2017年 パルマローザ写真教室 作品講評。
2017年4月29日(祭日) パルマローザ 写真教室
当日撮影写真のコンテスト 作品講評と受賞作品
ことしも晴天に恵まれた撮影日となった。
横浜中区元町の高台にあるアメリカ山公園からスタートし、
インターナショナルスクールの≪フードフェア≫、
そして大桟橋と、3か所を撮影ポイントとした。
被写体はいくらでもあるが、むしろモチーフが多すぎて、
何を、どう撮ればよいのか、迷う人も多かったように思う。
写真教室10回目ともなると、
初参加の人の割合が減るため、
基礎的なレクチャーを省いてしまう。
しかし、応募作品を見て、「これではいかん」と、
大いに反省させられた。
初参加の人のある・なしにかかわらず、
つねに初心者中心に進めてゆく必要がある、
全スケジュールとまではいかなくても、
1つの被写体を全員に撮ってもらうという、
文章のトレーニングと同様、
「書写」のような手順は毎回、
やっておく必要があると思った。
というわけで、
ことしも「金賞」はなしとした。
これまでのコンテストのレベルを基準とした。
このコンテストに限らず、
ネーミングには少なからずの注文があるので、努めて触れた。
世界のフォトコンで、
ここまでタイトルに注文をつけるところは、
たぶん、ないはずである。
*銀賞、銅賞、佳作の入選者には賞品を呈します。
当日講師、審査係 大橋 禄郎
銀賞
タイトル
「不思議の国が見えるかな? 」
撮影 米澤 須美さん(東京都 管理栄養士)
【評】
壁の向こう側に何があるのか、
大人でものぞきたくなる意味ありげな門。
それをのぞき込む少女の形と位置がいい。
白い服装には季節感も出ている。
壁と周囲の風景の取り込み方、少女の配置など、
構図意識の高い作品。
タイトルも少女の夢を代弁しているようで納得できる。
銅賞
タイトル
「ハートを掲げて!」
撮影 さいとうかずさ君 (東京都 中学生)
【評】
出航直前の豪華客船を見送るセレモニーのスナップ。
白い環境の中でハートの赤い旗が引き立っている。
動きの速い旗振りのパフォーマンスをジャストタイミングでとらえた。
タイトルの「ハートを掲げて!」は、
見たまますぎてでもったいない。
この写真を見る人の共感を得るには、
出航船を見送るセレモニーであることを伝えるタイトルがほしい。
たとえば、「楽しい船旅を」または「ボン・ボワイヤージュ」
佳作
タイトル
うれし恥ずかし
撮影 砂野 知香さん (岡山県 管理栄養士)
【評】
フェイスペインティングの様子。
両者に思い切りよって、描く人の真剣さ、
描かれる人の気恥ずかしさがよく描写されている。
自由にカメラポジションを選べない事情はあるだろうが、
どんな絵が描かれているかを説明したい。
現場を見ていない人には、何をしている場面かが、
すぐにはわからない可能性があるので、
タイトルでそれを示しておく必要があるだろう。
佳作
タイトル
ローズタワー
撮影 甲斐 和恵さん (神奈川県 管理栄養士)
【評】
バラの花に思い切り寄りつつも、
遠景のマリンタワーを入れ込み、撮影地をも表現している。
バラの露出は見事。やや花の配置が乱れ気味で、
花の構図にもうひと工夫を。
遠景のマリンタワーは、「ローズタワー」というからには、
もう少しはっきりと出してもいいように思う。
被写界深度を考えた撮影技法があるはず。
佳作
タイトル
「十歳のきらめき」
撮影 塚本 剛志さん( 長崎県 工務店経営)
【評】
反射の強い海面をバックにしながらも、
少女の表情、ペイントされた頬の模様までも手堅くとらえている。
カメラを高く構えながらも、
背景の沿岸風景を入れて臨場感をうまく出しているのもよい。
モデルの柔らかい表情は、まさに「十歳のきらめき」。
縦に長細くしたのはトリミングなのか。
その効果は出ている。
佳作
タイトル
「White flower 」
撮影 塚本 初音(はつね)ちゃん(長崎県 小学生)
【評】
白いバラの踊るような配置が生きている。
花を撮ったというよりも、花のダンスを撮った、
と理解するのが妥当だろう。
花はつねに「静物」として撮る必要はない、
ということを教えてくれる作品。
タイトルの「white flower」はいけない。
そのまんま過ぎる。
そもそも英語のタイトルにする必要もない。
せめて「フラワー ダンス」くらいにしては?
その他の作品
タイトル
「あれ?私が撮られてる??」
撮影 さいとうはる子さん (東京都 管理栄養士)
【評】
手前に2人の一部分、鏡に反射する人たち、
花壇、木々……要素が多すぎて、
写真のテーマがわからない。
タイトルの「あれ?私が撮られてる??」も、
私がどれなのかがわからず、一人合点。
写真も表現であり、コミュニケーションなのだから、
相手に自分の感興を伝えなければならない。
テーマ意識を持って光景を切り取ること。
タイトル
「プリンセスダイアモンド号 出航!」
撮影 影山なお子 (管理栄養士 パルマローザ主催)
【評】
クルージング中、
横浜に停泊した大型客船が、いま出航するところ。
乗客の一部が最上部甲板に出て、
見送る人たちや大桟橋の様子を見降ろしている。
雲や人の配置がおもしろいが、行列する人たちが、
船上の人なのか見送る人なのかは、これを見て判断しにくい。
これこそ縦位置に構えて、船体の一部でも写し込めば、
もう少し雰囲気が出たことだろう。
タイトルは作品をよく補っている。
タイトル
「拝啓 夕陽とみなとみらい」
撮影 さいとうあいかちゃん(東京都 小学生)
【評】
夕景の撮り方を心得ている作品。
たそがれ色の出し方や構図に不備はない。
太陽の位置もおもしろい。まさに「よこはま たそがれ」。
これにアクセントを加えるには、
できればヨット、カモメ、それがムリなら人影などを写し込む。
写真はシャッターチャンスも評価の対象となる。
タイトルの「拝啓」はいらないのでは?
