あなたは、どんな「食の地図」をお使いですか。
「ひろしま コミュニケーション教室」の第5回が終わった。
(2025年3月16日 広島県廿日市市中央市民センター)
主催者は、高藤法子さん。(2023年11月スタート)

前身である「コミュニケーション研究会 ひろしま」
(2014年発足)のシリーズが終わったあと、
高藤さんが新たに立ち上げた勉強会である。
今回のテーマは次の2つ。
1.「あの人の話はおもしろい」と言われる話力――7つのポイント。
2.「食の地図」―― 四群点数法をわかりやすく伝えるには。

このうち、「食の地図」について書いておこう。
広島行きの前、元の職場である「女子栄養大学」で
開催された、主催者が異なる勉強会とイベントに、
計2回参加した。


このとき、数人の講師の講話を聞いて実感したのは、
かつて授業や出版物で普及を図った「四群点数法」が
いまや置き去りにされつつある、という現実である。

『栄養と料理』でも、書籍でも、
四群点数法を正面からとりあげることはなさそうである。
1960~1970年代に、
これの普及に関わった者には
現在の状況は「危機」と感じられ、
大学の首脳部に訴えたが、
すでに、この立場の人にして、
関心のうすいテーマになっているようであった。

それどころか、
「いまは調理済み食品をする人が多くなっているので、
『食事バランスガイド』のほうがよいのではないか」
とまで言ってくれた。

女子栄養大学の創設者であり、
四群点数法の考案者の香川 綾先生のアイディアも、
その子息には受け継がれない現実を
直視する結果となった。
第三者ながら、
綾先生の業績を高く評価する1人として、
生きている限り、支持、普及を考えたいと強く思った。

だからと言って、
「四群点数法」という〝ブランド〟を守ろう、
というのが私の主張ではなく、
より精度の高い「食の地図」を持って歩いたほうが
人々は、道に迷わないのではないか、
というのが私の本意である。

ところで、「食の地図」には、
現在、どんなものが存在しているか。
「三色食品群」「六つの基礎食品」「四群点数法」
「食事バランスガイド」
まずは、この4つが思い浮かぶ。

ほかにも「まごわやさしい」や「1日30食品」があるが、
量や頻度の目安がないこれらのものは、
「地図」と見るのはムリである。
いずれにしろ、
各人が、使いやすいものを使えばよい。
どんなものでも、ないよりは、あったほうがよい。

とは言え、現実には、
地図の存在を知らない人や、
知っていても利用しない人があまりにも多い。
その理由を、広島のテキストにはピックアップした。
ここでは詳細を省くが、
日本人に限っていえば、
地図がなくても、そこそこ健康にやっていける、
いや、世界一の長寿国になってしまう。
それも事実ではある。

それでも、地図を利用したほうが、
個々人の心身の活性を保つために、
利点が多い。
栄養学の範囲を超えて、
生きがい、モチベーションなど
精神面の利点にも着目する必要がある。

この点については後述するが、
まず、「食の地図」を選ぶうえでの私のポイントは、
食品の栄養学的特徴が大別されているかどうか、
という点に加えて、
「量」のコントロールができるかどうか、という点。

この基準で言えば、
熱量点数でコントロールができる
「六つの基礎食品」と「四群点数法」が好ましい。
実際の地図に例えれば、
これらは何丁目何番地まで示されていて
迷うことは少ない。

これに対して、「食事バランスガイド」は、
食材の1つ1つの特性を見ることなく、
器や皿の数でカウントする。

つまり、東京都文京区春日、
大阪市浪速区幸町までは示すが、
何丁目何番地までは示さない地図である。
これでは、目的地にたどり着くのに時間がかかる。

食の地図の有用性に理解がうすい人は
とかく「調理済み食品を使う人が多い時代だから」
「独身男性だから」などと言って、
個々の食材の質や量を軽視する傾向がある。

しかし、これは困った思い込みで、
調理をしようがしまいが、
卵を1日1個は確保すること、
牛乳をコップ1杯は飲むこと、
魚や肉のおかずを2~3皿食べること、
野菜を350グラムとること……
などなどを知って実行することは、
けっして生活のリズムを乱すことにはならない。


食後に歯を磨く、
毎月第1木曜日に美容院(理髪店)に行く、
通学や通勤には遅刻をしない、
赤信号では止まる、定刻にニュースを見る、
月に1度はカツカレーを食べる、
ひいきのチームを応援する……
そういう定番を実行することは、
「健康の歩き方」としてマイナスにはならない。


これに対して、
食事時刻が定まらない、
食べる料理がワンパターン傾向、
食事中、同席の人とコトバを交わさない、
スマホに夢中になっていて、駅で降りるのが遅れたり
駅を乗り過ごしたり……、
こういうタイプは、認知症リスクが大きいはず。


「食の地図」は、
生きるモチベーション、
生活のルーティンとしての意味がある。

「調理をしないから」と言って
何をどれだけ食べればよいかを考えずに生きている者は、
まさに「ボーっと生きてんじゃね―よ! 」である。

近年感じるのは、
栄養学の基礎は、ほぼ目的地にたどり着いた、という点。

もちろん、その普及や活用は続けなければならないが、
実は、栄養学には「心の栄養」補給の役割もある、
という点に、新たに着目すべきである。

「食の地図」は、
まさに「心の栄養補給」の地図としても存在意義がある。


「今晩、どういう食事をするか」
それを考えること、それこそが「心の栄養補給」である。


その詳細は、このページでも
取りあげていきたいと思っている。

by rocky-road | 2025-03-30 22:54 | 「食のものさし」

