栄養バランス、とれていますか。
5回シリーズとして、
「『栄養バランス』をどう学び、どう伝えればよいか。
食の地図・四群点数法を中心に」
というテーマのお話をさせていただくことになった。
1回目は「人はなぜ、食の基準を求めるのか」とした。
(2017年10月28日 終日。会場:横浜開港記念会館)
日本の戦後の健康教育、健康行政は、
世界水準からいって高いほうだろう。
なによりも、世界有数の長寿国、
という結果を出しているから強い。
しかし、香港やシンガポールも
結果を出しているから、
平均寿命の要因は、
そう簡単には確定できない。
香港やシンガポールにも、
「健康日本21」のような
政府主導の健康指針があるのだろうか。
日本は、医療や食に関して、
なんといっても「医食同源」の国から
多くの影響を受けてきた。
が、戦後の70年余りに限れば、
「食」に関しては、
欧米の影響を受けながら、
完全には「欧米化」はせずに、
一汁三菜の「日本型食事」を確立してきた。
その背景には、
「栄養所要量」や「食事摂取基準」のような
政府主導の食事の指針が用意され、
それを学校や事業所、病院の給食に
適用してきた、という日本人のマジメさがある。
問題は民間で、
あれやこれやの食事指針が
各省庁や個人によって継続的に示されている割には、
さらには、中学、高校でも教えているはずなのに、
なかなか身につかない。
指針の中には、
「1日30食品」や「マゴワヤサシイ」
そして近年では「食事バランスガイド」のように
調理や食生活の現状には合わない、
いわば机上のアイディアだけで提案されているものもあり、
実効性も実行状況も低い。
その理由は、
こうした指針のプランナーとして
男性の参画率、発言率が高く、
または、調理経験の少ない女性や、
現場感覚、食感覚、
食の心理学などが希薄な人が集まって
プランニングしていることなどにありそうだ。
そういうタイプの人たちは、
日本人の食生活の実態を見ていないか、
あるいは
既存の食事指針を評価する理解力が乏しいのか、
視野や洞察力に問題がありそう。
たとえば、
すでに50年近く前に提案されている
「四群点数法」のような指針を知っていながら、
その利点が理解できず、
はるかにラフな指針を別に提案したりする。
「食事バランスガイド」についていえば、
食事の栄養的バランスを
メニュー単位、皿単位で把握しようなどという発想は、
なんとも荒っぽい考え方である。
それはいわば、
英語を単語ではなく、フレーズで覚えよう、
といっているのに等しい。
「I have a pen」
「I have a pineapple」という表現の意味を
単語ではなく、フレーズで覚えてしまえ、
というわけである。
しかし、この方法だと、
「I have Pen-Pineapple-Apple-Pen」
というフレーズに出合ったときには
理解ができなくなる。
「Pen-Pineapple-Apple-Pen」
という単語(?)の意味が理解できなければ、
フレーズの意味は読み取れない。
(ちなみに、「Pen-Pineapple-Apple-Pen」とは、
ピコ太郎氏によると、
ペンが刺さったパイナップルと
ペンが刺さったりんごとを
合体させたもの)
コトバに限らず、
国民性とか県民性とか、
社風とか校風とかと、
地域や集団の特徴を
われわれはじょうずに把握するものだが、
その前段階として、
日本人の言動、東京人の言動、
〇○会社社員の言動の特徴を把握し、
それを集団としてカテゴライズする、
それが人間の認知プロセスである。
食品でいえば、
肉の栄養的な特徴がわかっていれば、
カレーライスが出てきても、
ギョーザが出てきても、
中身にちょっと目をやることで、
おおよその分量や特徴はわかる。
これならば、
調理担当者にも、
外食利用者にも、
海外生活者にも活用は可能。
どんな国へ行っても、
4つの栄養的カテゴリーに収められない食材はない。
昆虫もヘビも鶏のトサカも豚の足も、
第2群(良質たんぱく質群)と考えていいだろう。
「四群点数法」は、
「魚1 豆1 野菜3」の段階(1928年)から
90年近くかけて積みあげられてきた理論である。
スタートの時点から、
質と量のバランスが考えられている。
そんなに便利な食事の指針が
ほぼ固まって40年がたっても、
現状程度にしか普及しないのはなぜか。
この点は、何度でも考えてみる必要がある。
いちばんの理由は、
人間は、食事の質と量をコントロールすることを
苦手とする、という点。
人類はずいぶんと文明・文化を発達させたが、
動物の部分を少なからず引きずっていて、
まだ栄養学の発展には、ついていけない。
紅茶キノコがいい、納豆がいい、
玉ねぎ水がいい、糖質制限が必要、
といった各論に反応するのが精いっぱいで、
「1日になにを、どれだけ食べるか」
という基本のところを学ぼうとしない。
めんどくさいから、
「栄養のバランスに気をつけよう」と、
プロもアマチュアも
お念仏のように唱えていいことにしている。
コミュニケーションの問題も大きい。
せっかく、よい指針が開発されているのに、
それをエンドユーザーに届ける人がいない。
栄養士が最適任者なのだが、
指針を理解し、実践する人があまりにも少ない。
養成校でのカリキュラムや指導法に問題があるのだろう。
そんなこんなで、
文学部国語国文学科卒業の人間が、
食事指針の1つ、「四群点数法」について、
5回シリーズで講じることになった。
25年間、女子栄養大学出版部に在籍して、
香川 綾先生が、
この食事法を完成させる現場に居合わせたので、
そのラッキーチャンスをムダにしないためにも、
そして、人類の財産ともいうべき、
この食事法の概要や、その意味するところ、
そして、それを人に伝えるときのポイントなどについて、
5回に分けて講じてみたい。
第2回
2017年11月25日(土)
時間 10時30分~午後5時30分
場所 女子栄養大坂戸キャンパス香友会館
最寄り駅 東武東上線 若葉駅
第3回
2017年12月10日(日)
時間 10時30分~午後5時30分
場所 横浜体育館併設 平沼レストハウス3号室
最寄り駅 JR関内駅(南口改札)
第4回
2018年1月21日(日)
時間 10時30分~午後5時30分
場所 かながわ労働プラザ
最寄り駅 JR石川町(北口改札)
第5回
2018年2月12日(月/祝日)
時間 10時30分~午後5時30分
場所 横浜市内(近日発表)
by rocky-road | 2017-11-01 21:19