《パルマローザ》の20年は、長いか短いか。

パルマローザが発足してから20年目になるという。
任意の非営利組織が20年間、
休眠することなく活動を続けているのは尊敬に値する。
主宰者、運営者は
まずは精神的にタフでなければならないし、
同時に、いやそれ以上に、使命感が必要である。

栄養士によるサークル活動が
世の中にどれくらいあるのか、確かな情報をもっていないが、
これだけ多様な活動を続けるサークルは
そう多くはないのではなかろうか。

パルマローザの活動の一部をあげると、
各種セミナー(身だしなみ、話し方、立ち居振る舞い、
メイク、料理、栄養士のあり方、文章表現、
読書会(輪読)、健康論、ライフデザイン、食事の栄養指針、
写真教室、編集論、哲学、ほか)
ウォーキング、街歩き(合羽橋、古書店めぐりなど)、
旅行、ダイビングなどなど。
そして、機関紙の定期発行(~49号)。


基本的にコンセプトがしっかりしていること、
すなわち、栄養士のあるべき姿を希求し、
それに沿った企画を立てて、実践しているからである。

長く続けることを目的としているのではなく、
やりたいこと、やるべきことがたくさんあるので、
それの実現に傾注していると
あっという間に、時間も年月もたってしまう。
「継続は力なり」というが、
それは順序が逆で、
力(モチベーション)があるから継続するのである。

もっとも、
物質にも組織にも「惰性」が働くから、
惰性だけで継続している組織も少なくはない。
そういうところにあるのは「継続」ではあっても、
「力」はほとんど残っていない。

パルマローザを立ちあげた理由は、
いろいろのところで開催されるセミナーに
多くの栄養士が集まるものの、
会が終わると、各自は黙々と帰ってゆく。
そこで聞いた話について
ほかの受講者と感想を話し合うことはない。
そのことの淋しさ、不合理さを感じて
影山なお子さんが、
栄養士のネットワークをつくろうと考えたという。

感動や感想は、
だれかとの話し合いによってアウトプットすることで、
脳内の認知度は高くなる。
美しいもの、心動かす体験をしたとき、
「きれいだね」「いいね」と
確認し合う人がいると、
体験は言語化され、脳内に鋲止めされる。

そういう話し合いがない人は、
講演会に行ったあと、
「どういう内容だった?」と、
あとで人から尋ねられると、
「ええと、え~と、健康についてだった」
「講師は?」と聞かれると、「覚えていない」と。

「会場には何人くらい人が来ていたの?」
などと聞かれたりすると大ピンチに陥って、
「後ろを見なかったのでわからない」
などと細々と答える。
情報がほとんど脳内にストックされていない状態とは、
こんなものである。

それでも、
その日のうちに、
そんな問いかけを受ける人は幸せである。
情報の受発信は
群れ行動をする動物にとって
不可欠の健康要因である。

栄養学は、
ヒトという動物のボディ(マシーン)のメンテナンス
および強化を目的とする学問である。
しかし、その前提には
人間として、豊かな人生を送る、
という暗黙の方向性がある。

それゆえに、
食事は、きれいでなければいけないし、
おいしくなければいけないし、
楽しくなければいけない。


そのことを視野に置かない栄養学は
専門バカの視野狭窄状態と言うしかない。

そもそも「健康」は、
人生100年を目指すものではないし、
病気にならないことをメインテーマとするものでもない。
健康は、人それぞれの人生の楽しみを深めること、
その楽しみを人と共有すること、
そうした生きがいを増やすことなどなどを
下支えするものである。


健康は医療機器や体液検査で把握するもの、
ということが常識になったが、
だからと言って、
目視確認することを軽視するのは、
「木を見て森を見ない」状態である。

人はどこに向かってどう生きるのか、
家族、友人、知人とどう接すればよいか、
知らない街を歩くとき、どういう表情をすればよいのか、
「人生には愛を。」と書くとき、
句点(。)を打つべきか、感嘆符(!!)にするべきか、
きょうのランチは「ニシンそば」か「生姜焼き定食」か、
ゴミ捨てに出るとき、ウエアはニットか、
ポリエステルシャツか……。

そんなことを考えることも、
つまりは、そう自分に問いかけることも、
健康を見える「カタチ」にするための健康行動にほかならない。
そして、パルマローザのメンバーは、
「健康のカタチ」を示すことが、
栄養士の社会行動として必要であることを知っている。

ボディには栄養素とエネルギーが必要なように、
心にも(脳)にも「情報」という動因(モチベーション)が
不可欠であることを知っている。
20年間、ボ~と生きてこなかった成果であろう。


人が生きている限り、
企画はなくならない。
まさに無限である。


次回のイベント、次々回のイベントを考えているうちに、
すぐに次の10年目、20年目がやってくるはずである。
パルマローザよ、きょうも乾杯!!

by rocky-road | 2023-02-08 21:53 | パルマローザセミナー