栄養士、健康支援者の社会的使命とは。
恒例の、パルマローザ「新春セミナー」が終わった。
(2017年1月8日(日) 神奈川県横浜市立技能文化会館)
今年のテーマは
『栄養士・健康支援者の社会的使命
いま求められるバージョンアップ』
--健康の6大要素を中心に--
どんな国家資格も、
設定したときから年月を重ねるうちに、
資格が証明するその技能に過不足が出てくるものである。
つまり、社会がどんどん変化するので、
資格を得るために求められた技能では
追いつかないところが出てくる。
もちろん、資格審査をする側も、
それに応じた履修内容に更新するが、
大きな組織ゆえに小回りはきかず、
対応するのに早くて5年、
一般には10年か、それ以上はかかる。
もちろん、時代は止まっていてはくれないから、
追いつきかかったときには、
さらに先へと逃げている。
もう1つの大きな問題は、
時代を読み、人間の行動傾向を読むリテラシーは、
国家試験の内容よりもはるかに高いものだから、
一部の役人や学者のレベルでは、
フレッシュなカリキュラムを「創造」することはできない、
ということ。
仮にできたとしても、
その内容を伝える教員の養成にまでは手が及ばない。
したがって、世界中の資格というものは、
時代に追いつくことなく、
追っかけ追っかけの宿命を担っている。
それでも、ないよりは、はるかにマシで、
ないことのリスクを大きく軽減していることは確か。
そうした不都合を緩和しているのが、
次々に生まれる新しい資格だろう。
フードコーディネーター、フードスペシャリスト、
野菜ソムリエなどなどは、
新しいものを追いかけすぎているように見えるが、
大型車に対する小型車の役割を担って、
小回りして時代を追いかけていることになる。
これが栄養士、管理栄養士の置かれている
社会背景だと思うが、
スキルアップ、バージョンアップのもう1つの対策として、
栄養士個人がセミナーを企画して、
さらにスピーディに時代を追いかける、
という方法もある。
その1つが、
毎年、1月と6月に定期的に開いている
栄養士による非営利ネットワーク
≪パルマローザ≫による
ブラッシュアップセミナーである。
毎年これを担当させていただいて、
かなり時代を急追してきた、という
実感と自負がある。
今回は、栄養士の、現時点での社会的使命とは何か、
そして、栄養面から人々の健康を支える、
という役割が、かなりマンネリ化し、
現代人のニーズに応えられていない点を
いくつか指摘した。
「使命」とは、いかにも四角張ったコトバだが、
早い話が社会のニーズであり、
栄養士側から見れば、
必要とされる職業としての魅力を
持ち続けるためのチャームアップ策であり、
ビジネスチャンスを得る手順である。
健康を支える3大要素として、
「栄養」「運動」「休養」が
長いあいだ唱えられてきたが、
振り返ってみれば、
「栄養」というから、栄養素の話に偏り過ぎていたし、
「運動」についても、
「スポーツ栄養士」という資格をつくったりしてきたが、
「栄養と運動は車の両輪」などという割には、
運動の意義についての説明力は充分とはいえないし、
スポーツと運動との違いや、
それぞれの食事面でのあり方などについて、
社会をリードしてきたとも思えない。
ましてや「休養」となると、
栄養士に限らず、いろいろの分野のリーダーたちが、
休養のとり方について、
その思想や方法について充分に提示してこなかった。
手前みそながら、
私は『予暇で自分を組みかえる』という本で
「あらかじめのヒマづくり」について
具体的に示した。(1995年)
その影響は軽微だったとても、
日本は「予暇」(積極的休養、参加型)時代へと向かい、
その人口は多少は増えたといえるが、
まだまだ「だれかに遊んでもらう余暇」が
中心であることに大きな変化はない。
以上の3大要素、栄養、運動、休養は、
人生50年時代に生まれた指針である。
人生100年時代には、
これに「ストレスコントロール」「よい人間関係」
「生きがい」を加え、6大要素としてはどうか、
というのが、この10年来の大橋の提案である。
新春セミナーでは、
これを栄養士、健康支援者が
実行することをすすめるのではなく、
人々の健康を支えるには、
栄養素の知識を伝えるだけではなく、
少なくとも6つの要素を頭に入れて
アプローチすることの必要性について述べた。
つまり、健康は食事だけで支えるものではなく、
人生の「質」そのものを高めること、
総合的なアプローチのほうが、
支援にバラエティが生まれるし、
飽きがこないので効果は大きい。
人はそれぞれのライフスタイルを持っている。
それを見極める下図として
「健康の6大要素」を使うと、
対象者のライフスタイルの特徴が見えやすくなる。
栄養士が、
「四群点数法」や「食品交換表」を頭に置いていると
クライアントの食事の特徴が見えてくるのと同じである。
セミナー受講者は、
受講によって時代に追いつける、
とまではいえないが、
ことしのアクションポイントがどのあたりにあるのかを
意識することはできるように思う。
by rocky-road | 2017-01-10 22:56