ネットワークをどう温めるか。
サークルにしろ学会にしろ、NPOにしろ、
ホームページを見ると、
記事が更新されていないものが少なくない。
「箱もの」と同じで、
作るときはがんばるのだが、
それを維持するのはむずかしく、
空洞化してくる。
イベントなどの活動もそれに比例する。
そうなる理由の上位は、
役員を順番制にするからである。
創設期の役員は、
ゼロから出発しただけに、
意欲もエネルギーも十二分にある。
しかし、3年、4年とたつと、
役員の交代を考えるようになる。
このあたりから、
創設メンバーのコンセプトがあいまいになり、
パワーも下がってくる。
情熱も経験もトレーニングもない
押しつけられ役員としては、
組織を活性化するどころか
持続することさえおぼつかない。
ビジネスの場合には、
それを保持しないことには
自分たちの生活が成り立たないから、
創設者が退いたとしても、
手を抜くことはできず、残った者ががんばって、
組織をなんとか維持することにる。
ほんとうは、学会だって、サークルだって
「情報」という、
金銭には代えられない貴重な「価値」が
得られる場だから、
人々の関心をもっと集めてよいはずだが、
そうはならず、すぐに「開店休業」状態になる。
その理由は、
提供する情報には鮮度と、
香辛料の数倍という刺激が必要だからである。
なにしろ、フツ―の人は、
情報の値踏みが不得手だ。
情報が、心理的エネルギー源であり、
生存に不可欠なものであることを
ホモサピエンスとして数十万年たっていながら、
人類の98%は気がついていない。
同時にまた、
「情報ステーション」(情報を提供する場)
というものも、
商品と同じようにパッケージが大事。
商品のクオリティが第一条件だが、
その価値を高めるのは、パッケージ。
情報ステーションのパッケージに当たるものは
会場となる建物のルックスではなく、
主催者の求心力。
つまり情熱であり、人間性であり、
コミュニケーション力であり、企画力であり、
ファッションセンスであり、
コーディネート力であり、持続力でありと、
あまりにも多くのパッケージが必要となる。
いま、パッケージとはいったが、
実は、それら自体が情報でもある。
情報ステーションをの活性し続けるには、
数年で交代する役員方式ではなく、
少なくとも5年、
欲をいえば10年以上を任期とするか、
1人のリーダーが
命ある限り、ずっとリーダーを続けるかである。
私の経験でいえば、
私が立ち上げたサークルは、
20年間運営を続け、
そこで後輩にバトンタッチした。
バトンタッチの技術というよりも、
あとを引き継いだ人たちががんばったために、
33年間、いまも活動を続けている。
結果論でいえば、創設者時代を経験し、
それを引き継ぐ準備性があったからこそ、
持続できた、ということもできる。
数日前に、今年のイベントの案内が届いた。
「第34回 水中映像祭 水中のスライド&ビデオショー」
4月15日(土)と。34年間、継続している。
一方、石川県能登では、
2014年3月に開講した
「ロッコム文章・編集塾 能登教室」が
年4回のペースで続き、
この3月で12回目になる。
このケースでは、
能登の経験のあるリーダーが、
優れた企画力と推進力で立ち上げ、
いまに至っている。
すでに別のネットワークの運営経験もあって
そのコーディネート力は一級品。
自己流のワンマン運営ではなく、
メンバーを引き立てるし、
各地に出かけて行って情報を仕込んでいる。
そのフットワークとパワーが
持続性のあるネットワークを支えている。
広島では、
能登のネットワークを参考にして、
有志で「コミュニケーション研究会 ひろしま」を
2014年12月に発足させ、
こちらも3年目、
第3クールに入っている。
ここでも文章、編集を学ぶことを中心に、
栄養士のコミュニケーション力や
食コーチングなどを学び続けている。
日本の、または各地の地域のネットワークでは
会員不足やイベントへの参加者数が減り続けていて、
それが大きな問題点になっていると聞く。
その理由は、以上に述べたとおり。
ということは、
現状では改善は望みにくい。
これを一部の役員のせいにするのは当たらない。
企画が平凡で、
役員の求心力不足が一因であることは確かだが、
ほかに替わる人がいないのだから仕方がない。
大きな労働組合では、
報酬を払って「専従」の役員を置いている。
それでも組合員の参加意識はあがらないというから、
救いようがない。
それはつまり、
日本人というものが、
とことん自発的な組織プレーが苦手であり、
したがって、システムづくりに進歩がない、
ということである。
なにしろ、
衣服を選ぶのに「一生着られる」という、
ケチと更新嫌いが合わさった価値観を持つ国民である。
「72年もの」のビンテージ憲法を
床の間に飾ったまま
ハタキさえかけないくらいのことは
当然といえば当然である。
ちなみに、スイスでは、
1892年に制定された憲法が、
2016年までの124年間に
「国民イニシアティブ」という制度によって
318件について改正が発議され、
203件について国民投票が行なわれ、
22件が改正されたという。
(『世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン』
川口マーン恵美著による。 講談社)
文化というものは、
人を真似てすぐ身につくものではない。
が、近くの県でがんばっている人がおり、
活性化しているネットワークがあることを
知っていながらジッとしているとしたら、
それは怠慢か、人生の放棄というもの。
健康支援者とは、
究極的には、食や健康をベースにして
人のモチベーションを高める仕事。
そういう職業の人が、
自分のモチベーションさえあげられないとなると、
果たして健康支援者という職業を
この先、続けることができるのか。
by rocky-road | 2017-02-12 23:35