あなたの好きな外食ベスト3は?
「栄養士は、外食店利用のメリットを
どう認識し、どう健康支援に役立てるか。」をテーマとした。
(2022年12月18日/日 横浜市技能文化会館)
座長/堀之内 文美
アドバイザー/大橋禄郎 影山 なお子
進行項目は以下のとおり。
1.私が利用する外食店、トップ3。(1つでも可)
(味、雰囲気、サービス、入ったきっかけ、時刻、ほか)
2.私が外食店を利用する(あまりしない)理由。
3.多くの栄養士が、クライアントなどに
外食をすすめない理由を徹底分析!!
4.世界にアピールしたい日本の外食産業、
そのポイント20項目以上……。
5.健康支援者として認識しておきたい
外食・中食利用のメリット、デメリット。
参加者は全員、外食活用者だから
外食の利用状況についての発言が多く、
ここでたっぷり時間を使った。
この点が世の多くの栄養士とは違うところ。
そのため、時間を30分延長したものの、
「4」「5」については
ほとんど語り合えなかった。
そこでここでは、後半の部分について、
大橋の私見を提示しておきたい。
(前半の経緯については、
「活動結果レポート」にお任せしよう)
現在の栄養士が、
クライアントの外食利用について
どう評価しているのか、
充分な情報を持っていないのでなんとも言えないが、
私が食生活雑誌を担当していたころは(1970~2000年)、
ファストフードを中心とする「外食」や調理済み食品、
「ジャンクフード」(菓子パンやスナック菓子、清涼飲料など)が
急速に普及している時期である。
同時に、「成人病」が「生活習慣病」と言い換えられ、
肥満や高血圧症、糖尿病、胃腸病(胃がんなど)が
問題視されていた。
家庭では、自宅で調理をしないときは
「手抜き」などといって、
自戒したり言い訳をしたりする風潮があった。
外食を批判的に見るのは、
この時代あたりからではなかろうか。
もっと遡れば、一挙に明治維新あたりに……。
外食は、むしろごちそうだった。
大事なお客があると、寿司や鰻重の出前を取ってもてなした。
1950年代だったか、
地方の親戚を訪ねたら、
「東京から来てくれたのだから、ラーメンを取ろうのう」
と言って、町から出前のラーメンをとってくれた。
これには驚いた。
そういうこちらも、
アメ横でバナナを買ってお土産に持って行った。
のちに、自分が編集する雑誌に書いたことがあるが、
「成人病」は、外食をよく利用した人から起こった病気ではなくて、
家庭の食事をし続ける人から始まったものである。
日本人の伝統的な家庭食、別名「おふくろの味」は、
高血圧症(脳血管障害)や胃腸病(とくに胃がんなど)などを
発症させやすいという弱点があった。
ところが、当時のドクターや、その意を受けたマスメディアは、
「食の欧米化」が「成人病」「生活習慣病」を多発させていると
しきりに説いた。
それでいて「欧米化」の定義はあいまいなまま。
栄養士が、いまも外食にうしろ向きなのは、
この時代に刷り込まれた食事観であろう。
いま振り返れば、
生活習慣病がふえ続けたのは、
その間、日本人の寿命が伸び続けたからである。
「無病息災」とはいかず、
「有病息災」の人がふえたのである。
人生を50代で終わらせていた人が多かった時代から、
人生70年、80年ともなれば、
その分、有病率が高くなるのはやむを得ない。
関西のある著名なドクターは、
脳血管障害が多い東北地方では、
コレステロール値が高い人のほうが健康である、
という論文を書いていた。
米の多食は塩分過剰摂取につながるが、
肉や卵、動物性脂肪の摂取は、
米の多食にブレーキをかける側面があった。
結果として、
食が「欧米化」している人、
外食、中食を利用している人のほうが、
健康度が高い傾向がある、という皮肉な結果になった。
「外食・中食否定型」栄養士は、
家庭の食事のほうが栄養的には上質と
信仰的に思い込んでいるのである。
「欧米」とは、どこを指すかはわからないが、
欧米諸国圏には、けっして短命国は多くはないから、
見当違いもはなはだしい。
アジアの国々のうち、
「欧米食取り入れ型」が進んでいる日本、香港、シンガポールなどは
むしろ世界的な長寿国でさえある。
「外食否定派」には、
以下の社会の大変革が、ほとんど視界に
入ってはいなかったようである。
*戦後、女性の社会進出が盛んになり、
