あなたは、夕食後、いかがお過ごし?
第115回「食ジム」が終わった。
(2022年11月20日 10時~17時/横浜市技能文化会館)
タイトルは
「栄養士は、余暇に関する話題力をどう磨けばよいか。」
座長/大橋 禄郎
アドバイザー/影山なお子さん

「余暇」「余暇活動」の定義をしっかりしようと思うと、
そうとうなボリュームになるが、
この日の話し合いでは、以下のように定義しておいた。

【余暇活動】
「仕事以外の、自分の自由になる時間に行なう
行為・行動・活動うち、習慣的・継続的なもの。
ごろ寝、テレビ・ラジオの視聴、インターネット、飲酒、
読書、運動、スポーツ、歓談、ショッピング、旅行、観劇、
映画鑑賞、コンサート、学習(語学、料理、音楽、習字)、
パチンコ、ボランティア、グループ活動、その他の趣味など。」

さて、当日の進行は以下のとおり。
1.私の余暇活動歴――そのきっかけから、今日まで。
(または、途中でやめた理由、余暇活動経験なしの理由)
2.人の余暇活動で、うらやましいと思ったところ、
学びがあったところ。(ジャンル、活動している人)
3.余暇活動の話題で、どうしてもついていけないジャンル、
こんな事例(例=ギャンブル、信仰、政治活動……)。
4.人の趣味や余暇活動を話題にしたり、
話題を広げたりするきっかけとして、
どんな問いかけが有効か。
5.余暇活動が健康維持やライフスタイルに
プラスになるとすれば、どういうところか。

まずは、「1」で、みなさんの余暇体験からうかがった。
この食ジムに継続して参加している人たちだから、
余暇活動のゼロの人はいない。

それと、事前に「余暇活動」の定義をしておいたので
イメージしやすくなったようで、
みなさん、複数の余暇活動をいきいきと紹介してくれた。
人の余暇活動を引き出す「話題力」とは
このようなものである。

みなさんのお話を聞いていて、
やはり「レクリエーション型」が
少なくないことが再認識できた。
「レクリエーション型」は大橋のとりあえずのネーミング。

クラスメイトや同僚、かつては県人会などを通じて集まった人が、
そのときどきで、旅行や会食、カラオケ、観劇などを楽しむパターン。

日本に多いカタチではなかろうか。
ときには、ゴルフや囲碁や、メインとなる活動がありながら、
なんとなく、それ以外の活動へと移っていくこともあるとのこと。

そう言えば、
私がスノーケリングを始めたのは、
幼馴染が、メインとしてきた登山をやめて
スノーケリングを始めるとき、
彼が持っていた登山クラブの規約を元にして、
スノーケリングクラブ用の規約を作ってやったのが
きっかけであった。

レクリエーション型は、
テニス、ゴルフ、登山、ハイキング、ダイビング、釣り、
楽器演奏、短歌、俳句、絵画、語学、ボランティアなど、
単一テーマにかかわっている人から見ると、
根無し草のように浮遊していて、
計画性も継続性もないように見えるが、
余暇活動がないよりも、よほどいい。

実際には、このカタチいちばん多そうだが。
レクリエーション型は、
言わば、予備校のようなもので、
そこから自分の好みの余暇活動を見つけてゆく人は多い。


そうだとすると、
ごろ寝にしろインターネットにしろ、飲酒にしろ、
それを習慣にしている人でも、
ちょっとしたきっかけ、
たとえば街のポスターとか、
健康支援者の問いかけとかによって、
次のアクションが引き出される可能性が
ないとは言えない。

かつて問題になった「ごろ寝族」は、
人との関りがないために、
「ボケ~っと状態」が何年間も続いてしまう。
無風の密室にぶら下がった風鈴みたいなもので、
チリンの「チ」ほども、音が出ることはない。

今回の食ジムでは、
食事相談を受けるクライアントにも
休みの日もごろ寝をしているという人がいる、
との事例の報告があったが、
これが大きなヒントを与えてくれた。

そうか、「ごろ寝」ってなんだろう、
人間、夜間に普通に睡眠をとっている人が、
休日も朝からずっと寝ていることができるのだろうか。

「ごろ寝」の行動分析をした研究者はいるのだろうか。
どこで寝るのか、自分の寝床か、リビングのソファーか、
ベランダか、畳の上に直(じか)か、
日によって場所を替えるのか、
いずれにしろ、なぜ「そこ」なのか。
横になるときは、上向きか、横になるのか、
枕を使うのか、肘枕か、座布団か、その他のものか。
目はつぶったままか、あいたり、閉じたりか、
近くにテレビ、スマホ、雑誌、本、その他があるのか、
それらを見たりするのか……。

