切手文化は輝き続ける。

切手については、
郵政省時代には、いろいろともの申してきた。
デザインが悪い、絵が下手、
お子さま向きの絵が多い、
「なになに記念日」の切手ではなく、
花とか風景とか、
常時使える切手も出してほしい、とか。
こういう利用者からの回答は、
判で押したように「今後の参考にしていただきます」だった。


しかし、郵便会社になって以来、
なかなかいい切手が多くなった。
「和の食文化」などは、郵便史に残るヒットではないかと思う。
しかも、「第1集 一汁三菜」と銘打っているから、
第2集も考えているのだろう。
こういう企画は、思いつきや一朝一夕にはできない。
そうとうのプランナーがいると見た。

さらに、「これでも文句があるか」といわんばかりに、
「GREETING SUMMER」というのを出しおった。
世界の切手で、プルメリアやハイビスカスの花を
デザインした切手はきっとあるだろうが、
波紋が揺れる砂地、雲、
清涼飲料水の入ったコップをデザインした切手は
たぶんないはず。



かつて、沖縄海洋博のとき、
世界初の水中写真の切手が出た。
撮影者は、故・舘石 昭氏。
この切手はご本人からいただいたうえに、
その原画写真を額装していただいたことがある。
大型写真と切手とを玄関に飾っておいたが、
写真は劣化して、いまはない。



かねがね欧米の切手文化のレベルの高さに感服し、
「それに比べてわが国は……」と嘆いてきたが、
ここへきて、一気に間を詰めてきた感じ。
ひょっとしたら、郵便の利用者が減っていることと
関係があるかもしれない。
「だれにも向くような」路線から、
真に手紙、ハガキ文化を愛好する人向けに、
まじめに考えるようになったのかもしれない。
いままで、文句ばかりをいってきたが、
「GREETING SUMMER」の企画については、
利用者の選ぶ切手コンテストには推薦したい。
そういうコンテストがあれば、の話。

その一方で、
フリーマーケットには、
昔の名作切手が額面どおりか、
ほんのわずかのプレミアムがついた程度の値段で
売りに出されている。
事情を聞いてみると、
昔は日本橋三越デパートあたりでも、
「切手市」なるものが催され、プレミアムがついて
販売されていたという。
そういえば、見かけた記憶がある。
いまは、切手に骨董的価値が失われ、
往年のコレクターたちは、
フリーマーケットあたりで、それを処分しつつある。
切手や記念コインを買い集めて、
いまに高く売れる、などと言っていた時代を
「セコイ時代のセコイ趣味だった」
といえる自分を、少しは大人になったと思う。

フリーマーケットで見つけた、
雨傘を差す、浮世絵の美人画も、
梅雨時にこそ使おうと、せっせと使っているうちに、
あっという間に残りが数枚になった。
惜しい気もするが、
切手もコミュニケーションメディアだから、
自分の切手ファイルの中にあるよりも、
ずっと生きがいを見つけたことになる。

by rocky-road | 2016-06-29 21:15