健康な「話し合い」のカタチ。
「食ジム」の第95回が終わった。
(2021年2月20日 10~17時
横浜市技能文化会館)
タイトルは以下のとおり。
「特定保健指導から見えてきた
日本人の食生活のカタチ。」
座長/三上聡美さん
アドバイザー/影山なお子さん 大橋
【プロット】
1.私の食体験、あの人の食行動――至福の瞬間、絶望・絶句の瞬間。
2.食生活において「ああ、日本人でよかった!!」
と感じる瞬間は、こんなとき、あんなとき……。
3.「あの人の健康状態(よいにつけ、悪いにつけ)は、
食生活によるところが大きい」と思われる事例。
4.日本人が平均寿命において、
世界の上位を維持しているのには、これだけの理由がある。
5.日本人をもっと健康にするために、
いま、栄養士に何が求められているか。
いろいろの職種の人たちを通して
日本人の食生活を観察できる栄養士さんたちの
観察や体験を聞くことができるのは意義深い。
健康支援を職業にする人に限らず、
どこの職場にも「絶句型」の食行動をする人はいると思うが、
健康支援を本業とする人の場合、
自身は、人と歓談しながら食事をすることが苦手な人が
比率的に多いような気がする。
お昼に、同僚といっしょに食事をしたがらない、
同席していても、ほとんどしゃべらない、
コロナ禍以前から「黙食」を好む人は少なくなかった、
そんなお話を聞くことができた。
ここでは、プログラム「5」の
「日本人をもっと健康にするために、
いま、栄養士に何が求められているか。」について
補足をしておこう。
プログラム「4」とも関係するが、
日本人の平均寿命が高いのは、
「食生活+α」の要素があることを
肝に銘じておく必要がある。
世界の長寿国の食事は、ひとくくりにするほど単純ではない。
プロの研究者でも、一定の地域を調べただけで、
「大豆製品がいい」「豆腐は長寿の源」などと
ほんの一部の食品だけに長寿の理由を求めてしまう。
栄養学や疫学研究では、
生物学や民俗学、民族学系で行なわれている
フィールドワークが大原則になっていない。
食事調査票を渡して、
「これに記入しておいてください」などとやっていたのでは
本当のところがわかるはずもない。
起床時刻、就寝時刻、食事時刻と回数、
食事のときの会話の量や話題、
排便や洗顔、手洗い、運動の頻度や、その時刻、時間、
日々の楽しみ、生きる意味、信仰の有無、
価値観などなと、
少なくとも「健康の6大要素」(栄養、運動、休養、
ストレスコントロール、人間関係、生きがい)について
自分の目で観察しない限り、
本当のことはわからない。
もちろん、政治、経済、文化、教育、人口密度、
健康行政など、地政学的位置も無視はできない。
コロナウイルスの感染状況を見ると、
遺伝的要素も、予想以上に大きいのかもしれない。
そんなところまで手を伸ばしていたら、
100年生きても結論は得られない……。
だからこそ、
いろいろの分野の研究を援用して(「学際的」という)
理論をつくっていく必要がある。
とりあえず、そのような余地を念頭に置くことは、
健康支援の「質」を高めることになるだろう。
地球のすみずみまで見渡せるようになった時代に、
栄養学だけでモノを考えていたら、
見えるものまで見えなくなってしまう。
「食ジム」関連で、蛇足の話をしておこう。
東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の会長、
森喜朗氏が、同委員会の臨時評議員会での発言によって
辞任することになったが、
「臨時評議員会」というのは、
シンポジウムのように公開の会議なのだろうか。
たぶん、そうではないだろう。
ちなみに、「食ジム」は公開可能のディスカッションの場、
いわゆる「会議」とは似てもおらず、別物である。
会議というのは、非公開、内密が大原則である。
だからこそ、自由な発言ができ、
脳内に嵐を起こす「ブレーンストーミング」ができる。
どうしようもないダメ・ダメ発言も、
そのダメ・ダメ度ゆえに、対抗するタフ発言を誘発する。
会議での発言が、
その日のうちに部外に漏れてしまうようになったら、
政治や軍事はもちろん、あらゆる組織の会議など成り立たなくなる。
企業戦略、商品開発、人事、犯罪捜査、各種審査などなど。
今回のトラブルで学ぶべきは、
ジェンダーの問題と同等、またはそれ以上に重要な、
会議のルールをしっかり守ることであろう。
それが組織を守り、国を守り、
結果として自分の命を守ることになる。
会議は、その内密性ゆえに
自由な戦場になりうる。
命をかけるに値する戦場であるからこそ、
そこからは計り知れない成果が得られるのである。
「会議の健康度」を、もっと高めたい。
「日本人は秘密を守れない」という悪評を
いくらかでも払拭するするためにも。
by rocky-road | 2021-02-23 22:09 | 「食ジム」