よい話し合いにはシナリオがある。
「健康支援者の『話力』をどう磨くか。」であった。
(2019年7月7日、横浜市技能文化会館)
「話力」というコトバは、
日常的に使われるわけではないし、
辞書にも載っていないだろうから、
座長(高藤法子さん)には、
「定義をしておいたほうがよいのでは?」と
すすめた。
座長さんは、こう定義した。
「話力とは、発話の目的を左右する能力、場の状況、
雰囲気にそった話をする技術。
話題を提供する能力。その話し方」
念のために、
私もこういう定義を用意しておいた。
「発話行動において、その目的(*)、対象者、
時と場合に応じて、より高い効果を得るための言語表現能力。
『会話力』はその一部。
(*)発話行動の目的とは、対話、説得、依頼、求愛、
座談、スピーチ、会議、討論、司会、講話、講演、
などがその一例。」
『広辞苑』にも載ってはいるが、一般的とは言えない用語。
言語学やコミュニケーション論などの専門書などでは
普通に使われる。要するにしゃべること。
さて、「話力」というコトバは、
身長やエネルギーと同じで、尺度を示すコトバ。
身長170㎝、カレーライス750Kcalなどと
数値が入って初めて判断基準となる。
「話力」も同様で、
高いか低いを示すことで評価基準となる。
「セールストークは見事だが(話力はあるが)、
スピーチの話力は低い」
などということになる。
話力の高低は、
シチュエーションによって左右される。
とりとめのないおしゃべりの話力、体力ともにあるが、
旅行や観劇後の感想(報告の話力)を伝えるのは下手、
議論には強いが、世間話は苦手、
などということになる。
どんなシチュエーションにおいても
高い話力を発揮するという人というのは
ありえない。
声が小さい、ユーモア不足、
問いかけベタ、すぐにカッとなる、
表情がペタッとしていて盛りあがらない、など、
だれにも弱点はある。
健康支援者、栄養士の場合、
健康相談や食事相談の場での話力が高い人は多くはなく、
(ダメ出し型とか栄養学の押しつけとか)
その底上げが求められる。
養成校でも、
まだ健康相談や食事相談の進め方を
講義にとり入れているところはないか、
きわめて少ないらしいので、
現役の人たちが、
自発的にスキルアップを図りたい、
ということから今回の食ジムのテーマとなった。
話力強化のために
特効薬のように効くトレーニング法はないが、
その基本は、
手書きで文章を書く機会をふやすこと。
それはスポーツ選手のランニング、
またはストレッチに当たる。
声が小さい人、表情が硬い人、
口癖がある人については、
詩の音読が有効だろう。
そして、当たり前だが、
人と話し合う機会をふやすこと。
などと簡単に言うが、
話し合いにもいろいろの流儀があることを
忘れている人が多い。
表情で表現する、
1人でしゃべり過ぎない、
人の発言を正確に聞く、
相づちを打つ、
問いかけ、確認を忘れないなどは、
どこかできっと学んでいるはずである。
話し合いには、
その現場ごとに生まれる(生み出す)シナリオがある。
その演出力こそが話力名人としての基礎体力。
来たる7月21日(日)に、
コミュニケーション研究会≪ひろしま≫の
定例のセミナーで、
「複数の人との話し合いに強くなるには……。」
(ミーティングから会議まで)
を講義することになっていて、
いま、テキスト作りの真っ最中。
3人以上の人と、
スムースに語り合う習慣は、
単に「話力」の強化にとどまるものではなく、
つまるところ、論理性や思考力を強化することになる、
--そういう話になりそうである。
by rocky-road | 2019-07-15 23:25 | 「食ジム」