新春、京都、大阪で「QOL」

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昨年秋ごろから予定していた

年明けの京都、大阪の旅をしてきた。

1人旅のつもりでいたが、

大阪のダイビング仲間のご案内のおかげで、

初めてのところを見物することができたし、

京都、大阪の味覚も大いに楽しませていただいた。

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友人の夫は、終末医療の道を選んでからやがて20年、

たまたま、当日は大学での講演があったとのこと。

終了後、お招きいただいた料理店でお目にかかった。

医師の田村 学先生から、

まだ湯気が出ているほどの講演テキスト(パワーポイントコピー型)を

いただき、拝見しながらの会食となった。

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講演の演題は『APCと在宅看取り』

adenomatouspolyposis col=大腸がん発症にかかわる遺伝子/大橋調べ)

そのテキストの中に、

「QOL」(生の質)と対比して

「QOD」(Quality of Death 死の質)という用語があり、

さらに、「Sanctity of Life」(生の神聖性)という

キーワードに目が止まった。

終末医療では「生きていること自体、それだけでありがたい」

という意味のようである。

わかっていれば、まずはこの講演から

京都、大阪の旅をスタートすべきであった。

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完全ベッド生活を余儀なくされている妻の介護を続ける身にとって、

身近な問題であるが、それはそれとして、

医療が「生や死の質」や「生の神聖性」など、

哲学や信仰の世界に

真正面から向き合っている現状に触れるのは

喜びであった。

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ちなみに、「QOL」(生活の質)というコトバ、

使われ始めてから30年くらいたつのではないかと思うが、

昔、ある講演を聞いていたら、

女性の講師が、しきりに「QOL」を繰り返すので、

質疑応答のとき、

「先生のおっしゃるQOLとはどういう概念ですか」

と質問したら、その講師は絶句し、

「その件は、あとで個別にお話ししましょう」と

即答を避けられた。

けっきょくのところ、しっかりとした定義をもっていなかった。

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いまは、インターネットなどでも、

「(QOLとは)患者様の身体的な苦痛の軽減、精神的、

社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、

満足度という意味が含まれます」

などという説明を見つけることができる。

(「患者様」に限るものではないが)

医療関係者は、

立場上、患者の苦痛の軽減のほうにポイントを置きがちだが、

忘れてならないのは、「生きがい」のほうである。

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症状が治まったり、退院したりすることは、

QOL向上の基礎的プロセスであって、

それが最終目的ではない。

病気や苦痛を抑えながら、

可能な限り、周囲の人が、そのときどき、

その日、翌日、週末の楽しみなどを

見つけてあげることである。

それが、その人にとっての生きがいであろう。

 

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「医師は病気を診て、人を見ない」とは

昔から言われ続けており、

その傾向は、全体として見れば、

いまもそう大きく変わった、とはいえなそうだが、

それでも、現代日本では、

人生100年時代を迎えて、

医師は、患者や高齢者の生き方や、

生きることの意味や目的を示す必要に

迫られているというのが近年の現状であろう。

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欧米では、従来、宗教者が晩年の生き方について

ヒントを与えてきたのではないか。

日本には、その役割を担う職業はないので、

私の知人、安達文子さんは、「尊厳カウンセラー」という

専門職を育てる仕事を長く続けている。

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これらは、わが大橋予暇研究所の仕事とも接点があって、

大いに関心があり、連帯感を感じる。

健康な人に限らず、病床にある人の「QOL」のあり方も、

わが「健康の6大要素」でカバーできると思う。

(栄養、運動、休養、ストレスの緩和、よい人間関係の維持、生きがい)

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ところで、

先述の田村医師の現職への転向には、

わがダイバーの友人、由美子夫人の提案が

大きく関係していると、今回の旅でうかがった。

彼女の父母の晩年を見ていて、

終末医療の必要を強く感じ、

その経験から、

夫に、耳鼻咽喉科から終末医療への転向を提案したという。

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ダイビングのインストラクターでもある

「ユーミン」こと由美子さんは、

ご両親を看取った経験に加えて、

インストラクターのキャリアもあるので、

サポートの必要性を人一倍強く感じるのであろう。

いまも障害のある人のダイビングサポートを

組織的に続けているという。

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話が硬くなったので、旅の話を。

冬の京都も大阪も、何回か経験しているが、

歩き回り型ではなく、

車でポイント、ポイントに向かうという経験は初めてだった。

南禅寺あたりの、いつもの道を

夜、9時過ぎ、人通りのまったくない道に立つというのは、

初めてであった。

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暗さと冷たさ、深さが迫ってきて、

平安か鎌倉か、当時の闇の中にいるように思えた。

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大阪で2泊、

大阪城公園をしっかり歩いた。

そして、きれいになった道頓堀のリバークルーズ、

梅田のスカイビルにある「空中庭園展望台」などを楽しんだ。

ルートの一部をキャプションなしで掲げた。

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今年も、海以外の旅も、たびたびの予感。

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by rocky-road | 2022-01-19 22:46 | 大橋禄郎  

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