モチベーション・アッパー、誕生す。

食コーチングプログラムス主催の
《ロッキーサロン》3回シリーズ
「モチベーションを高める『言語アプローチ』」は、
2022年10月30日、
第3回の
「『モチベーション・アッパー』としての思想とスキル。」
をもって終了した。(かながわ労働プラザ)

第1回 「モチベーション入門」(8月28日/関内ホール)
第2回 「自分や人のモチベーションを高めるために
基本となること。」 (9月25日/かながわ労働プラザ)

モチベーションについては、
別のテーマの講義の中でも触れることが多く、
ずっと考え続けてきたテーマである。
今回、「3回シリーズ」としていただいたおかげで、
さらに思考を深めることができた。

その1つは、モチベーションについて
アブラハム・マズローの「5段階欲求説」を
下敷きにして考えてみたこと。
すると、モチベーションというものの理解が深まる。

そもそもモチベーションというコトバには、
いろいろの意味がある。
「(行動を起こす)動機」「動因」「刺激」「意味」
「意欲」「やる気」「きっかけ」などなど。
日本の社会では「意欲」「やる気」などの意味で使われることが多い。

では、「行動」とは何か。
ここでは行動療法の考え方が参考になる。
行動には「見えない行動」と「見える行動」があると……。
「見えない行動」とは、脈拍、血流、血圧、感情、思考など。
もちろん睡眠も夢も、立派な(?)行動である。

ここでおもしろいのは、
脈拍や血流、血圧などの生物的、生理的現象も
「行動」と考えるところ。
そうなると、草木が幹や枝を伸ばしたり
葉や花を開いたり散らしたりすることも
「行動」ということになる。

「植物も行動する?」
そう、立派に行動しているではないか。
花を開いて虫や鳥を惹きつけたり、
タイミングを見計らって果実の香りや甘味を濃くしたりして、
鳥を誘い、タネを遠くに運ばせたり。
もっとさかのぼれば、光合成によって
地球上に酸素を供給して、地球の環境をつくっている。
ものすごく大規模で意欲的な行動である。
そう、植物も
しっかりモチベーションをもって行動しているのである。

こういう話は、準備性のない人にうっかり話すと
精神科を受診するようにすすめられるから、
「隠れモチベーション・アッパー」内の
秘話にしておくほうがいい。
(「モチベーション・アッパー」なる造語も
今回、初めてタイトルに使った。
「熟語」としてのアピールである)

ここで、「5段階欲求説」の話に戻る。
人間のもっとも基本的な「欲求」
(つまりモチベーション)とされる「生理的欲求」は、
行動療法でいう「見えない行動」であり、
第2段階の「安全への欲求」もまた、
「見えない行動」である。

「見えない」ことは、行動の弱さとは無関係で、
むしろ、行動の原動力となり
個人の生命力となり、
人生の量と質を左右するものともなる。

そして、栄養士、健康支援者とは、
人の「生理的欲求」(食欲や食行動)や
「安全への欲求」(体調管理、病気予防、健康維持など)に
深くかかわる職業である、ということ。

今回のサロンで強調することができたのは、
従来の「栄養指導」「食事相談」は、
「5段階欲求説」の第1・第2段階をフォローするものである。
しかしそれは、人の社会活動の基盤となる部分であって、
そこは出発点。

「餅は餅屋」の格言のとおり、
栄養士、健康支援者の守備範囲はここのところだが、
人の欲求、モチベーションは、
さらに社会参加へと向かう。

「栄養指導」しかできない栄養士は、
「5段階欲求説」も、
人のモチベーションというものについても
ほとんど考えていないので、
人の欲求は「病気にならないこと」や
「健康になること」にあると思い込んでしまうのである。

その結果として、
食事相談の話題はもっぱら食卓中心となり、
「食事の前に野菜をしっかり食べましょう」
「ご飯は30回は噛みましょう」
「お酒はお水と交互に飲みましょう」
などと、噴飯もののアドバイスを
10年1日のごとく、100年でも繰り返す。
レパートリーが少ないというのは、
なんと退屈なことか。

《ロッキーサロン》では、
5段階欲求説がいう「社会参加への欲求」や
「(周囲に)承認(リスペクト)されたい欲求」を
視野に入れて食事相談や健康支援者を行なうと
相談の効果があがること
(相手のモチベーションをあげること)、
そして、結果として、
自分もリスペクトされる可能性が高い、
というところへ着地した。

「夕食後はどのように過ごされるのですか」
「お得意のお料理は?」
「ご家族で外食をなさることは?」
「週末のご予定などおありですか」
「お正月はお出かけになるのですか」
「ご趣味とかは?」
「奥様はなんとおっしゃっていますか」

食事相談というステージで、
それほど脱線しない、こういう問いかけは、
「安全への欲求(病気予防や健康維持もその1つ)」から
ステップアップして、
社会性への欲求を〝刺激〟することになる。
(刺激=動機づけ。モチベーション)

ただし、である。
世間一般は、栄養士を「栄養素の語り部」と見ているから
相手に奇異な印象を与えないように
さりげなく、さりげなく
話題を広げる必要がある。
この話力は、難度がそうとうに高い。
トレーニングなしでは実践には使えない。

もっと言えば、趣味を持たない者が
人の趣味を尋ねるなどというのは、
おこがましい。
「頭(ず)が高い!! 下がれ」である。
したがって、
この話力は、食事相談用のマニュアルにはできない。

出し惜しみしているようだが、
「生兵法は大けがの元」である。
(「なまびょうほう」=身についていない知識や技術を
振り回すと大失敗をする、という意味)

それでも、コツコツ続けていれば、
水は下流に流れるものだから、
20年後、50年後には、
食事相談はいまよりずっと楽しく、
クライアントを刺激するものになるはずである。

そうなれば、
「モチベーション・アッパー、あっぱれ!! 」
である。

by rocky-road | 2022-11-05 21:09 | モチベーション