管理栄養士の高田和子さん、吉田美代子さんが
監修した書物、『たんぱく質 早わかり』が
女子栄養大学出版部から刊行された。
吉田さんは、かつて、
わがロッコム文章・編集塾に在籍していた方。
いまも、フリーの栄養士として
コンビニでの食事相談や
食と色との心理的・生理的関係を説くなど
広範囲にユニークな活動を続けている。
今回の出版のことは、
ご本人から伺うまで知らなかった。
かつて私が勤めていた女子栄養大学出版部からの刊行
ということにとどまらず、
この「早わかりシリーズ」が、今から37年前の1986年(昭和61年)に、
私が企画したシリーズであるという点で
ここに吉田さんが登場するという因縁に深い感慨を覚えた。
私とは接点のない後継のスタッフたちによって、
37年間も、1つのシリーズが継続しているのである。
企画というものは、その意味で終点はない。
当時の私は、『栄養と料理』の編集長と、
書籍編集長の兼務する時期もあって、
2課の編集長テーブルを行き来しながら、
このシリーズを企画し、推進した。
実務は外部のプロダクションにお願いした。
そのプロダクションとして、
竹内富貴子さんが運営していた≪カロニック・ダイエット・スタジオ≫や
藤原眞昭、勝子夫妻が運営していた≪群羊社≫などが
筆頭にあげられる。
このほかにも、プロダクションや専門分野の方たちのお世話になった。
話は遡って、
『栄養と料理』では、新年号と7月号には、
前任者からの継承で、別冊付録として
「献立カレンダー」(半年間の朝、昼、夕の献立表)をつけていたが、
1980年7月号に、
「市販食品・外食のカロリーガイドブック」という付録をつけてみた。
これが好評だったので、
この年の12月に、これを単行本として出版した。
「市販食品・外食」は単行本としても好調と聞き、
翌1981年(昭和56年)の7月号に、
『毎日のおかずのエネルギー・塩分カタログという』付録をつけてみた。
これも後日、書籍として再登場させ、やはりヒットした。
営業部門の課長からは、
「付録としてつけたものを本にするというのは、
二番煎じ的で安易ではないか」と指摘された。
このときの私の反論はこうである。
「なに言っているの? もともと書籍として企画したものを
雑誌の付録にサービスとしてつけたんただよ」
女子栄養大学出版部では、
毎年1月に、『食品成分表』の年度版を発行していたが、
「ガイドブック」や「カタログ」などを「データもの」として
担当者間では仮称するようになっていった。
親しかった営業課や制作担当のA氏からは、
「大橋さん、これからはデータものだよ」と励まされた。
A氏は、大手印刷会社から引き抜いた人物で、
印刷所の決定や用紙の手配をすることに堪能だった
こういう内部事情の流れの中から
「『栄養と料理』/早わかりシリーズ」が生まれた。
1986年(昭和61年)10月に、
その第1号『食品の塩分早わかり』を刊行した。
予想どおりの大ヒットで、
同年12月には『食品のエネルギー早わかり』を刊行した。
以後、『ダイエットのための食品選び早わかり』
『野菜300㌘のとり方早わかり」と続く。
「早わかり」とは、
なんともひねりのない、俗な表現ではあるが、
「カタログ」や「ガイドブック」「便覧」などよりも、
気どりがなく、親しみやすいネーミングだと考えた。
2023年6月に出た、吉田さんがかわった
『たんぱく質 早わかり』は、
シリーズ名を
「FOOD&COOKING DATA」というのを
シリーズ名としているようだが、
私の中では、まさに「早わかりシリーズ」の継続であり、
わざわざ英語表記をする必要はないと思う。
ネットで検索すると、私が退職した後にも
『コレステロール、食物繊維、早わかり』
『腎臓病の料理のコツ 早わかり』
『栄養アップ カロリーアップのコツ 早わかり』
『糖質 早わかり』
『気になる脂質 早わかり』
などが刊行されているようである(発行順不同)
以上、ヒット企画の歴史的秘話と、
人との意外なかかわり、というお話でした。
話はガラリと変わって、
この2023年7月5、6、7日の北海道旅行の写真を
何点かアップしておこう。
昔(1975年)、根室沖や屈斜路湖などへの
スノーケリングの旅をして以来の、
48年ぶりの北海道である。
何点かを披露して