2022年  フォトコンテスト入選者発表。

総評

429日の、恒例の写真教室は、

11時に集合後、1時間もしないうちに小雨が降り出した。

カメラ条件(撮影条件にあらず)としては難ありだが、

インドア撮影会場の予約を急遽しておいていただいたので、

じゅうぶんに撮影を楽しめた。


写真は瞬間、瞬間を撮るものだから、

天候やその場の条件によってモチベーションを下げることなく、

いまこの瞬間にある被写体を見つけることが大事。

こんな例がある。

ボートダイビングのとき、

ダイバーはボートから海中にエントリーして、

被写体探しに動き回る。


しかし、ベテランは、ウロウロしないで、

ボートの真下あたりで被写体を探す。

タンク内の空気の容量は1時間前後分、

その間に仕事をしなければならない。

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23225579.jpg

「いいもの」を探し回る人は、

結果的に何も得られずにタイムオーバーに。

自然界といえども、

感動や被写体が

われわれを待っていてくれるはずはなく、

自分で創るものである。


写真の創造性とは、そういうもの。

この点は、覚えておいていただきたい。


今回は、初参加の人も多く、

充分にレクチャーをする間もなく撮影開始になった。

それでも、きちんと仕事をした人はいる。


今回から、金、銀、銅の3ランクで評価することにした。

「金賞」の該当作はなかったが、

銀、銅の対象作品と、佳作対象作品を選ぶことができた。


選評は、あえてハードルを下げずに、

従来どおり、温かく、やさしさを保って論じた。

大橋禄郎)


エントリー 全作品講評

(敬称略)


2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23090535.jpg

銀賞

エントリー5

「養花の雨」 

撮影 小林 美穂


【選評】

アジサイ系の花だろうか。

そこに降る雨脚を見事に写し取っている。

意図的に撮るのは、一眼レフなら可能だが、

コンパクトカメラではむずかしい。

雨脚がスジ状に写る、

ちょうどよいシャッタースピードが得られたのだろうか。

カメラアングルの勝利といえそう。


タイトル「養花の雨」はなかなかシブい。

タイトルが作品をいっそう引き立たせている。

俳句の季語「養花天」(ようかてん)を下敷きにしたか。

念のため、「養花天」は、花曇りの天候のこと。



銅賞

エントリー1

「雨にぬれて、なまめかし」 

撮影 米澤 須美

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23092207.jpg

【選評】

絵作りが見事。バラとマリンタワー、

そして、つぼみが1輪。

それをタワーより上に配置した構図でキメた。

露出もピントも申し分ない。


タイトルはいけない。

散文的で説明のしすぎ。

そもそも花を「なまめかし」と表現するのは

あまりにも平安時代的で、かつ陳腐。

絵がいいので、なんとか銅賞にとどめた。



佳作

エントリー14

「天使をつかまえた! 」 

撮影 竹本 有里

【選評】

トリックアートでの写真は、そのためのものだから、

撮影者のオリジナリティを発揮しにくい。

それでも、この作品はユニークなほうかもしれない。

親子の視線が生きている。


タイトルの「つかまえた」はどうかな。

「天使さま降臨」とか「お空から来た子」とかは?



佳作

エントリー10

「キング&クイーン」 

撮影 甲斐 和恵

【選評】

花とマリンタワーの対比。

このアングルが選べるようになると、

中級のフォトテクニックに昇格か。

クイーンがキングよりも上に出ているのは

ジェンダーフリー時代の反映か。

そのせいか、風情や情緒よりも、

トレンドを強く感じさせる作品。




【選外】(以下、同)

