あなたの「食事力」は?
11月28日、
第82回食ジムが終わった。
テーマは以下のとおり。

食育は定着したか。
今後、栄養士は食育にどう対応すればよいか。
座長/米澤 須美さん
アドバイザー/大橋 禄郎、影山 なお子先生

「これは正解だった」と思えるのは、「これ!」
2.「お里が知れる!」 ――
あの人の、あんな食習慣、あんな食感覚、
あんなマナー、あんな食べ方、事例集。
3.ニッポンの「食育」の現状 ――
「ここはグッド」「ここはノー グッド」と感じるところ。
4.私が子どもにしつけたい(しつけている)、
こんな食習慣、こんな食感覚、
こんなマナー、こんな食べ方。
5.栄養士として、「食育」を、
どのようにレパートリーに加えればよいか。

経過については、
パルマローザのホームページに常設の
「活動結果レポート」に譲って、
ここでは「食育論」に絞って考えることにしよう。

農業の家庭の子も、漁業の子も、林業の子も、
物売り家業の子も、泥棒家業の子も、
親の仕事を手伝うことを通じて、
生きるための知恵や技を身につけた。

しかし、算術や読み書き、
モノの見方や考え方を学ぶ必要が感じられるようになり、
寺子屋のような、私設の塾ができた。
それが学校のルーツだが、
子供を学校に預けると、
親は多くことを学校に任せるようになる。

「先生からも言ってやってくださいよ。
こいつ、朝寝坊ばかりして
起こしても起きないんですよ」
「うちの子、学校に行きだしてから
ちっとも仕事を手伝わなくなったんですよ。
先生からもキツく叱ってください。叩いてもいいですから」
こんなふうにして本末転倒が起こる。

もともとは、お弁当を持ってこられない家庭などのために
生まれたと聞くが、
ここでも本末転倒が起こる。
「好き嫌いが多くて困っています。
先生からもキツく言ってくださいよ」
「うちの子、食べるのが遅いでしょ?
サッサと食べるようにしつけてください」
「あの子、かぼちゃがダメなんです。
ナニか、ほかのものと替えられません?」

こういう歴史を見れば、
「食育」の方向性も予想できた。
食育基本法の成立理由はこうだ。
家庭での食事は情緒や人間性を育むうえで
重要な場面であるも、人間性を身につける場だ、と。

家庭には、おじいちゃんやおばあちゃんが少なくなり、
「わが家のしきたり」を伝える人が激減した。

女性は主婦専業から
周辺にある職場に通うようになる。
こうして、ニッポンの家庭では、
わが家の味や伝統を伝える親が忙しくなった。

幸か不幸か、
お母さんが食事をつくらなくても、
冷蔵庫があり、電子レンジがあり、
コンビニがありで、
「食べたいときが食事時刻」となった。

燃料が不十分のときは、
調理後、温かいときに全員集合が当たり前だった。
が、やがて「チンして食べておいて!」となった。

「食育」のステージは風前の灯。
このピンチを救うために
学校がひと肌脱ぐ、そういう法律ができた。

しかし、学校給食の歴史でもわかるように、
人に任せるようになると、
依存度が高まるのは世の倣いであって、
やっぱりここでも、
「先生、うちの子、お箸の持ち方、ヘンでしょ?
正しい持ち方、仕込んでやってください」
「お月見団子、おいしかったって。
でも、先生、ノドに詰まらせた子がいるそうですね。
うちの子、だいじょうぶかしら?」

学校では、
国語、算数、理科、社会……と
いろいろの科目があり、
中学生にもなると、
専門の先生が配置されるようになる。

食育でも、
*食卓コミュニケーション、
*買い物スキル、
*お食事のお手伝い、
*食器の扱い、
*環境汚染対策、
*生産・流通など、
いろいろの教科が必要になる。

そんなことまで1人、2人の先生に任せられても、
手に負えるはずもない。
そこで学校は、
専門のコーディネーターに助けてもらうことになる。
かくして、
「食育」は、家庭ではなく、
学校でもなく、社会が行なうものとなる。
「家庭は遠くになりにけり」である。

対策は、
各職場で「父親学」「母親学」を学ぶ場をつくること。
高齢者への「食育」よりも先に手をつけるべきであり、
そのほうが食育効果はあがるだろう。
大人が磨くべきは「食事力」である。

食材、食事を選ぶ力、
定刻に食事をとる力(習慣)、
1日に、なにをどれくらい食べるべきかを
把握する力、
人と語り合って食事を楽しむ力(習慣)、
体重を適正に保つ力などなどを総合したものが
「食事力」である。

「食事力」をだれが推進するのか、
栄養士のほかに、だれがいる?
いやいや、そう言っちゃぁオシマイヨ。
「食事力推進士」というような国家資格と、
それを組織とする行政システムが必要だろう。

そのためには、
「食事力」をもった大人を
ゴマンと育てなければならない。
たれが育てるの?
話は遠い未来の、先の長~い話である。

by rocky-road | 2020-12-02 23:51 | 「食ジム」