このあたりの実態をつかまないと、
「ごろ寝」を、アタマから非生産的な行動と
判断してよいのかどうか、
結論は出しにくい。
食事相談のとき、
クライアントにさりげなく「ごろ寝の技」を聞いてみたい。

もっとも、「たかが、ごろ寝」について問いかけたりすると、
こちらの真意を知らないほとんどの人は
いぶかしく感じるはず。
こんな場合は、ときに「誘い水」が必要になる。
「あら、私もごろ寝が好きなんです。
だから、家族に『具合悪いの?』ってよく聞かれてしまう。
◎〇さんは、寝不足解消派ですか、考え事派ですか。
私みたいな『なんとなく派』ですか。
ほかに、なにかあるのかしら?」

特定保健指導の場合は、
そんなことに時間を使っていられないかもしれないが、
「ごろ寝」を分析することによって、
原因や傾向、そして対策が見えてくるかもしれない。
場合によっては、「余暇活動」として、
一定の市民権を得るほどの要素が見つけられるかもしれない。
問いかけ方によっては、
クライアントの気づきを促したり、
モチベーションを引き出したりすることが
できるかもしれない。

「余暇」は、とかく「余った時間」と受け取られ、
「自分の自由になる時間」(自由時間)
すなわち「余裕のある時間」との意味が軽視される。
それでは困るので、
私は「予暇」と、充てる字を変える提案をした(1995年)。

ヒトは、そして少なからずの動物は
以下のいずれかの行動をして日々を過ごしている。
1.生物的行動
睡眠・休養、沐浴・水浴、運動、摂食、身づくろいなど。
2.社会的行動
生産・消費、食生活、社会参加、学習、介護など。
3.文化的・保健的行動
休養、娯楽、趣味、学習、健康法、通院。
(行動には重なる部分あり)

これらのどこが欠けても「健全性」は低減する。
したがって、「3つの時間帯と行動」を
セットとして考える意味で、
「予暇活動」とネーミングした。

さらに言えば、
私が提案する「健康の6大要素」のうち、
「4.ストレスコントロール」
「5.よい人間関係の維持」
「6.生きがい」は、
「ヒト」から「人間」となった現代人の健康を
維持することを目標としている。
(従来の健康の3大要素=1.栄養 2.運動 3.休養)

予暇活動(ここからは「予暇」と表記)は、
生活習慣病対策のため、という範囲にとどまらず、
豊かな人生のベースとなるという点がポイントである。
「予定しておきたい時間」という意味である。

健康・食事相談において、
ここにいっさい触れることなく、
食卓上や食生活の範囲で行き来するのは、
もはや時代遅れ。
特定保健指導も、栄養士養成校も、
時代についていけていないのが現状である。

食生活の中にも、
予暇活動の要素は数えきれないほどある。
定刻に食卓につく習慣は、
スポーツ試合のキックオフやサイレンなどと同じこと、
コンサートや映画の開演時刻と同じこと。

食卓のトークには、
娯楽も学習もレクリエーションも含まれる。
食卓のリーダー(お父さん? お母さん?
お兄さん? お姉さん?)の養成には
国家試験や資格制度はいらない。
しかるべき機関(行政か)が、
しばしば講習会を開けばいい。
(「寝たきりにならないための食育教室」に
追加するとか)

同時に、話力のある栄養士、健康支援者は、
あるときはクライアントに、
あるときは家族に、
あるときは友人、知人に
こんな問いかけをしてみよう。

「夕食後は、どのようにお過ごしですか」
「食材のお買い物は、どういうところで?」
「土日の定番的な過ごし方は?」
「週末のご予定は?」
(連休、お正月、春休み、夏休み……)

「公休は、どのようにお使いになりますか」
「お仕事以外のご予定やお楽しみは?」
「お子さんに教えたいご趣味とかはありますか」
「国内旅行でお好きなところは?」
「海外出張とか海外旅行とかのご経験は?」
「宝くじで1千万円当たったら、どのように使いたい?」
「お好きなお花は?」(歌手は 俳優は スポーツ選手は)
「地球の最後の日に、おなかいっぱい食べたいものは?」

by rocky-road | 2022-11-23 22:57 | 「食ジム」