栄養士は、どこまでイニシアティブをとれるか。

恒例のパルマローザ・新春セミナーが終わった。
(2020年1月12日(日)かながわ エルプラザ)

「日本人の健康支援を、栄養士が
主導するためのアクションプラン。」

内容は以下の項目。
1.栄養士が日本人の健康支援を主導したい、これだけの理由。
2.健康支援を主導するために基本となる準備性。
3.健康支援を主導するための社会的行動。

「それはなぜか」と言えば、
1つには地政学的条件。
気候が温暖で、干ばつや冷害が少ない。
水害や地震によるダメージは小さくはないが、
長い歴史の中で見れば、その頻度は限定的で
平均寿命を左右するまでには至っていない。

医療水準が世界的にも高く、
経済的には経済大国の地位を保っているし、
政治的にもきわめて安定。

東アジアの米食文化圏にあって、
しかも、一汁三菜とか季節感とか、
「いただきます・ごちそうさま」の習慣とかの、
結果としては心身の健康を支える
多くのシステムを生み出している。
これらは道徳的、教育的なレベルを
反映したものであろう。

俯瞰的に見ればそういう解釈になるが、
人為という点から見れば、
なによりも高い教育効果として
健康意識が高い国民であること、
各人各様に
自分の職場で最善を尽くす人の割合が高いこと、
などにによって、
全国民が直接、間接に
日本人の健康維持・向上に貢献している。

つまり、
日本人の健康は、
「健康支援者」だけに支えられているわけではなく、
一次産業から三次産業まで、すべての職業、
そして、ここに住むすべての個々人によって
支えられているということになる。

職業的に見た場合には、
社会の健康教育の面で、
栄養士は、このところ自分の専門分野を
あとからやってきた一部の医師に
少なからず荒らされている。

「ゴボウ茶を飲むと20歳若返る」とか、
「1日3食をやめなさい」とか、
「白米をやめなさい」とか、
栄養学の基礎ができていない医師に
好き勝手な珍説をバラまかれている。

「荒らされている」と言ったが、
職業的な専門分野を奪われるということより、
フードファディズム(食のまやかし情報)を
日本中にバラまかれている
という点が問題であり、
ドクターごときに、そこまで言わせておいて、
この分野のプロとして責任を感じないのか。

少なくとも食や栄養に関する情報提供は、
栄養士がイニシアティブをとる必要がある、
というのが、今回のセミナーのコンセプトである。

ただし、相手は医師だけではない。
というよりも、
元凶は医師ではなく、マスメディアである。

医師がマユツバ情報を
メディアに売り込んでいるとは思いにくく、
むしろテレビや版元が企画をし、
そのプランを、
引っかかりやすいドクターに持ちかけている、
というのが実態であろう。

栄養士は、書けない、しゃべれない、
一見、論理的に思えるデタラメを
振りまくだけの勇気がない、
などなどの理由があるにしても、
対岸の火事のように感じていては
職業的責任は果たせない。

フードファディズムのバラまきを
放っておくことは、
箱の中に隠れた容疑者を、
miss.miss国外逃亡させてしまったことによる
ダメージなど問題にならないくらい
国民的には損失が大きい。


その対策をいくつかあげた。
なによりも本人が見た目も健康であること
思想、人生観、表情、姿勢、
歩き方、身だしなみなどの点で。

さらには、
いつでもスピーチや講演に応じられるように
トレーニングをしておくこと、
そのためのテキスト作りの準備性を高めておくこと
(パワーポイントにおんぶに抱っこの講演はしない)。

あるいは、テレビ出演のときの心得、
同意できないコメントをするように
求められたときの対処法など、
いくつかのポイントを示した。

要は、メディアを使って社会的発言ができるように
自分を思いきり鍛えておくこと。
医師にしても、
養成中に社会的発言法を学んでいたわけではない。
社会に出てから見つけるスキルである。
依頼があってからの対処ではなく、
日頃から準備性を高めておくこと、
そのポイントを示した。

さて、受講してくださった人たちが
ピカッと光る食情報を
メディアで披露する日はいつか、
楽しみは10年後か、50年後か、
いやいや100年後か。




翌13日は、有志の方々と
「ルノワールと パリに恋した
12人の画家たち」を横浜美術館で鑑賞した。

ルノワールの作品以外の
当時(1800年代中期以降)の画家たちの作品を
少しずつ見られたことを喜ぶか、
ルノワールの作品が少なかったと悲しむか、
画家たちの作風(うまいヘタ?)の多様性を感じるか、
各作品に付してある解説文の
なんとも味けのない文章を分析するか、
作品よりも解説文にクギづけになる
入場者の、絵ではなく文章の鑑賞力に
感心するか、
美術館にもいろいろの楽しみ方がある。

その前後の写真も掲げておこう。






by rocky-road | 2020-01-14 23:31 | パルマローザセミナー