などの個人差が、
バリエーションの多い刺激となって、
脳内にある膨大な記憶の中から
より多くの情報を引き出してくれる。
そのプロセスによって認知度が高まる。


『平家物語』の一部を、いまも暗誦しているのは、
それだけ認知度が深かったからであろう。

娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」

そして、ポール・ベルレーヌの『落ち葉』
(Chanson d'automne 上田 敏訳)も。

Les sanglots longs
Des violons
De l'automne
Blessent mon cœur
D'une langueur
Monotone.
(秋の日の ヴィオロンの
ため息の 身にしみて、
ひたぶるに うら悲し……)


今回の輪読会では、次の4項目を読んだ。

*「特定保健指導にかかわる栄養士が
理解しておきたい基礎知識とはどういうものか。」
(p70~71)

*「栄養士としての特性を活かしてマスメディアで
働きたいと思ったとき、どんな分野を考えればよいか。」
(p126~127)

*「栄養士がマスメディアで『食や健康に関する仕事を
したい』と思ったらどんなアクションがあるか。」
(p128~129)

*「食育活動を活発化させるための企画や活動を
求められたら、どう対応するか。」
(p48~49)

オプションとして、
『文藝春秋』 2025年3月号のエッセイ欄(古風堂々)に載った
藤原正彦氏(作家・数学者)の「ユーモアさえあれば」と、
『WILL』 2025年5月号の「著者を訪ねて」欄の
『地名の魔力』を読んだ。

藤原氏のエッセイは、イギリス人、ドイツ人、フランス人の
ユーモア感覚について、
体験に基づいて語っているのがおもしろかった。
イギリスの数学者に「英国紳士の最重要条件は?」と
尋ねたら、ちょっと考えてから「ユーモア」と答えたという。
言われてみて気がつくのは、
「日本は世界に冠たるユーモア大国である」と断言している点。


古くから落語、漫才、狂言があるし、
講談や歌舞伎にもユーモア満載。

さらに、源氏物語や今昔物語にもユーモア描写があり、
さらに、おもしろい絵画も浮世絵もある。

なるほど、平安時代に始まる鳥獣戯画は
現代のアニメにもつながる漫画のルーツでもある。


「地名の魔力」には、
「神戸」(こうべ)の読み方は
地域によっていろいろで、
「こうど」や「かんど」「じんご」「かど」などがあるという。

そのルーツは、
神社を支える税(租庸調)を扱う家柄だとか。

さて、あれやこれやの音読体験の記憶は
30年後、50年後の、みなさんの脳裏に
どれくらい残存しているだろうか。

いや、そういう問いかけは野暮で、
それらの体験から、
どういう行動、どういうライフスタイルを
導き出すのだろうか、と問うべきである。

by rocky-road | 2025-04-20 22:22 | 輪読会