エントリー2

「バラより美しい~♪」

撮影 佐藤由起子

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23124298.jpg

【選評】

1画面にいろいろのものが写りすぎていて

アピール力がない。テキトーにカメラを向けて、

テキトーにシャッターを切っただけでは作品にはならない。

タイトルは、古臭い賛辞でイヤミ。

人間とバラを比較するな。




エントリー3

「私たちも、撮られたい」 

撮影 池田 麻理

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23134862.jpg

【選評】

ブツ撮り実習会場での記念写真撮影を

「横撮り」したもの。

記念写真風景をキャッチするなら、

右端のカメラマンも入れ込むこと。


人が撮影しているものに便乗した写真にロクなものはない。

タイトルは意味不明。




エントリー4

「猫の目線」

撮影 深津 惠子

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23141359.jpg

【選評】

ネコの置物はかわいいが、

それは彫刻作者の作品の範囲。

それを自分の「写真作品」にするには、

テーブルの上に置いただけではなく、

置き方やカメラアングルを工夫して

鑑賞者をうなずかせたい。


「目線」を強調するには、

目に思い切り寄ってみるとか。



エントリー6

4月の雨がくれた宝石」 

撮影 山同 紀子

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23143893.jpg

【選評】

感性は人それぞれであろうが、

このバラのつぼみからは、

とても「宝石」の輝きは感じられない。

画面もアンダーで暗いし、

周囲や背景もゴチャゴチャしている。

作品にがんばってもらわないと、

タイトルだけでは救えないこともある。




エントリー7

「小雨ふる公園で、

リトルピープルに出会ったハッピーな一日」 

撮影 崎山 光江

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23150640.jpg

選評】

ペットや愛玩物を旅先などの風景を背景に撮る人は多い。

この作品は、バラのアーチとのコラボか、雨か。

それにしては、どちらも収まりが悪い。

この人形なら、氷川丸とか、バラの群生とか、マリンタワーとか。

もっとインパクトのある背景はあるはず。

人形にだけ気をとられないで、背景にも目配りを。

タイトル、日記かエッセイのタイトルには向いているかも。




エントリー8

「なにがあってもエンジョイライフ!!」 

撮影 永野 幸枝

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23170576.jpg

【選評】

トリックアートの設定を自分なりに切り取っていてよい。

全体を暗めにしたため、モデルの表情が浮きあがった。

表情もポーズもいい。


タイトルの「なにがあっても」はいらない。

グダグダ説明しないで「エンジョイライフ」で充分。




エントリー9

「異人さんに連れられていっちゃった」 

 撮影 堀之内文美


【選評】

視界に入った広い風景を撮っただけでは「作品」にはならない。

この絵の中で、どの部分に着眼したのか、

それが「写真作品」というもの。


タイトル、おなじみのものだが、

この写真からは童謡「赤い靴」は浮かんでこない。




エントリー11

「あまやどり」 

撮影 岩田 博美

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23181822.jpg

【選評】

雨の風景はよくわかるが、絵としてのまとまりがない。

あえて「暗い雨の日」を表現したかったのか、

重い作品になっている。露出補正を考えよう。


「あまやどり」感を出すために、

上の部分を入れ込んでいるが、

歩く人の足まで入れてあげる目配りも必要。


やや右に傾いていないか。

縦位置の写真は傾きやすいので要注意。




エントリー12

「水の宝石と」

撮影 三奈木博文

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23191320.jpg


【選評】

花に思い切り寄って雨のしずくを写し取っている。

が、科学写真ではないのだから、

もう少し風情を出せなかったか。

花の左端は切りたくないし、

バラの群生風景も感じさせたい。

それでもなお、しずくの表現はできるはず。


タイトルの「水と宝石と」も、凝りすぎ。

昔は文芸作品のタイトルに「……と」と気を持たせるものがあった。

ややキザなネーミング。


蛇足ながら、

TBSラジオに「伊集院光とらじおと」という番組が

今年3月まで続いていた。

放送局の番組タイトルには、ヘタなものが少なくない。

NHKは「ラジルラジル」だの「ラジルラボ」だのと

語感の悪いネーミング。

なんでラジオをラジルというのか。




エントリー13

横浜 たそがれ ベルばら!! 」 

撮影 影山なお子


【選評】

偶然だろうが、モデルの衣服と画面の色が

調和していて絵になっている。

モデルのポーズもよく収まっている。

記念写真としてはカメラ目線になるのだろうが、

作品にするには目線をオスカルに向けたほうがよいかも。

タイトルは、酔っぱらいのひとり言か。論評不能。




エントリー15

「タイムスリップ横浜」 

撮影 三奈木麻弓 


【選評】

トリックアートの絵を自分の写真作品としている。

絵作りに成功。モデルの位置、ポーズは見事。

タイトルも端的、撮影地もわかって気が利いている。




エントリー16

「アクロバット少年に、ねこビックリ!」 

撮影 髙橋 寿江


2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_23085368.jpg

【選評】

トリックアートの作例写真にとどまる。

モデルがだれなのかがわかりにくく、

記念写真としても難あり。


タイトルも写真の説明をしているだけで、

もっとも避けたいネーミング法。


写真作品のネーミングは、その写真からのイメージを

短いコトバでパチッと表現する。

この作品なら「最後のバンザイ」とか。

(わかるかな? わかんねぇだろうな)


エントリー17

「ケーキは私のもの」

撮影 奥村 花子

2022年  フォトコンテスト入選者発表。_b0141773_20364908.jpg
【選評】

 写真は、たった1回しかないかもしれない

その場面、その瞬間を自分の視野として切り取るもの。

そういう意味では、運ばれてきたケーキと、

そこにあった置物を組み合わせて楽しい場面をつくった

コーディネート力とユーモア感覚が光る。

置物を撮るときの参考にしていただきたい。

タイトルは、女性に多い「擬人化」、

しかも欲張りキャラにして作品の品格を落としている。

せめて、「小判もケーキも」くらいに。


by rocky-road | 2022-05-07 23:24 | 写真教室  

<< ランチタイムから始まった糸島セ... 自分の高齢期をどうイメージするか。 >>