魅力的なスピーチと、魅力的な食事。
オリンピックの女子レスリングの金メダル優勝者が、
判定直後、喜んで近寄るコーチを
2回、一本背負いで投げ倒す、
というパフォーマンスがあった。
しっかり準備をしたうえでの喜び表現だった。
そのユーモア感覚に感心した。
しゃべりを得意としないスポーツ選手は、
コトバ足らずのコメントをするくらいなら、
こういうパフォーマンスのほうがすがすがしい。
これと反対に、
女子マラソンで、
10位にも入れなかった日本の選手が、
まるで一位でゴールしているような、
いけシャーシャーとした
フィニッシュポーズをしたのにはあきれた。
おまけに、インタビュアーに
「オリンピックには出るもんだねぇ、楽しいよ」だと。
書き留めなかったが、ガラの悪い仲間コトバで
あっけらかんとしたコメントをしていた。
入賞するにしろ予選落ちするにしろ、
コメントを求められたときの対策くらい立てておくのが
世界クラスの選手と、
その養成関係者の責務だろう。
わが家の近くには「トレセン通り」(トレーニングセンター)や
「アスリート通り」がある。
ロッコム文章・編集塾も近いことだから、
「コメント トレセン通り」を
引き受けてもよいと思っている。
プロのトーク力もたいしたことはなく、
あの超人的短距離ランナー、ボルトに、
「プレッシャーをどう克服しましたか」と
インタビューをするNHKの女子アナがいた。
当然、彼の答えは「いや、プレッシャーは感じなかった」
ハナからプレッシャーがあると
決めつけのある問いかけは、
プロ、アマにかかわらず厳に慎みたい。
ダントツ世界1のトップランナーに
「プレッシャーをどう克服した?」とは、
失礼だし、相手の偉大さをわかっていない、
なんたるおバカだろう。
さて、8月13日の「講話力セミナー」では、
受講者から有効な質問や問いかけがあった。
その1つが、「魅力的スピーチ、魅力的な講話とはどういうものか」
というものであった。
だれもが、そういうものがあれば知りたいと思う。
が、「魅力的な話し方」というものはあるにしても、
「魅力的なスピーチや講話の内容」は一期一会のものだから
「定番」を決めることは、むしろ避けたい。
スピーチや講話は、
その都度、目的もテーマも違う。
聞き手の属性も違うし、人数も時間帯も違う。
食事になぞって考えればよくわかる。
日本人の食事には季節感が求められるし、
朝は朝らしく、昼は昼らしく、
夕は夕らしくありたいと思う。
そのうえ、外食してきた家族の外食メニューとも、
バッティングしないように気をつけなければならない。
だから食事のことを「瞬間芸術」などともいう。
「芸術」とまではいわないが、
スピーチも講話も、クリエイティブな行動である。
充分な準備と、その場、その場での対応、
まさしく「空気を読む」能力。
ボルトに「プレッシャーは?」と
愚問を発するようなのは、
空気が読めないタイプだから、
「魅力的なスピーチも講話」もできない。
毎度のことだが、
アナウンサーは「読む人」であって「語る人」ではない。
それを誤解すると、相手にプレッシャーをかけることになる。
「語れるアナウンサー」は、100人に1人、
500人に1人というくらいに
見積もっておいてあげたほうが親切。
そのことは、アナウンサー養成機関や
アナウンス部の上層部こそ、
わきまえておいてほしい。
スタートした講話シリーズでは、
幅の広い「専門性」を持つ、
「魅力的なスピーチや講話」をこなせる
健康支援者を目指してサポートをしたい。
by rocky-road | 2016-08-20 22:33