2022年 フォトコンテスト入選者発表。
4月29日の、恒例の写真教室は、
11時に集合後、1時間もしないうちに小雨が降り出した。
カメラ条件(撮影条件にあらず)としては難ありだが、
インドア撮影会場の予約を急遽しておいていただいたので、
じゅうぶんに撮影を楽しめた。
写真は瞬間、瞬間を撮るものだから、
天候やその場の条件によってモチベーションを下げることなく、
いまこの瞬間にある被写体を見つけることが大事。
こんな例がある。
ボートダイビングのとき、
ダイバーはボートから海中にエントリーして、
被写体探しに動き回る。
しかし、ベテランは、ウロウロしないで、
ボートの真下あたりで被写体を探す。
タンク内の空気の容量は1時間前後分、
その間に仕事をしなければならない。
「いいもの」を探し回る人は、
結果的に何も得られずにタイムオーバーに。
自然界といえども、
感動や被写体が
われわれを待っていてくれるはずはなく、
自分で創るものである。
写真の創造性とは、そういうもの。
この点は、覚えておいていただきたい。
今回は、初参加の人も多く、
充分にレクチャーをする間もなく撮影開始になった。
それでも、きちんと仕事をした人はいる。
今回から、金、銀、銅の3ランクで評価することにした。
「金賞」の該当作はなかったが、
銀、銅の対象作品と、佳作対象作品を選ぶことができた。
選評は、あえてハードルを下げずに、
従来どおり、温かく、やさしさを保って論じた。
(大橋禄郎)
エントリー 全作品講評
(敬称略)
◎銀賞
エントリー5
「養花の雨」
撮影 小林 美穂
【選評】
アジサイ系の花だろうか。
そこに降る雨脚を見事に写し取っている。
意図的に撮るのは、一眼レフなら可能だが、
コンパクトカメラではむずかしい。
雨脚がスジ状に写る、
ちょうどよいシャッタースピードが得られたのだろうか。
カメラアングルの勝利といえそう。
タイトル「養花の雨」はなかなかシブい。
タイトルが作品をいっそう引き立たせている。
俳句の季語「養花天」(ようかてん)を下敷きにしたか。
念のため、「養花天」は、花曇りの天候のこと。
◎銅賞
エントリー1
「雨にぬれて、なまめかし」
撮影 米澤 須美
【選評】
絵作りが見事。バラとマリンタワー、
そして、つぼみが1輪。
それをタワーより上に配置した構図でキメた。
露出もピントも申し分ない。
タイトルはいけない。
散文的で説明のしすぎ。
そもそも花を「なまめかし」と表現するのは
あまりにも平安時代的で、かつ陳腐。
絵がいいので、なんとか銅賞にとどめた。
◎佳作
エントリー14
「天使をつかまえた! 」
撮影 竹本 有里
【選評】
トリックアートでの写真は、そのためのものだから、
撮影者のオリジナリティを発揮しにくい。
それでも、この作品はユニークなほうかもしれない。
親子の視線が生きている。
タイトルの「つかまえた」はどうかな。
「天使さま降臨」とか「お空から来た子」とかは?
◎佳作
エントリー10
「キング&クイーン」
撮影 甲斐 和恵
【選評】
花とマリンタワーの対比。
このアングルが選べるようになると、
中級のフォトテクニックに昇格か。
クイーンがキングよりも上に出ているのは
ジェンダーフリー時代の反映か。
そのせいか、風情や情緒よりも、
トレンドを強く感じさせる作品。
◎【選外】(以下、同)
エントリー2
「バラより美しい~♪」
撮影 佐藤由起子
【選評】
1画面にいろいろのものが写りすぎていて
アピール力がない。テキトーにカメラを向けて、
テキトーにシャッターを切っただけでは作品にはならない。
タイトルは、古臭い賛辞でイヤミ。
人間とバラを比較するな。
エントリー3
「私たちも、撮られたい」
撮影 池田 麻理
【選評】
ブツ撮り実習会場での記念写真撮影を
「横撮り」したもの。
記念写真風景をキャッチするなら、
右端のカメラマンも入れ込むこと。
人が撮影しているものに便乗した写真にロクなものはない。
タイトルは意味不明。
エントリー4
「猫の目線」
撮影 深津 惠子
【選評】
ネコの置物はかわいいが、
それは彫刻作者の作品の範囲。
それを自分の「写真作品」にするには、
テーブルの上に置いただけではなく、
置き方やカメラアングルを工夫して
鑑賞者をうなずかせたい。
「目線」を強調するには、
目に思い切り寄ってみるとか。
エントリー6
「4月の雨がくれた宝石」
撮影 山同 紀子
【選評】
