「おばさん化」は晩秋、老化現象である。
第90回を迎えた「食ジム」では、
こんなテーマで話し合った。
(主催/食コーチングプログラムス
9月27日《日》横浜市技能文化会館。
座長/崎山光江さん
アドバイザー/影山なお子さん、大橋)
【タイトル】
「栄養士が『おばさん化』しないための
センスと行動様式。」
【進行プログラム】
1.「いま考えても、悔しい」――年少であること、
年下であることを理由に、決めつけられたり否定されたりした、
あの人からの一言、態度、仕打ち。
2.健康相談や食事相談において、言い過ぎ、決めつけすぎの事例
――実際にあったこんな事例、あんな事例。(伝聞情報も含めて)
3.年長なのに、こんなに謙虚な人もいる
――祖父・祖母、父・母、知人……
……あの人の、こんなところがスゴイ。
4.なぜ、人は「おばさん化」「おじさん化」するのか。
その原因を徹底分析。
5.「おばさん型」「おじさん型」言動
――(食事相談・健康相談、日常生活)を抑制するには
どんなライフスタイルを身につければよいか。
世界広しといえども、
世界の健康支援者が、こんなテーマで
1日かけて話し合った例は皆無だろう。
そもそも「おばさん化」とはなにか、である。
もちろん定義はした。
すなわち、
「周囲または相手に対して、
自分が年長であることを過度に意識し、
それを優越性と感じて、周囲に対して謙虚さを失ったり、
遠慮のないコトバづかい、決めつけ、断定、
本音の吐露(「嫌い」「おいしくない」「高い」「安くしてよ」
「あなたは若いからそういうの」「私の年になればわかる」)
などの発言が多く、わが物顔でふるまったりする行動傾向。
男性にもあるが、女性に顕著な傾向か。
昔からマンガのテーマにはよくなるモノで、
たとえば、電車の車内で人を押しのけて席をとる、
人があけたドアを堂々と先に通り抜ける、
一山いくらの売り物に、別の山からの1個を加えて
カゴに入れる……。
今回は、健康支援者の「おばさん化」だから、
こういうフライング行動ではなく、
おもに言い方、決めつけ方などの体験披露からスタートした。
以下はその体験例。
*「自分のたてた献立を、
毎回先輩調理師から批判される」
*「野菜の皮をむいていたら、『そんな切り方するの?』」
*着ていた服についての指摘「若いからなんでも似合うのよね」
(こっちは、それなりに考えているのに!)
*先輩と議論していたら「若いからそういうこと言うんだ。
僕の歳になればわかるよ」
*人が食べているお弁当をのぞき込んで
「ごはん、多くない?」
健康支援者や食事相談は、
本来、カウンセリング的でありたいところだが、
「栄養指導」というコトバが一般化しているとおり、
もともと指導して当たり前と考えられている。
そういう世界でキャリアを積むとどうなるか。
「指導」×「おばさん」となるから、
キメつけ、あけすけの指摘が著しくなる。
*「ちっとも体重減りませんね。
お酒、飲みすぎているんじゃないですか」
*「数値、下がりませんね。
間食してるんでしょう?」
*「なんでそこまでやせるの?
骨粗しょう症の予備群になるわよ」
なぜ、栄養士を含む健康支援者は
「おばさん化」「おじさん化」しやすいのか。
参加者からいろいろの分析が出た。
それらを補足してまとめると……。
*医療は命を救うという絶対的な使命があるから、
患者は感謝、感謝の気持ちがいっぱい。
医師は家系的にも社会的にもエリートで、
伝統的に上から目線になる。
看護師や保健師、栄養士は、
上から目線の対応を学習し、
かつ、医師の「虎の威」を借りて
その態度を増長させる。
*その立場から見ると、
患者は、理解していないことが多く、
かつ注意したことを守らない、
そこでついキツイ言い方になる。
*多くの医療関係者は、
数値優先で、
ライフスタイルの維持や改善、
よい状態の維持に関心がうすく、
支持した数値を絶対のものとして迫り、
患者を叱る傾向がある。
*「おばさん」の多くは
子育て経験があり、
わが子に対してきつい表現をする経験をもつ。
「ちゃんとしなさいよ」「言ったことを守りなさいよ」
「早くして」「だから言ったでしょ?」
口になじんだトーンは、
相手が子供でなくても、
似たようシチュエーションのときには口から出る。
相手が自分より年下であることが多くなるにつれて、
「おばさん化」は進行する。
*さらに、男女に関係なく、
情報環境(人脈の多様性、新聞、雑誌の購読、
読書、テレビラジオの視聴、デジタル情報のリテラシーなど)
が狭い人は、自分の見聞だけを論拠にし、
しかも、それらを過信する傾向がある。
「それが常識ですよ」「……そういうものよ」
「私の経験では」「いまの人は……」
「だまされたと思ってやってごらんなさい」
「私を見てごらんなさい。これも玄米のパワーよ」
「私の言うこと、騙されたと思ってやってみなさい」
問いかけが、ないか、少ない、
断定、キメつけ、自説の強調が多い、
謙虚さ、寛容さ不足、などなど。
それは自他の健康のリスクになりうる。
これをセルフコントロールできるのか。
特効薬はないが、
こんな方法でいくらかは抑止できるかもしれない。
*「おばさん化」は「老化現象」であることを理解する。
*仕事以外の人脈を維持または増強する。
(とくに運動系は有効)
*(世の中にはエライ人やエライ考え方があることを
知るために、雑誌や書物で)評論などの文章を
読む習慣を維持する。
*ハガキ、手紙などによる情報発信の習慣を維持する。
*けっきょくは、高い教養を保つということ。
「実るほど頭の下がる稲穂かな」
時はいま、実りの秋である。
by rocky-road | 2020-09-29 21:00 | 「食ジム」