「足袋」に誘われた京の旅。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23181728.jpg
201912月から2020年の3月にかけて、

わがロッコム文章・編集塾では、

エッセイについての講義を続けた。

塾生には、これまでにも、

宿題として、いろいろの文章を書いてもらったが、

さらに深い思考のある文章が書けるようにと、

ステップアップを図った。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23184132.jpg
塾生は理系の人が多いので、

文学や文学作品に関心の強い人はそう多くはない。

そこで、「エッセイ」というコトバのルーツとなった

モンテーニュや、

それに続くジャンジャック・ルソーの文体に接したり、

日本では、のちに「随筆」と呼ばれる

「枕草子」が「エッセイ」より500年前に

書かれていたことなどを学んだりした。

もちろん、「方丈記」の文体も……。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23222863.jpg
「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23231307.jpg
「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23190064.jpg
「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23183069.jpg
「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23220354.jpg
「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23221808.jpg
現代の日本のエッセイの例としては、

作家・堀江敏幸氏の「青蓮院辺りで、足袋を。」

と題する一文を輪読した。

このエッセイは、雑誌『クロワッサン』の

2007125日号に載ったものを

コピーして保存しておいた。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23264016.jpg

エッセイの内容は、

網野 菊という作家(19001978)

書いた短編をベースにしたもの。

作家志望の女性(網野 菊)が、

福島に旅行中に関東大震災が起こる。

そのため東京へは「入京禁止」で戻れなくなる。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_00051741.jpg

やむを得ず、同行の友人Yの実家である京都へ向かう。

せっかく京都に来たのなら、

京都に住む志賀直哉を訪ねて、

自分の書いた小説を読んでもらおうと思う。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23350209.jpg
昔は、著名人を、見ず知らずの人間が

アポなしで訪ねるということはよくあった。

彼女は、あしたに備えて、足袋を洗って、

志賀邸を訪ねる準備をする。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23320630.jpg
翌朝、足袋はまだ生乾き。

仕方なく、袂に入れて、素足のまま家を出る。

そしていよいよ志賀邸に近づいたとき、

ちょうど「青蓮院」(しょうれんいん)あたりで、

うずくまって足袋を履く。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23405896.jpg
堀江氏は、こう書く。

「なんということもないエピソードだが、

この一節は、私の頭のなかに、

まるで映画の一場面のように立ち上がって、

いつまでも残った。」

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23295139.jpg
私は青蓮院を知らなかった。

そこで今度の旅では、

ここを訪ねる、というルートを考えてもらった。

「創る旅派」としては、

ルートをあまりキッチリ決めるのは好きではないが、

今回は、あのエッセイが「オレ流」を阻んだ。

哲学の道歩きも中断、錦市場も、新京極も、

清水(きよみず)もあきらめた。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23425471.jpg
青蓮院は、

訪ねてみれば、知恩院のすぐ隣で、

しばしば前を通っていた。

が、わが眼中にはまったくなかった。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23230003.jpg
今回は、幸運なことに、

僧侶でもある栄養士さんが同行してくれて、

なんと院内で、この寺の由緒について

レクチャーをしてくれるという。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_00040535.jpg

「この寺は、天台宗総本山、

比叡山延暦寺の三門蹟の1つで……」

さらに彼女は、

学生時代を京都で送ったという。

いつもは、京都通ぶっていた私の出番はなく、

それゆえに、新鮮な旅となった。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23270522.jpg

京都で中華料理を食べるとは思っていなかったし

(そこは、彼女が学生時代に通った店だとか)、

仏具店通りとでもいうのか、

本願寺近くの仏具店で、

栄養士さんたちが数珠を物色するのに

つき合うという体験もした。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23471189.jpg

若者も4050歳ともなれば、

法事の機会も増えてくる。

「自分用のお数珠くらいは……」と

言ったことがみなさんに伝わって、

ここも僧侶・栄養士の先導のコースに

入れられたのであった。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23464308.jpg
想像するに、7人の栄養士が、

そろってお数珠を購入する場面を

文学士が見届けるというシーンは、

この店、この町、この都市、

この国の歴史にはなかったはずである。

これもまた「歴史的瞬間」である。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23470051.jpg
「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23520323.jpg
「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23530544.jpg
「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23532439.jpg

今年は、桜の満開が少し遅れたかな、

と思わないでもなかったが、

そのことはどうでもよかった。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23543310.jpg
「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23545702.jpg

「しまった」と思ったのは、

旅行前、僧侶・栄養士が

「私も足袋を持っていきます」

と言っていたので、

それを確かめることを忘れたこと。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23555440.jpg
「青蓮院の辺りで」履いて見せてもらう

つもりはなかったが、

いま考えれば、

そんな写真も撮っておくべきだった。

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23343010.jpg

「足袋」に誘われた京の旅。_b0141773_23570282.jpg


by rocky-road | 2020-04-11 23:58 | パルマローザセミナー  

<< コロナウイルス感染と栄養学の関係性。 新聞をゆっくり読む時間ができた。 >>