あなたはどんな「健康のカタチ」を見ていますか。

(横浜市技能文化会館)
第100回を記念するタイトルは、
「栄養士は、健康の『カタチ』をどう考え、
どう伝えてゆくか。」
座長/大橋禄郎 アドバイザー/影山なお子さん
記念すべき回ということで、
浴衣姿で「健康のカタチ」を表現する人が多かった。

進行プログラムは以下のとおり。
1.父または母の健康を支えている(または 健康を損ねている)
要素をあげるとすれば……。(亡き方の場合は過去形で)
2.いままで出会った「不健康なカタチ」のあの人、その人。
3.この際だから言ってしまおう!
だれがなんと言おうと、「私の健康のカタチ」は
こんな点、こんなところ。
4.健康を「カタチ」で示すための99のアクションプラン。

今回の内容に入る前に、
100回目を終えた「食ジム」の歴史を振り返っておこう。

《食コーチングプログラムス》主宰の「食ジム」は、
2011年10月にスタートした。
「食ジム」とは「食コーチング ディスカッションジム」の略称で、
「ジム」とは「gymnasium」(ジムナジウム)のこと。
もともとは体育館や体育場を指したが、
いまは、転じてボクシングなどの「練習場」を指すようになった。

「食ジム」では、もちろん殴り合いは行なわない。
コトバを投げ合って、
あるテーマについて、トコトン話し合う。
当初、「ディスカッション」というコトバを使ったが、
実は「討論」は行なわず、
つまり意見を戦わせることはせず、
あるテーマ、今回なら「健康のカタチ」を
健康支援者がどのように周囲に示せばよいかを
話し合って、考えを深めてゆく。
ブレーンストーミングに近いかもしれない。

地質調査は、地中にパイプを埋め込んで、
目的の地層の状態を調べるが、
問いかけは、ボーリング調査におけるパイプに当たる。
それによって脳内の記憶を探り出し、引き出す。

「食ジム」では、
各自が、適切な事例や関連話題を瞬時にアウトプットして、
話題の資料とする。

実際には、「ブレスト」のように、
結論に向かう話し合いというよりも、
終点までのプロセスを楽しみ、かつ学ぶのが目的。

テーマに沿った事例の提示、
全員に聞こえるような発声(原則、マイクなし)、
発言に関する関連質問の仕方などが学びポイント。
そして、毎回変わる座長は、
テーマを全員が共有できるように、
話題を参加者間に転がしてゆく。

健康支援者、栄養士は、
「あと押し型リーダー」としての専門職なので、
話力は職業の基本スキルとなる。

医師や看護師はもちろん健康支援者だから、
話力は大事なコミュニケーションスキルなのだが、
医師は例外で、この勉強は皆無に近く、
おまけに「治してやっている意識」が出てきて、
患者(お客)に対して上から目線でしゃべるのが常態化した。

医師を対象とした「食ジム」を開催してあげたいが、
そういうことに関心を示す医師は
あらゆる専門医師の0.003%もいれば、
まだいいほうである。


以前、松下幸之助氏が立ちあげた
「世界を考える京都座学」という勉強会のことを
雑誌かなにかで読んで、大いにヒントになった。

なにしろ、当時(2000年前後)
大活躍中のそうそうたる学者や専門家が、
年に11回(12月は除く)も集まって勉強会を開いていた。


メンバーには、渡部昇一、竹村健一、堺屋太一、山本七平といった、
書物やテレビでおなじみの人たちが名を連ねていた。
その「京都座学」、当時で、すでに300回を数えていた。

日本の各界の第一人者が10数人、
毎月集まって計算上は30年以上、
勉強会を開いているという事実。


かねがね大人は勉強をしないと思っていた私としては、
強い刺激を受けた。

一流を目指し、一流を維持するには、
勉強を続けることは欠かせない。

この話を影山なお子さんに話したら、
間髪を入れずに「うちでもやりたい!」
こうして始まった「食ジム」、
11年を経過して、ようやく100回に達した。
まだまだ「京都座学」の3分の1である。

さて、わが「食ジム」の第100回では、
「栄養士は、健康の『カタチ』をどう考え、
どう伝えてゆくか。」がテーマ。

1960年ころからだろうか、
医療の世界では、
「早期発見、早期治療」がすすめられるようになった。
見かけは健康そうでも、がんや心臓疾患が進行していて、
若死にする人が目立つようになった。
きのうまで元気だった人が、
朝には亡くなってしまう
「ぽっくり病」などという病名まで生まれた。

以来、定期検診や人間ドックへの検査入院がすすめられ、
大きな成果をあげ続けている。
このように、
「見えない病気」を見つける努力はいまも続けられているが、
「見える不健康」にはどう対処したらよいのか。
これにはほとんど目が向けられていない。

そこで食コーチングでは、
「健康のカタチ」を提唱し、
健康支援者、栄養士自身の「健康のカタチ」の補強し、
そして、クライアント、さらには社会に対して
「健康のカタチ」という概念を伝え、
社会の健康度を高めようとしている。

今回は、イントロダクションのコーナーで、
両親や親族の健康のカタチ(ここでは健康度)を
全員に振り返っていただいた。

健康のカタチとしては、
「畑仕事が好き」「人に教えることが好き(お花、お茶、麻雀)」
「人の世話が好き(民生委員など)」
「活動的」「おしゃれ」「旅行好き」
「予定をカレンダーに書き込んでいた」「一家団らんを大切に」
「早寝早起き」などがあげられた。

一方、不健康のカタチとしては、
「持病(腎臓病)があった」「人間関係が悪い」「多量飲酒習慣」
「きちょうめん」(プラスにもマイナスにも)
「忘れっぽい」(プラスにもマイナスにも)など。

このように、まずは事例観察と分析。
今回は、時間の関係で、
2番の「いままで出会った
「不健康なカタチ」のあの人、その人」のところで、
中断し、続きは次回送りとなった。

それでも、「不健康なカタチ」として、
「パン屋さんに見られる、客に対する素っ気ない態度」
「うつむき歩き、前方から人が来ても、
自分からはよけようとしない」
「スマホのながら歩き」
「細い道ですれ違うとき、道を譲っても無表情」などがあげられた。

「健康のカタチ」は、つまるところライフスタイルの問題。
知らず知らずのうちに、栄養士、健康支援者は、
人の生き方、人生哲学の領域に足を踏み入れているのである。
しかも、健康を説法ではなく、カタチで、つまり無言のうちに示せ、
ということになってきている。

これを「荷が重い」と感じるか、
「レパートリーが広がってやりがいがある」と感じるか、
これも「健康のカタチ」以外の何ものでもない。

「健康のカタチ」論は「第101回 食ジム」の前半で
話し合うことになった。
(8月22日、「学校給食から見えてくる若い世代の食と健康。」
座長/深津恵子さん)
さて、健康とは、どんなカタチになるのか。

by rocky-road | 2021-07-27 19:48 | 「食ジム」