タイトル
「キャンバスに向かう」
撮影 塚本ゆみ子さん (長崎県 管理栄養士)
【評】
花壇のある公園の風景を描いている人を背後から撮影。
よく見る光景だけに、インパクトは弱い。
こんなときは、反対側から、花の数輪をメインにして、
遠景に絵を描く人という構図にすると、いくらか変化が出る。
「キャンバスに向かう」というタイトルも、いかにも穏やか。
撮影にもネーミングにも、もう少し気合を入れたい。
タイトル
「横浜イケブリッジ」
撮影 みなきまゆみさん (東京都 管理栄養士)
【評】
ポジショニング、カメラアングル、
シャッターチャンス、構図は見事。
なのに、作品としての魅力に欠けるのは、
この状況がわかりにくいためだろう。
噴水池の縁に手をかけて寄りかかっているポーズであることは、
現場にいた人にしかわからない。
1枚写真の辛いところは、鑑賞者に納得し、
共感してもらってナンボであるという点。
「横浜イケブリッチ」も、ひねってはいるが、
意味が伝わらない。
タイトル
「馬車の通る道」
撮影 三奈木博文さん (東京都 会社経営)
【評】
逆光で撮ったにしても、いかにも暗い。
まだ日のある時間帯の写真を、
ここまでアンダー露出で撮ることはないだろう。
瞬時のことで露出補正ができなかったとすれば、
パソコン上で明るくすることはできるはず。
大きなコンテストでも、
パソコンによるトリミングや露出補正は許されている。
構図はいいのだから、プラス補正をして保存しておこう。
タイトル
「 人気の被写体ナンバーワン。」
撮影 奥村 花子さん(東京都 Hanaヨガ&食スタジオ主宰 管理栄養士)
【評】
八重桜の木の下から、公園の風景を撮った、
構図に工夫を感じる作品。
が、露出は遠景のほうに合っていて、桜の花は暗い。
上半分に覆いかぶさった花が重く、絵の美しさを阻害している。
背景の人の動きもわかりにくい。
一般論として、撮影会のとき、
モデル側からカメラマンを撮るのはご法度。
みんなのカメラに邪魔者が写ってしまうから。
撮影会では怒鳴られるケース。
タイトル
「蛇の目傘の二人 」
撮影 岩崎 智子さん (広島県 管理栄養士)
【評】
2体のこけしをアップで撮った作品。
ワイド側で寄って撮ったため、
レンズの歪みが出て、2体の距離があいてしまった。
見方によっては「私、いや」と避けているようでもある。
ここは少し離れて、ズームで寄ると自然に撮れる。
献立などを撮る人が習得しておきたい基本的な撮影技法。
タイトル「蛇の目の二人」は、
作品としてのパンチの弱さを反映して、いかにも平凡。
タイトル
「YOKOHAMAネイビーブルー」
撮影 植村 寿香さん (千葉県 管理栄養士)
【評】
2人の楽隊員を真横から撮った作品。
一部ながら穏やかな表情が感じられる。
「楽隊」と言ったが、この写真だけを見た人には、
この服装の意味はわからないだろう。
「ネイビーブルー」としたからには、
帽子のデザインを表現したかったのかもしれないが、
そうだとしたら色彩不足、説明不足、そしてインパクト不足。
やはりこの女性のチャーミングな表情を正面側からしっかり狙いたい。
タイトル
「花の隠れ家」
撮影 佐藤由起子さん (東京都 管理栄養士)
【評】
公園の一角にある休憩スペース。
周囲は花々に囲まれている。
文句なくさわやかな環境だが、
この写真からはそれが感じられない。
むしろ雑然としていて目を引きつけるポイントがない。
ある風景に向けて無造作にシャッターを切っても、
テーマは浮かびあがらない。
ひょっとして、「隠れ家」とは、
この雑然とした世界こそ、逃亡者にとっての格好の場所、
という意味なのかもしれない。
刑事が踏み込む直前に撮った証拠写真の1点というのなら納得。
タイトル
「二輪ざし」
撮影 佐藤 裕さん (東京都 食品会社)
【評】
夕日をバックにした記念写真、
だれもが一度は撮りたいと思う情景である。
最近は、そういうニーズに応えて、
「夕日モード」を組み込んであるコンパクトカメラが多い。
その仕組みは、露出は背後の夕日に合わせ、
人物にはストロボ光を当てるというもの。
この写真のように、顔が丸つぶれでは記念写真にもならない。
「二輪」の花は、もっと輝いていたはず。
大橋作品――――――――――――――――――――――――
飛び石連休
アメリカ山公園の地元ミツバチ
マリンタワーの初夏
屋根より高~い ♬
いまも馬車道
豪華客船出航
ビーチサイドレストラン
by rocky-road | 2017-05-09 21:29 | 写真教室