栄養士の今までと、これから。
「食ジム」、第130回(6月2日)、
第131回(7月14日)、
第132回(8月11日)の3回は、
図らずも、栄養士の現在、過去、未来を考える
よい機会となったのではないか。
タイミングがズレたが、やはりここは、
振り返っておこう。
第130回のテーマは
「各種栄養士会が活性化しないのはなぜか、
その分析と対策を考える。」(座長/大橋)
(会場/横浜市 開港記念会館)
131回は、
1回で話が終わらなかったため、
前回と同じテーマで延長戦。
(座長/大橋 )(会場/横浜市 開港記念会館)
132回は「『食と健康』に関して活躍した先輩たちから
何を学び、何を是正し、
それらをどう継承していけばよいか。」
(座長/影山なお子さん)
(会場/横浜市 開港記念会館)
さてそこで、
「各種栄養士会が活性化しないのはなぜか、
その分析と対策を考える。」から
振り返ることにしよう。
魅力的、継続的に運営するには、
それ相当のトレーニングが必要。
しかし、会社や公的機関でさえ、
前例を継承し続けているのが普通で、
スムーズな組織運営をするための講習を
管理者たちが、
継続的、定期的に受けるところはごくわずかだろう。
ましてや予暇活動としての組織となると、
組織運営の経験のない人がほとんどだから、
「しっかり基本を学ぼう」などという発想そのものがない。
そして、会長職の多くは輪番制。
なんとなく協力的な人を選挙や推薦で選んだりするが、
「私がやるからには……」などという
自負や使命感は弱く、
もちろん所信表明もないままに選出する。
多くは、「もうこれ以上逃げられない」
という迷惑感をかかえたまま役員になったりする。
そんなに嫌なら、
最初から組織などつくらなければいいのに、と思うが、
創設者の多くは、
それほどの自負や構想はなく、
ほかの地域や、ほかの学会を真似て、
あるいは、それなりに拠り所がほしい、
という願望があって、
いわば〝成り行き〟で立ち上げたりする。
行政からの促しがある場合も少なくないだろう。
そんなこんなで、なんとなく発足して、
なんとなく継続している……というのが実態ではなかろうか。
それでも、会員となれば、
それなりに箔がつくし、
学会誌やセミナーによる情報も、
人によってはプラスに働いている。
幸運な人は、そこで新しい友達ができたりもする。
経済学部や文学部卒業者の多くは、
学会そのものがなかったり、
あっても、参加する必要を感じていなかったりするから、
それらに比べれば、
栄養士会の場合は、
それなりの機能を果たしていると言える。
資格で働く人の割合が多い職種の利点でもあろう。
しかし、任意グループの運営を
長年続けてきた者から見ると、
ほとんど休眠状態にしか思えないケースが多い。
その理由をあげてみよう。
1.集まりに活気がない。
セミナー、イベントなどはもちろん、
懇親会などにもアットホームな空気が漂わない。
その理由は、発起人や発起人グループがおらず、
引継ぎ、引継ぎでやってきた役員に
グループ運営のノウハウも、将来展望も、情熱もない。
もちろん、役員のほとんどは、
プロデュースや司会の経験がない、
ときたもんだ。
2.対象者への理解も寄り添いもない。
グループ運営の基本は、
参加者が、いま何を求めているかを把握し、
そのニーズに応じるための運営や企画を
行なうことである。
ニーズは、アンケートを取っても引き出せない。
役員が、それこそ月に1回は集まって、
セミナーの講師をだれにするか、
いま求められている情報は何なのか、
そいうことを話して、話して話しまくって
知恵を絞るべきである。
ときには、そういうトレーニングを受けてきた人や、
なぜか、そういう才能を持っている人もいるが、
任期が1年や2年では、
とても経験や才能を発揮しきれないし、
初経験の人の場合でも、
身につくような学習はできない。
本気で会を活性化する気なら、
謝礼を払ってでも、
数年(5~10年以上)は
その任に当たってもらうべきである。
(実際には、
そういう決定ができるリーダーが不在だが)
役員は輪番制で、任期は1年だなんて、
人生の大事なステージとなる「予暇活動」を
舐めていてはダメ。
そんな料簡では、
とても充実した人生なんか送れない。
3.経験者から学ぼうとしない。
前述のように、
「予暇活動」の意義を理解していないから
(ほとんどの日本人に言えることだが)、
外部の経験者から学ぼうとしない。
人から学ぶことができるか、できないかは、
有能と無能の分かれ道と言える。
(明治維新の日本人は優秀だった。
先進国から、いろいろのシステムを学んで身につけた)
ちなみに、ある業界の機関紙編集セミナーに招かれて
講師を務めたことがあるが、
編集関係者は、
熱海で、2日間合宿をして、
みっちり講義を受けるのだった。
それを何年も続けているという。
そこで、次のテーマに話を移そう。
「『食と健康』に関して活躍した先輩たちから
何を学び、何を是正し、
それらをどう継承していけばよいか。」
1960年代の前半までは、
栄養士が健康関係の書物を
単独で出版することはなかった。
医師の著書の、料理ページを担当する、
というパターンが普通だった。
表紙の著者名は医師で、
栄養士の氏名は数ポイント小さい字で印刷されていた。
料理書などでは、名前さえ出ないことがあった。
それが1970年代になると、
栄養士が、自身の名で本を出すようになった。
ささやかながら、
当時の『栄養と料理』も、
その風潮づくりに貢献していると思う。
今日では、
栄養士が料理書の著者となるのは普通のことになったが、
まだ、健康や生活習慣のあり方について
論述する書物は少ない。
この分野は、
栄養学の基礎がない医師に完全に持っていかれている。
これを黙認していてよいのか。
栄養士に意地っていうものはないのか。
フレイルや認知症予防の論述には、
「ライフスタイル」「食の哲学」「健康の哲学」などのテーマを
避けて通れないところがある。
これは、栄養士にとって、追い風ではないか。
このジャンルに参入するには、
栄養士養成校で学んだ栄養学だけでは
もちろん、とてもネタ不足。
「栄養学は日本人にとって、どんな貢献をしてきたか」
「栄養学はなんのためにあるのか」
「現代人にとって、栄養学はどんな意味があるのか」
「好ましい食生活とはどういうものか」……
といったテーマについて、
仲間と語り合うこと、考え抜くこと、
学び続けること。
それが、バトンを受けるランナーとしての
栄養士の順序であり、使命であろう。
一見、絶望的に困難なことのように思えるかもしれないが、
先輩たちは、そういう道を突破してきたのである。
ここでリタイアするわけにはいかないであろう。
さあ、バトンタッチは近いぞ!!
by rocky-road | 2024-08-31 23:37 | 「食ジム」