「ネットワーク」という贈り物。

昨年末に、
ロッコム文章・編集塾/影山クラスからのお歳暮として、
ディズニーシー、1泊2日のツアーをプレゼントしていただいた。
2月29日、3月1日のツアーを楽しんできた。
何回訪れても楽しめるリゾートである。

昔、自然保護関係の人から話を聞いたことがあるが、
森林などを1日かけて自然観察会などを開催した場合、
参加費3千円でも高く感じる参加者がいる、とのこと。
しかし、馬車やラバーボート、犬橇(ぞり)などに乗った場合は、
5千円でも1万円でも気前よく払う。

つまり日本人は、
情報にお金を払うのを惜しむ傾向があるものの、
乗り物などで遊ばせてもらうと喜ぶと。

ディズニーランドとディズニーシーの違いにも
似たところがある。
「シー」は、乗り物や遊具など、遊んでくれるものが少なく、
したがって、どちらかといえば大人向き。
長崎のハウステンボスも、「シー」に近いか。
どちらも、自分で楽しいと感じるエリアを選んで歩く楽しみがある。
私の旅には、この主体性や自由さが不可欠である。
ガイドブックをなぞる旅は、むしろ苦痛である。

それだとしても、
「シー」も「ハウステンボス」も、
所詮は人為的なアトラクションそのものではないか……。
……それを言っちゃぁオシマイヨ。

そうだとしても、作り物を感じさせないリアルな演出がうれしい。
港に、とりあえず置かれた積み荷や船具などが、
無造作に放置されている、
そういうところがなんとも楽しい。

日本人に、このリアリティを演出する企画力はあるだろうか。
そう問いつつ、スタジオカメラマンになりきって、
おもしろいアングルを見つける楽しみは、
何年続けても飽きることはない。

ツアーから帰った翌日(3月2日/土)の朝刊で
88歳の男性が、
「終活の教科書はあるのか」と尋ねている、
人生案内の記事を目にした。

年賀状はおしまいにしたが、
趣味の会や、昔の同僚との同期会からの抜け方がわからず、
教えてほしい、と。

昔から、「バカは死んでも治らない」と言われているが、
88歳のバカには、つける薬はない。

「♪ アンタ、いったい何を学んできたの?
私だって、私だって、疲れるわ♪」
まずは、「終活」などというコトバを使うことのおバカぶり。

身のまわりのガラクタを整理したり、
人とのつき合いを少なくしたりする行為に
「活動」の「活」を使うことの誤り。
そんなことは「活動」以前の
日常生活の惰性以外の何物でもない。

いまの日本の新聞社には、
理念や志向性がないから、
「終活」などという、無責任な流行語を流布させることに
なんの迷いもためらいもない。

「終活」とは、
要するにモチベーションを低下させて
死期を早める「非活動」にほかならない。
「就活」や「婚活」のもじりなのだろうが、
なんとも浮わついた造語である。

新聞社はもちろん、
いまの日本人の多くは、
人間は肉体への栄養補給のほかに
心への栄養補給(モチベーション)が不可欠であることに
気づいていないようである。
だから、「終活」などという、
危険なコトバをノー天気に使うのである。

この人生案内の回答者、
樋口恵子さんは、さすがに
「共通体験をもつ仲間がいることは力強く、
生きる力が湧いてきます。
ですから、人とのつながりは早急に整理せず、
できる形で続けていくことをおすすめします」
とまとめている。

そのとおりなのだが、
「終活病」に感染してしまった、このおバカ男には、
「時すでに遅し」で、効き目はないだろう。

ディズニーシーに誘っても、
腰をあげる気力も体力も、残ってはいないはず。
部屋にこもって、ボケッ~と、その日を待つしかないのだろう。

「人生100年時代」とは言われるが、
100歳をずっと前にして、
早くも人生を〝持て余す〟人がふえてきている。
そういう人たちが好むコトバが「終活」であろう。

健康寿命の延伸を促進する側面には、
むしろ人生の長さに困惑する人をふやす要素もあるのだろう。



生活習慣病が話題になった時代にいわれた、
「早期発見・早期治療」よりも
もっともっと早い対策が必要だろう。

いや、「対策」というコトバは不適で、
ただひたすら、「きょう」を楽しく、
「あした」も楽しい環境を
10代のころから積み上げていくことである。

「楽しさ」は、笑い転げることばかりではなく、
人を楽しませたり、
この世で受けた「借り」を一生かかって返済したりすることである。
とても人生を持て余しているヒマなどないはずである。



大橋予暇研究所としては、
まだ「予暇思想」の普及の不備に
責任を感ずるばかりである。

ディズニーシーを満喫したあとには、
重い課題が待っていた。
「持て余し」のない人生に
感謝あるのみである。



by rocky-road | 2024-03-02 21:53 | 人生100年時代