感性は人それぞれであろうが、
このバラのつぼみからは、
とても「宝石」の輝きは感じられない。
画面もアンダーで暗いし、
周囲や背景もゴチャゴチャしている。
作品にがんばってもらわないと、
タイトルだけでは救えないこともある。
エントリー7
「小雨ふる公園で、
リトルピープルに出会ったハッピーな一日」
撮影 崎山 光江
【選評】
ペットや愛玩物を旅先などの風景を背景に撮る人は多い。
この作品は、バラのアーチとのコラボか、雨か。
それにしては、どちらも収まりが悪い。
この人形なら、氷川丸とか、バラの群生とか、マリンタワーとか。
もっとインパクトのある背景はあるはず。
人形にだけ気をとられないで、背景にも目配りを。
タイトル、日記かエッセイのタイトルには向いているかも。
エントリー8
「なにがあってもエンジョイライフ!!」
撮影 永野 幸枝
【選評】
トリックアートの設定を自分なりに切り取っていてよい。
全体を暗めにしたため、モデルの表情が浮きあがった。
表情もポーズもいい。
タイトルの「なにがあっても」はいらない。
グダグダ説明しないで「エンジョイライフ」で充分。
エントリー9
「異人さんに連れられていっちゃった」
撮影 堀之内文美
【選評】
視界に入った広い風景を撮っただけでは「作品」にはならない。
この絵の中で、どの部分に着眼したのか、
それが「写真作品」というもの。
タイトル、おなじみのものだが、
この写真からは童謡「赤い靴」は浮かんでこない。
エントリー11
「あまやどり」
撮影 岩田 博美
【選評】
雨の風景はよくわかるが、絵としてのまとまりがない。
あえて「暗い雨の日」を表現したかったのか、
重い作品になっている。露出補正を考えよう。
「あまやどり」感を出すために、
上の部分を入れ込んでいるが、
歩く人の足まで入れてあげる目配りも必要。
やや右に傾いていないか。
縦位置の写真は傾きやすいので要注意。
エントリー12
「水の宝石と」
撮影 三奈木博文
【選評】
花に思い切り寄って雨のしずくを写し取っている。
が、科学写真ではないのだから、
もう少し風情を出せなかったか。
花の左端は切りたくないし、
バラの群生風景も感じさせたい。
それでもなお、しずくの表現はできるはず。
タイトルの「水と宝石と」も、凝りすぎ。
昔は文芸作品のタイトルに「……と」と気を持たせるものがあった。
ややキザなネーミング。
蛇足ながら、
TBSラジオに「伊集院光とらじおと」という番組が
今年3月まで続いていた。
放送局の番組タイトルには、ヘタなものが少なくない。
NHKは「ラジルラジル」だの「ラジルラボ」だのと
語感の悪いネーミング。
なんでラジオをラジルというのか。
エントリー13
「♯横浜 ♯たそがれ ♯ベルばら!! 」
撮影 影山なお子
【選評】
偶然だろうが、モデルの衣服と画面の色が
調和していて絵になっている。
モデルのポーズもよく収まっている。
記念写真としてはカメラ目線になるのだろうが、
作品にするには目線をオスカルに向けたほうがよいかも。
タイトルは、酔っぱらいのひとり言か。論評不能。
エントリー15
「タイムスリップ横浜」
撮影 三奈木麻弓
【選評】
トリックアートの絵を自分の写真作品としている。
絵作りに成功。モデルの位置、ポーズは見事。
タイトルも端的、撮影地もわかって気が利いている。
エントリー16
「アクロバット少年に、ねこビックリ!」
撮影 髙橋 寿江
【選評】
トリックアートの作例写真にとどまる。
モデルがだれなのかがわかりにくく、
記念写真としても難あり。
タイトルも写真の説明をしているだけで、
もっとも避けたいネーミング法。
写真作品のネーミングは、その写真からのイメージを
短いコトバでパチッと表現する。
この作品なら「最後のバンザイ」とか。
(わかるかな? わかんねぇだろうな)
エントリー17
「ケーキは私のもの」
撮影 奥村 花子
写真は、たった1回しかないかもしれない
その場面、その瞬間を自分の視野として切り取るもの。
そういう意味では、運ばれてきたケーキと、
そこにあった置物を組み合わせて楽しい場面をつくった
コーディネート力とユーモア感覚が光る。
置物を撮るときの参考にしていただきたい。
タイトルは、女性に多い「擬人化」、
しかも欲張りキャラにして作品の品格を落としている。
せめて、「小判もケーキも」くらいに。
by rocky-road | 2022-05-07 23:24 | 写真教室