肴はあぶったイカでいい♬

この6月4、5日に行なわれたセミナーのうち、
5日は、私の誕生日と重なった。


今年もパルマローザのみなさんから祝福を受けた。
毎年、この月のセミナーは、
誕生日に近い日を選んでいただき、
「スペシャル版」のセミナーというのが恒例となった。

今回のテーマは、
「食と健康を、
いつでも、どこでも、だれに対しても、
魅力的に語るための『話力』を
どう磨けばよいか。」

「話力」は「会話力」のことではなくて、
TPOに応じて、その目的にもっともふさわしい話し方、
話の効果的な内容などを指す。

『広辞苑』にも収載がないので、
自分で定義した。
定義は影山なお子さんのブログ
「スタンバイスマイル」でご紹介いただいたので、
ここでは重複を避ける。

「フィッシュウォッチング」
「スノーケリング=地の果てから始めるもう1つの旅」
「海と島の旅」「予暇」「食事力」「話力」
思えば、いくつかのコトバを作ったり
定義をしたりしてきた。
さて、このページでは、
6月4日に行なわれた、
《食コーチングプログラムス》主催の
「食ジム」第110回について書いておこう。
「食ジム」第110回
「飲酒習慣と健康との関係」について
栄養士はどう考え、どう対処すればよいか。
座長/みなきまゆみさん
アドバイザー/影山なお子さん 大橋

進行プロット(筋書)は以下のとおり。
なお、これを「プログラム」とするか「進行表」とするか
迷うところであるが、
『広辞苑』ではプロットを
「小説・脚本などの筋。筋書。構想。」
としているので、
今後は、これを使っていこうと思う。

「プログラム」とすると、イメージとして、
カチッと固まりすぎておもしろみがない。
小説や脚本のプロットは、
書き進むうちにいろいろと変更がある。
あくまでも「粗筋(あらすじ)」であって、
途中でどう変わってもいい、それを予定しておく。
そんな変化に期待と発見、そして喜びがある。

ディスカッションも、みなさんの発言、思考法によって
展開が変わってゆくので、
だれも着地点を予想できない。

したがって、
「食ジム」にも、「プロット」という用語が合いそうだ。
ちなみに、出版界でも、
担当ページの展開プランを「プロット」という。

さて、
「『飲酒習慣と健康との関係』について
栄養士はどう考え、どう対処すればよいか。」
のプロットは、

1.はじめてのお酒体験、あの日・あのとき――きっかけ、
お酒の種類、そのときの気分。(飲んでいない方はその理由)
2.「きれいな飲み方」「きれいではない飲み方」ウォッチング。
あるある事例――あの人の場合、この人の場合。
3.お酒の飲み方、私の流儀――種類、1回量、頻度、場所、
おつまみ、1人の場合、だれかとの場合、話題、お店選び。
4.健康論として考える「お酒」「飲酒習慣」「ほどほど」とは?
5.「飲酒習慣と健康」について
栄養士は、どんな知識やセンスをもてばよいか。

このディスカッションでは、
栄養士や健康支援者が、
飲酒習慣のあるクライアントにどう接するか、
ということを語り合った。

栄養士や健康支援者にとって、
「酒は百害あって一利なし」と思い込まれがちな飲み物だから、
多くの場合、内容にかかわらず「禁止」または「抑制」を
すすめることが多い。

もちろん、「食ジム」に集まった人たちには
そんな野暮はいない。
だから、
こんなダメダメ現場をしっかり押さえている。

ある健康支援者は、クライアントに対して
「お酒を飲むときは水を用意して、
酒と水とを交互に飲むとよい」と
すすめたりするという。

確かに、ウォッカやウイスキーなどの強い酒を飲むとき、
そのようにする飲み方はあるが、
ワインや日本酒、ビールを飲むのに
こんなバカな飲み方をする人はいないはず。
お酒を飲んでいるとき、
みそ汁やスープ、お茶が近くにあるだけで
機嫌が悪くなる人が、昔はいた。
酒と水物、これほど合わないものはない。
いまは、酒それ自体が有害であると思う人は
少なくなっていると思うが、
それでも、では、なぜ有害ではないかを
ちゃんと説明できる人は少ないのではないか。

以前、新聞にこんな記事が載った。
見出しは「2日に1合」
「飲まないより飲む方が健康」
(読売新聞 1999年9月10日)

「危ない見出しだな」と思ったので、
このことはよく覚えている。
記事は、国立がんセンターが、
40歳代、50歳代の男性、1万9千231人を対象に
7年間追跡調査をした結果報告である。

調査は、飲酒の頻度と1回に飲む量を
6グループに分けて、がんによる死亡率を調べた。
結論だけを示すと、6グループ中、
日本酒に換算して、2日に1合程度飲む人の死亡率が
もっとも低かった。2位は2週に1回、3位は毎日飲む人、
ここまでは、飲酒をまったくしない人よりも
死亡率がわずかに低かった。
そして、1日に2合以上、4合飲む人の死亡率は、
まったく飲まない人よりも上昇した。

結論は、見出しのとおり「2日に1合」
程度飲む人の、がんによる死亡率は、
酒を飲まない人よりも低かった、ということである。

なぜ危ない見出しなのか。
それは
酒に「がん死亡」のリスクを減らす薬効が
あるかのような誤解を招く要素があるから。

大がかりで有意義な大調査に
部外者が注文をつけるのは申しわけないが、
この調査では、
飲酒の場所、時刻、同席の人の有無などまでは
調べられなかった。

つまりライフスタイルに対する視野が
この調査の時代にはなかった。
いや、いまも、ライフスタイルと健康との関係について、
概して日本人の関心事にはなっていない。

だから「孤独のすすめ」だの「断捨離のすすめ」だの
「捨てない生き方」(その一方でモノを買わない、と)だの
という本や記事がシャーシャーとしてまかり通るのである。
それらが健康のリスクになることを
本人はもちろん、
国民の大多数がご存じない。

調査した人にいわせれば、
「飲酒シーンの調査など、
手間も時間も費用もかかりすぎて、
できっこないでしょ」
そうだとは思うが、「それを言っちゃぁ~おしまいよ」
1万9千人の調査より、
500人、1000人の調査のほうが、
実態に迫れる場合だってある。
ポイントは調査の目的、
それ以前の、調査員のライフスタイル観である。

2日に1回、1合程度の酒を飲む人は、
たぶん、夕方、仕事を終えて、
食卓に着いて一息ついていることだろう。
そして、一気飲みではなく、
ちびちびと、舐めるように飲む。
「♪肴はあぶったイカいい♬」
近くに家族がいることだろう。

そういうライフスタイルは、
それなりにリズミカルで、
ストレス緩和効果もある。
実は、つまみはイカだけではなくて、
刺身であったり、おでんであったり、
焼き肉であったり、カレーライスであったり……。

栄養士、健康支援者、そして研究者に
いま求められているのは、
人それぞれの生き方、ライフスタイルである。
人は百人百様、みんなみんな違う。
そう、その無数の違いの中から
共通性、法則性を見出す、
その洞察力が求められる。


人の健康にかかわる者は、
まずは人間、いや動物、いや植物について
しっかり目を向け、心を向け、
彼らの心を読み解くことである。

「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。
かんじんなことは、目には見えないんだよ」
(星の王子様/サン・テクジュペリ)

人のライフスタイルも、
目では見えず、心で見るものであろう。






by rocky-road | 2022-06-12 23:06 | 「食ジム」