栄養士は「外食」でも健康を支援する。
ときどき、初めて行った土地で
同行者の好みに合った飲食店を見つけることがある。
国内に限らず、
ハワイでもグアムでも、
パリでもボストンでも、アムステルダムでも。
「どうして、ここがおいしい店ってわかったのですか」
と、あとから聞かれる。
「直観」としか言いようがないが、
それでは能がないので、
それなりに自己分析を試みる。
*店頭のデザイン、ややクラシカルな風情。
*屋号が浮わついていない。
……なんてやってみるが、
どれも感覚的で、
人に秘伝を授けるほどの内容とはならない。
で、つまるところ、
店選びのポイントは、
とにかく数をこなすしかない、そこに行きつく。
外から見て、
料理の適否などわかるはずがないのである。
3段階評価でいけば、
「いい」「ふつう」「ダメ」であり、
「いい」の打率が3割以下であったとしても、
「いい」評価は記憶に残り、
「ダメ記憶」は消去されるので、
相対的に「店選び名人」になれるのである。
つまり、答えは脳科学にあり、ということだ。
とはいえ、「ヘタな鉄砲も数撃ちゃ当たる」でもない。
人の意見に振り回されない信念や、
コツコツ仕込んできた「食のセンス」が、
こんなところでもベースとなる。
ところで、去る8月13日(日)、
第58回 「食ジム」では、
「食べ歩きの名ガイドとしての『幹事力』を鍛える」
というテーマで話し合った。
もう、この「食ジム」は
栄養士、健康支援者の思考のレパートリーから見たとき、
世界の同業者からは何十年分も先へ来てしまっている、
と見てよさそうである。
「自然とどうかかわるか」
「生きがいとはなにか」
「おもてなしの心をどう表わすか」
こんなテーマで1日に語り合う健康支援者は、
世界のどこにあろうか。
しかし、「食ジム」が進んだ、
と考えるのは正確ではなく、
世の中が、そして健康科学が
どんどん先へ行っているのである。
つまり、栄養、運動、休養による健康促進から、
それに加えて、「ストレスコントロール」
「よい人間関係の維持・発展」「そして生きがい」
最近の長寿や認知症医学の知見も、
ますますライフスタイルとの関係を
重視する方向へと移ってきているではないか。
「食ジム」は、
そういう動きに歩調を合わせているに過ぎないのである。
いまどき「外食は控えましょう」
などと言っている栄養士は、
完全にガラパゴスにしか生存しない固有種である。
「食ジム」では、
自分だけが外食を楽しむというところから、
さらに、その機会を人にも与えよう、
という話し合いをした。
遠からずエビデンスが示されると思うが、
生涯にわたって外食の回数が多い人ほど、
健康寿命が高いということになるはずである。
とくに高齢期以降の外食利用率は、
健康寿命にプラスに働くことだろう。
(ホームレスやそれに近い生活をする人は別として)
栄養士としては、
自分を除く最低5人以上の人が参加する
飲食を伴う集まりの幹事を務めることができるプロとして、
そろそろ一歩を踏み出してもいいころである。
「それって、フードコーディネーターの仕事じゃない?」
という人があるかもしれないが、
さて、そのフードコーディネーターは
いま、社会でどんな仕事をしているのだろうか。
その肩書で仕事をしている人の数は、
栄養士に比べてはるかに少ないのではないか。
それはそれとして、
栄養士が外食の楽しいシーンをプロデュースすることは、
健康支援の仕事の一環なのである。
つまり本業の延長線上にあるわけだ。
現在のところ、
その役割に気づいている栄養士、健康支援者は、
全国の同業者に対して
0.00数%というレベルだと思うが、
健康をサポートすることは、
楽しさをサポートすることにも通じるから、
食シーンの幹事力は、
今後の「専門性」の一部になるし、
直接・間接的にビジネスチャンスにもなる。
これまで、栄養士さんには各地でお世話になったが、
「ご招待」の宴席を、地図を見ながら
一緒になって探し回ったことが何回かある。
インターネットで調べたから、
すっとは行きつけないというのである。
途中で、「直感」が働いてしまって、
「ここのほうがいいのでは?」と思うところがあっても、
そこを素通りする辛さは、「名ガイド」(?)としては、
なんとも辛かった。
そこで、
「食シーンのための幹事マニュアル」の
お試しポイントをあげておこう。
1.使う店は、一度は飲食をし、評価が定まったところを。
2.初めて幹事になったときは、
候補の店を訪ねてチェックしておく。
(1軒を決めるのに5軒も試食した、
というようなことがないように、普段から利用する)
3.合格したものは手帳に記録する。
住所録などに「飲食店」というコーナーを設けて、
記録する。
(途中で閉店や移転があるからときどき更新)
4.最初はメディア情報であっても、
インターネット情報であっても構わない。
チェックさえしてあれば。
ただし、そのネタばらしは自分からはしない。
5.人を連れていくとき、「おいしいから」と
あまり前宣伝をしない。
「お口に合うかどうか自信ないけど、
私はおいしいと思ったので」くらいか。
「あの人が選んだのだから安心」と
いわれるようになるまで、修業は続く。
6.こういうキャリアを積むためには、
お酒は少々、飲めるほうがいい、
食材や料理の好き嫌いは大人としてダメ。
7.いくつもの店のストックを持っていると、
相手により、時間帯により、目的によって、
最適な店を選ぶことができる。
8.どんなに行きつけになっても、
店の人と親しくなり過ぎない。
売り手と買い手の立場は堅持する。
9.以上のことを「幹事になったときのために」
という構え方で処するのではなく、
自分の食生活にバラエティをもたせる、
人生の楽しみ方の1つ、
というくらいの考え方で、軽~く流していく。
さて、いつ、あなたのおすすめのお店で
みんなで歓談できるのかな?
by rocky-road | 2017-08-17 23:30