読書は表現力を強化する。
この8月20日に行なった輪読会に
出席でなかった人の何人かに、
主催者が当日のテキストを送ったらしい。
受け取った人の1人から、
テキストの中にある書物の新聞広告について、
問い合わせがあった。
「あの本もおすすめのものですか」と。
このテキストは、輪読会の2日前に
読書をすすめる広告が出たので、
参考資料としてご紹介した。
本のタイトルが、カタくなくておもしろい。
広告には、目次の一部がピックアップされている。
*「自分は何も知らない」と自覚する
*読みながら考えないと身につかない
*いくつになっても偶然の出会いは楽しい
*小説で「考える力」を養う
などなど、読書の利点を的確に指摘している。
私自身は読んでいないので評価はできないが、
その段階で「読んだほうがいいか」と聞かれれば、
読書のすすめの本に、
読まないほうがいいものがあるとは思えないので、
「いいんじゃない」と答える。
皮肉なことに、この広告には
こんなフレーズもあった。
「人がすすめる本はあてにならない」
私の本心は、「それを言っちゃぁおしまいよ」である。
輪読会でも、その点を指摘した。
昔、著名な精神科医が
「修学旅行のような団体旅行は意味がない」
あるウーマンリブのオピニオンリーダーが、
「女性も、結婚するだけが人生の選択ではない」
ある大学教員が
「栄養の大学だからといって、栄養士の資格を取ることはない」
など公言した。
それを真に受けた人の中には、
「やり直し」のために多くの時間と労力と、
おカネを使った人が少なからずいたはずである。
人のモチベーションを下げるような言動は、
少なくとも相手が特定できない場では言うべきではない。
くだんの精神科医は、
「旅行は1人で黙々とするから身につくことがある」
というのが持論らしいのだが、
旅行入門コースとしての修学旅行まで否定したら、
「経験から学ぶ」という機会は激減する。
義務教育だってナンセンスということになる。
「勉強は、自分の必要に応じてすべきで
漫然と、いろいろのことを詰め込むのは
「害あって益なし」という議論になってしまう。
そういうことを言わないで、
いつジャストタイミングがやってくるかが
わからない人生において、
まずはスタートラインについておきたい。
それが基礎教育、基礎体験というものである。
学ぶ機会にはもっと貪欲でありたい。
以前、電車の中で
人が読んでいる本の一部をちらっと盗み見をし、
なんとか表紙を見て、書名を知ろうと苦労したことがある。
ようやく読み取って、メモをし、
駅を出て書店に直行した。
その本を買っておいてよかったと思う。
すすめられてもいない本にも
「アテ」になる良書は少なくない。
「人がすすめる本はあてにならない」と言ってしまったら、
自分たちの広告を自己否定したことにならないか。
「3八つ」(さんやつ=新聞の8つの広告サイズ×3段抜き)
という超高価な広告を出しておきながら、
「人のすすめる本はあてにならない」とは!!!!
ところで、
このブログで何冊かの本を紹介したら、
そのほとんどを数日のうちに読んで、
感想を伝えてくれる人が何人かいた。
その文章がなかなか読みごたえがある。
かねがね、いただくハガキや手紙、Eメールの内容が
多分に儀礼的で、中身がないことが多く、
こなんにも話題がないのに文章を書くのは辛かろう、
と感じているが、
本を読んだ人の文章は、
シャッと背筋が伸びていて、読んでいて楽しい。
その一部をご紹介して、
どんなきっかけで本を読んだとしても、
マイナスになることはめったにない、
ということを実証しておこう。
本、または情報は、
やはり心を養う知的栄養素である。
人間は、栄養素だけで生きているのではないことを
忘れてはいけない。
◆H.Nさんの感想
「海からの贈物」を読み終えて、
ご連絡せずにはいられなくなりました。
50年という月日をどう考えるのか、
にもよりますが、
この本が、約50年前に発行されたと
いうことに驚いています。
「私たちは飢えを感じているが、
何がそれを満たすかは、
今日の私たちにも解らない」
このように感じている人間は、
増えているように思いますし、
AI社会になれば、
さらに増えていくように感じます。
技術は進歩しても、
人間は進歩していないのだろうか。
技術ばかりを進歩させたから、
満たされない人間が増えているのか。
司馬遼太郎氏の「人間について」を
読み始めましたが、
医者にも患者にも哲学が
必要であるとありました。
読み進めていくのが、
楽しみで仕方ありません。
技術も医学も進歩していきますが、
その進歩に、哲学がなければ、
人間が置いてきぼりの世の中に
なってしまう、すでに、
そうなっているように思います。
「海からの贈物」の中に、
アメリカでは、
婦人運動の功績のおかげで、
昔より自由になり、
いろいろなことをする機会に
恵まれたが、
婦人運動に参加した人たちは、
いかに生きるべきかということに
ついては教えなかった。
ただ、先駆者の運動は
そうなることが多く、
