「四群点数法」人口はどれくらい?
去る1月28日、
元の勤務先である女子栄養大学で、
「食と健康情報の鮮度を高めるための
7つのポイント」と題して
4時間弱の講義をさせていただいた。
経過は、
影山なお子さんのブログにくわしい。
http://palmarosa.exblog.jp/
この講義の7つのポイントの中には、
「栄養バランス」の基準の1つとしての
「四群点数法」について私見を述べた。
この大学は「四群点数法」の発祥地であり、
いま、その講義を担当する先生もおられるので、
いわば「釈迦に説法」にはなるが、
むしろ、だからこそ、
通り一遍ではない普及と
そのための熱意の増強を願いたかった。
世の中には、いろいろの計器が普及している。
体重計は、いまやヘルスメーター、
体組成計などと呼称を変え、
体脂肪率からBMI、骨格筋率、基礎代謝などが
測れるようになった。歩数計もしかり。
ところが、1日に、なにを、どれだけ食べるか、
という指針は、世界はもちろん、
日本国内にも普及していない。
ヘルスメーターで「結果」を測るのに、
その「原因」となる食品のほうは測るどころか、
指針さえ持たない人が多い。
当日のアンケートの中には、
「四群点数法」が普及しない理由を
説明してくれている記述がいくつかあった。
1つには、「女子栄養大学のもの」
というイメージが強いこと、
そして、教育現場では
「三色食品群」や「6つの基礎食品」が主流であること、
などをあげてくれていた。
「三色」や「6つの基礎食品」のように、
量の単位が示されていないものを
食生活でどう活用するのか、
これを普及している人は、
まちがいなく、それを実行していない人であろう。
魚や肉、卵が必要とあっても、
どれくらいとればよいのかがわからなければ、
実行できるわけがない。
少し話題を変えてみよう。
カメラに「オートフォーカス」機能がついてから久しい。
被写体にレンズを向ければ、
自動的にピントが合うシステムである。
しかし、この機能も万能ではない。
走っている人や、飛んでいる鳥、
泳いでいる魚は、
その場にとどまるのは一瞬だから、
オートフォーカス機能を使っても、
数千分の1秒の瞬間にピントを合わせることはできない。
こんなとき、置きピンというテクニックを使う。
ランナーが通るであろう地点に
あらかじめピントを合わせておいて、
ランナーがそこを通過する瞬間、
厳密にいえば、
その「瞬間」の数百分の1秒前にシャッターを切る。
しかし、鳥や魚の場合は、
「通るであろう地点」は予測できないから、
たとえば1メートル目前に来たときにシャッターを切る、
と決めておく。
この場合、約1メートルという目測を瞬時に行ない、
そこに仮のピントを合わせておいて(半押し)、
そのまま被写体に向けてシャッターを切る。
こういうトレーニングは、
水中カメラで何万回とくり返した。
当時、水中カメラには
オートフォーカス機能がついていなかったから、
水中で40㎝、60㎝を目測する必要があった。
目測40㎝をからだに覚え込ませるには、
被写体ごとに目測するのではなく、
40㎝先のものだけを撮ることに徹する。
カメラは、いつもピント40㎝に固定しておく。
これを座標軸にしておくと、
それより近いか遠いかが、すぐにわかる。
「四群点数法」とは、
食生活における座標軸である。
スタンダードといってもよい。
これを元にしていると、
卵を2個食べた日は、その日に限って、
それ以上は食べないようにする、という方針が立つ。
計器類がこれだけ発達、普及した時代に、
日々の食生活をコントロールする
基準のスタンダートが普及しないというのは、
人間の悲しい性(さが)というしかない。
食を情緒的な対象としておきたいという
深層心理によるところがあり、
一方に、「三色だ」「6つの基礎食品だ」という
セクショナリズムがある。
以前、『話を聞かない男、地図が読めない女』
という本がヒットしたことがあるが、
食に関しては、『地図を持ちたがらないヒト』
と言い切ってもよいのかもしれない。
前述のセミナーでは、
そうではあっても、
それを普及させ得なかった関係者にも責任がある、と述べた。
私もその1人から逃れようとは思わない。
女子栄養大学の非常勤講師をしていたころ、
学生に、「四群点数法」を解説するパンフレットを、
成人男性向き、小学生向きに作りなさい、
という宿題を出したことがある。
彼女たちは、もう30歳代、
「四群点数法」を実践している人の割合は、
どれくらいのものだろう。
その予測は、悲観的である。
しかし、現実には、
実践している人が数万、数十万、数百万(?)は
存在しているはず。
ボブ・デュランのように、
「その答えは、風に吹かれて、風に吹かれていんだよ」
などと、風任せにしてはいけない。
計画的な旅をするのであれば、
地図を持って旅立つほうが、
目的に対する達成率は高いはず。
地図は、
計画性、論理、知性などを強化するもの。
だとすれば、
「四群点数法」の普及度の停滞は、
論理や知性のバックアップ不足によるところが
あるのかもしれない。
by rocky-road | 2017-02-04 23:37