行動療法、「これまで」と「これから」

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パルマローザ主催の輪読会で、

今回は足達淑子編

『栄養指導のための 行動療法入門』

(医歯薬出版 臨床栄養別冊 199812月刊)

をテキストに選んだ。

2020224日 横浜市技能文化会館)

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「行動療法」というコトバを知ったのは

1970年代の終わりのころ、

月刊『栄養と料理』の編集にかかわることになってからである。

1980年の新年号から始めた「健康の最前線シリーズ」の2年目、

1981年新年号で「心身症としての肥満」という特集をした。

(編集長になってすぐから、肥満や心身症をしばしば記事にした)

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その中に、

野添新一先生(鹿児島大学医学部第一内科/当時)による

「肥満の行動療法の実際」という記事がある。

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それは、こんな書き出しである。

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 「行動療法とは、『不適応的な習慣を克服するために

 学習の原理、すなわち条件づけの原理と

 その関連諸現象の原理を適用していくことである』

 と定義されている。

 学問的にはパブロフの古典的条件づけと、

 スキナーによって詳細に研究された

 オペラント条件づけを二本の柱としている」

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その後、1987年には、

8回 日本肥満学会の抄録の中に

気になる研究発表を見つけた。

それが、当時は福岡市の保健所に勤務されていた

足達淑子先生である。

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さっそくコンタクトをとって、

「ダイエットをするなら自分の食行動を

記録することから始めよう。」

という原稿を書いていただいた。

(細かいことだが、タイトルには句点を入れてある)

以後、先生にはしばしば誌上にご登場いただくことになる。

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行動療法から、私が強い教示を受けたのは、

1.「行動」を広くとらえる点。

  呼吸をすることも、しないことも行動、

  夢を見ることも、1日寝転んで怠惰に過ごすことも行動。

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  かねがね動物行動学に関心があったので、

「行動」というコトバには期待と親近感があった。

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2.人間を動物の一種ととらえ(そうとは言ってはいないが)、

  刺激を与えることで(動機づけ)いろいろの反応が起こり、

  刺激の与え方で自分および他者の行動を

  望む方向へとあと押しできる点。

  脳の研究では、海に住むアメフラシは

  脳を持ってはいないが、

  いやな刺激(強い放水、電気刺激)を受けると

  その経験を記憶し、

  のちに回避する行動をとる、という研究が有名。 

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3.セルフモニタリングによって

  自分の行動を客観視する冷静さと手法を持っていること。

  注目行動を無心に記録し、

  その記述内容から行動傾向を把握したり、

  強化したりする、その沈着冷静さ(冷徹さ)。

   

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そのころ、ダイビング目的の海や島への旅では、

  自発的に(まだログブック記入の制度がない1960年代)、

  水温、深度、見た魚の種類や数、参加人員、

  経路、宿泊地の住所、食事のメニューなどを記録していた。

  こういう下敷きがあったので、

  手書きによる行動記録(セルフモニタリング)の

  意味がよくわかった。

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足達先生のご指導を受け、ときにお手伝いをして、

その後、行動療法の書物を企画したり

編集にかかわったりして今日に至る。

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そんなこんなの3040年、

そのかいあって……

行動療法は健康支援者の基本スキルになった、

と言いたいところだが、

そうはいかない。

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その理由は、

その考え方にしろスキルにしろ、

一朝一夕には身につかないほど、

人間としての総力が求めれること。

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人を変えるなんて「そうは問屋が卸さない」。

「行動変容だ」「認知だ」「介入だ」と、

百万回唱えても、

人間または動物についての基礎知識がないと

自分および人の行動は変えられない。

いや、「変える」のではなく

「変わる」のを待つ忍耐力と洞察力、

そして、自分の心身のゆとり。

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それほど難儀なスキルを人に教えるとなると、

ますます指導する適任者は少なくなる。

1000人に1人、いや1万人に1人かな?

そういってあきらめてしまえば、

「それを言っちゃぁ、おシマイよ」

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いま、若者に限らず、日本人の国語力が急落している。

自国語の勉強をせずに、

英語で会議なんかやっている場合ではない。

「……ていうか」「なんか……」「いわゆるコロナ」

「このぉ、マスク不足っていうか……」

なんて言っている場合か。

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同様に、動物や人間を知らずに、

「行動療法」なんて言っている場合か。

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「はい、バヤイ(場合)です!!!

みそ汁で顔を洗って、

おとといから出直しましょうよ。

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もう少し、人間学と行動科学関連の書物の輪読を

続ける必要がありそうだ。

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by rocky-road | 2020-03-01 21:20 | 大橋禄郎  

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