後から来るものの課題となる、
とありました。
後から来た私にできることは何か、
と、進歩の裏側でできることは何か、
と考えます。
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◆T.Hさんの感想
『世界一豊かなスイスとそっくりなニッポン』、
『僕はいかにして指揮者になったのか』を、
読みました。
今は、『人間について』を読んでいます。
こんな短期間に、3冊もの本を読んだのは、
はじめてです。
○『世界一豊かなスイスとそっくりなニッポン 』
一言で言うと、スイスについて、何も知らなかった。
ということです。
スイスの美観が国際的であること。
貧困の子どもの現状。
ましてや、日本と似ているところがあるなんて、
思いもよりませんでした。
これまでの知識は、スイスが、美しい国であるが、
永世中立国と言っても、日本とは、違う。
ということくらいでしょうか。
恥ずかしいです。
○『僕はいかにして指揮者になったのか』
この本は、びっくりするくらいの早さで、
読みました。数時間だったでしょうか。
文章が読みやすいのもそうでしょうが、
引き込まれました。
人のつながりだったり、情熱だったり、
いい意味でのいい加減さだったり、に。
私が購入した本は、1995年に出版したものに、
2001年に加筆されて出版されたものです。
まえがきには、15年前を振り返り、
15年間があっという間だったこと。
「自信満々」を演じ続けてきたこと。
そうしたことで、
「自信満々」が、板についてきたような気がします。
と書かれています。
先生が、いつだったか、
松井やイチローは、大リーガーになる前から、
大リーガーの自分をイメージしていた、という
お話を伺ったことを思い出しました。
○『人間について』
昨日から読んでいます。
1.今西氏と対談は、1971年ということですが、
高度成長期の時期に、今どうなっているか?を
予想した内容。それが、当たっていることに、
大変、驚きました。
2.犬飼氏との対談では、犬飼氏が、日本人のことを、
「あっけらかん」と表現され、本質をついていて、
おもしろいと思いました。
それで、いいのか、どうかは、別ですが。
3.高坂氏との対談では、歴史で習った人物のこと
語られています。歴史では、その人物像まで、
習った記憶はなく、新鮮でした。
最後の司馬氏のコトバが、印象的。
「政治に、教科書はない。人生に教科書はない」
わかりやすいことこそ、大切ということでしょうか。
4、山村氏との対談、『人間について』は、途中です。
山村氏は、内科学、免疫学者ということですが、
対談の内容は、人体や病気の話より、宗教の話の
方が多いように思います。
まだ、途中ですが、
宗教について、いろいろ考えさせられます。
知らないことばかり。
スイスの国のこと以上に、知らないことばかり。
恥ずかしいというレベルじゃないです!
でも、冷静に思うと、今まで、そうだから、
無宗教のようであったから、よかったと。
何かの宗教にはまってたら、どうなっていたかと。
以上、読書経過報告でした。
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◆H.Oさんの感想
ブログでお勧めくださいました本
「世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン」を、
きょう読み終えたことがきっかけです。
(読書ノートを作ったという話)
スイスの歴史も、国民性も、
囲まれた小国を守れているのは
永世中立国だからではないことも、
何も知らなかったことを知りました。
この本でたくさんの刺激を受けたなかで、
1・2位を争う情報は、
こういった文章 を
女性が書いていることだと思います。
「○○だ」「○△□であろう」など、
文体としてはさっぱりしていて、
事実が伝わってきやすい。
場合によっては男性的になりそうでも、
どこかに女性らしさを感じる。
しかし、けっして媚びていない。
スイスに対してもニッポンに対しても、
著者の立ち位置はぶれることがない。
こういったことが、
読みやすかった理由のひとつかもしれません。
そして、ハッとしたのは、最初ほうで、
「私たちの手にあるカードは、
私たちが思っているより多いのではないか」
と、日本を表現してい ることです。
カードに気がつくこと、
そしてそれをどう使うのか。
同時に思ったのは、
謙遜をするかのように、
持っている能力を隠して、
何もできませんと言っているうちに、
ほんとうに能力がなくなってしまうことが
あるのではないかということ。
これは日本の国策についてのことですが、
国を構成する国民全体の意識として、
こういう傾向があるように感じました。
1冊読み終えた爽快感。
気持ちよく走っていたら、
気がつけばゴールをしていたかのようです。
読書のきっかけをくださいまして、
ありがとうございます 。
by rocky-road | 2017-08-27 21:03