キミの「プロ度」はバッグの中に。

「健康支援者が知っておきたい
異性のライフスタイル。」
というテーマで話し合った。
(座長 髙橋寿江さん 横浜技能文化会館)
(プログラムはhttps://brushup.exblog.jp/参照)

なぜこのテーマなのか。
それは、対象者(おもにクライアント)の
ライフスタイルを想定したうえで、
健康情報を話題にしてゆくことが、
栄養士をはじめ健康支援をする人の
プロとしての基本だから。

手相や人相や、
姓名判断などの占い系の一流ともなると
対象者が前に座った瞬間、
相手がどんな問題でここに来たかを当てるという。
「人間関係ですね」
「将来のことで悩んでいますね」
「体調がすぐれませんね」
何万人に1人くらいは、
霊感が働く占い師がいるだろうが、
多くは、いわばジャブ、
話の糸口を見つけるきっかけづくりである。

多くの人は、人間関係や将来のことで
多かれ少なかれ問題をかかえているから
誘導されて「そうです」「それも1つです」
などと答える。
そこで相手の信頼感をぐっと引き寄せる。
もし、まったく違うことできた人の場合は、
「それは切り抜けたのですね」
「5年以内に、その問題が出てきますが、
まずは、いまの悩みから解決していきましょう」と
さらりとフォローし、切り替える。
このあたりが、キャリアのある人のワザなのだろう。

ところが栄養士の場合は、
自分の情報を伝えようという意欲満々なので、
病状を聞くやいなや、
「食事指導」を始めたがる。
相手が男性か女性か、
70歳か30歳か、
勤め人か自営業か、
戸建て住宅住まいか、マンション暮らしか、
日々の楽しみや生きがいはなにか、
などなどを確かめることなく
食事相談ができると思っている栄養士が
どれくらいの割合でいるのだろうか。

食事はライフスタイルと密接に結びついている。
上記の事項はごく一部で、
勤め人か自営業か(もちろん業種も確認)
家族の人数などによっても、
食生活もライフスタイルも違ってくる。
今回の食ジムでは、
「男性」のライフスタイルに絞って
それを洞察する糸口をどう見つけるか、がテーマだった。

「ライフスタイル」(life-style)については、
このページでもしばしば話題にしているが、
「生活習慣」と訳すのは誤りである。
訳すなら「人生観」や「生き方の姿勢」のほうが近い。
さらには「人生観を反映した生活習慣や生き方」
とでも意訳するほうがいい。
食ジム参加者から、
「私を困らせた男性の発言」として、
「糖尿病は病気ではない」
という意見を持つクライアントがいた、
という事例報告があった。

それも、その人物にとっての「認識」および「価値観」である。
人は自分の信念を持って生きている。
男性の場合、その思い込みが強い傾向があり、
ときには誤りであっても、
あるいは自分の信条と異なる主張であっても、
その場の勢いで、自説を組み立てる。
「好きなものが食べられない人生なんて生きていても意味がない」
「好きな酒が飲めるなら、それで寿命が短くなってもかまわない」
などは、男性の、よくある発言。
自虐の心理、あきらめの境地は、
男性というより、「オトコ」の本能、
または日本人男性の文化であろう。
「戦(いくさ)はもはやこれまで。だれか介錯せい!」と
自刃した武将が何百人いたことだろう。

ときに食事相談の際、
自虐や拗ね(すね)を使う。
無意識的に駄々をこねて相手の関心を引きつける。
かつては「与太を飛ばす」などといった。
このとき、相手の女性はといえば、
「ダメですよ、そんなこと言っちゃぁ」
「奥様やお子さんのことも考えなくちゃぁ」
と、これまた百年一日のごとくに、定番の返しをする。

栄養士や健康支援者は水商売ではないのだから、
男のそういう手には乗らず、
「何歳くらいで人生を終わらせるご予定ですか」
「生命保険のご準備は? がん保険とか、
病名を特定していらっしゃる?」
「いまは、ベッドの上で10年なんていうこともあるので、
寝たきりの楽しみも見つけておくとか」
カレーライスが嫌いな人に、
話し合いによって好きにさせることなど、まずできない。
相手の感受性や思想を短期間で変えさせる、
そういうムダな労力や時間は、
なるべく使わないようにしたい。

相手との相性や話し合いの回数にもよるが、
要は、相手の話に風に吹かれる柳のごとく、
相手が望む話題に乗っかっていく。
そうしておいて、
あるタイミングで「介入」や支援のチャンスを見つける、
まさにスポーツ並みの切り替えや瞬発力が必要。
それがプロというもの。
「お相撲が好き」「将棋に夢中」なんていうクライアントは、
「カモがネギをしょって」来たようなもの。
「お相撲の楽しさって、
2つあげるとしたら、どうお答えになりますか」

健康支援者が、
娯楽のあれこれについて基礎知識持つなんて、ムリ。
そんな「にわか対処」ではなく、
話題をつなげつつ、健康フィールドに落とし込むスキル、
これを何百回というトレーニングで身につけていくほうが早い。
「急がば回れ」である。



A5版サイズくらいのファイルを用意して、
そこに以下のものなどを収納しておくとよい。
*世界の寿命ランキング表
*日本人の死因・年次推移
*日本人の年代別肥満割合
*都道府県別、死亡率ランキング
*国民健康栄養調査のポイント
*世界の食品消費量一覧
*最近の新聞・雑誌の記事
少しはビジュアルもあったほうがいい。
*わが県の野菜生産量(ベスト3の写真)
*お酒のエネルギー一覧(写真)

これらは話題の宝庫だから、
プライベートの外出のときも、
パスボートみたいに肌身離さず携行する。
ジョギングのときも、買い物のときも、
地震で家から飛び出すときも。

これらを入れる斜め掛けのバッグは必需品。
バッグを見れば、
一流か二流かがわかる、
そういう時代がくるかもしれない。

少なくともとも私は、
女性を見るとき、
ルックスではなく、
バッグのサイズを見ることにしている(ホントかね?)
健康支援のプロフェッショナルとは、
そういうものではございません?

by rocky-road | 2018-05-01 21:52