「専業主婦」が激減していった。
*核家族化(都市への人口移動)が進み、
家庭料理の伝承が一般的ではなくなった。
(パンを主食とする「日本型パン食」が生まれた)
*〝電気冷蔵庫〟や電子レンジが普及し、
「食べたいときが食事どき」になった。
(氷を使う冷蔵庫はあった)
*こういう背景を反映して
外食・調理済み食品(のちに「中食」と呼称)産業が普及した。
その結果、そのバリエーションにおいて、
品質において、内食(うちしょく=家庭食)に
劣るところはまったくなくなり、
いまでは質量において、家庭食を超えている。
この議論の根本的な問題は、
そもそも「好ましい食事とはなにか」という基準がないままに、
外食はエネルギーのコントロールがしにくい、
塩分や脂肪が多いなどと、
イメージで論じ続けている能天気ぶりである。
「内食(家庭食)はよくて、
外食はよくない、などというアバウトな議論を続けていて、
理系の人間として恥ずかしくないのか」
もし、いまもそういうガラパゴス的栄養士がいるとしたら、
そう言ってやりたい。
そのような栄養士がほんとうにいるのなら、
ガラパゴスに連れて行って
進化の止まった動物として
ゾウガメと並べて観光資源にするしかない。
どういう食事が好ましいのか、
その基準さえわかっていれば、
食事をする場所は、地球上であれ、
月面であれ、その点は問題にはならない。
栄養士は、
好ましい「食事のスタンダード」を普及させることこそ、
最大の使命ではないのか。
「4.世界にアピールしたい日本の外食産業、
そのポイント20項目以上……。」
について、みなさんがあげたものに加えて、
あれこれをあげておこう。
*外食店のバリエーションやアレンジが豊富。
和洋中華、インド、韓国などなど。
ルーツを超えて豊かなバリエーションを生み出している。
トンコツ・サッポロ・博多ラーメン、つけ麺、
カレーうどん、カレーパン、カレーラーメン……。
中国人が「ラーメンは日本料理」と言うのはもっとも。
*ファミリーレストランが普及する一方で、
伝統的な専門店も存続している。
日本料理店、寿司、郷土料理、日本そば、天ぷら、
ウナギ、釜めしなど。
食器の種類とデザイン、包装、
おしぼりの提供など。
*フードサンプルの楽しさ、わかりやすさ。
*主食の小盛り、普通盛り、大盛りのオーダー対応、
お替わり可能。レディースセット、キッズセットなど、
利用者に合ったメニューの準備性。
*(最近はどこでも、とは言えなくなったが)
緑茶や麦茶、水などはお変わり自由。
*テイクアウトのときの、メニューをぴったり収める
容器の形状とデザインの豊富さ。
*会計が明朗、正確で、対応もていねい。
さて、まとめとして、
「5.健康支援者として認識しておきたい
外食・中食利用のメリット、デメリット。」とは……。
*もともと、天ぷらも、すき焼きも、カレーライスも
牛丼も、ギョーザも、
外食から家庭の食事に採り入れられたものである。
その意味では、外食は日本人の家庭の食事を
どれほど豊かにしているか、計り知れない。
*家庭の食事のマンネリズムを緩和する効果。
家庭にもよるが、
10年1日のごとく、
同じメニューを繰り返しているケースは少なくない。
外食利用は、栄養的にも、心理的にも、
ワンパターン化を防ぐ効果がある。
*外食は街の様子、店の特徴など、
情報収集の機会にもなる。
「今度、あの店に入ってみよう」
「次には、あのメニューを選ぼう」など、
認知機能を刺激する機会となる。
*かつてそうであったように、
外食・中食から、
わが家のメニューに取り入れるものは少なくない。
ちなみに、私の外食利用は月10回ほどで、
およそ20店舗が対象。
天ぷら、インドカレー(サラサラ系)、うな丼、
豚カツ、麦とろ+焼き肉、カレーそば、
ジャンボ餃子、中華系数店、地ビールとアメリカ風料理、
串揚げ、刀削麺、ファミレス数件(貝柱のマリネ)
日本栄養士会なり、
地域の栄養士会なりが、
「栄養士のための外食お楽しみツアー」を
継続して行なうことをすすめたい。
パルマローザなら、即、対応できるだろう。
かくいう大橋も、外食コーディネーターとして、
いつでもお役に立てる。
その結果として、
日本人の健康度が、さらにアップすることを約束する。
by rocky-road | 2022-12-25 21:20 | 「食ジム」