「あと一歩デス スタイル」への道。

b0141773_23183698.jpg

『アドバンス スタイル』という、
アメリカ映画を観てきた。
日本での封切りは5月だったというから、
いまさらながらの話題ではある。
b0141773_2318499.jpg

運命は、ちょっとしたきっかけで
思わぬ方向に展開する、などということは、
40、50を過ぎた大人が口にする話ではないが、
この映画を観ることになったのは、
ちょっとしたきっかけである。
b0141773_23185957.jpg

文章・編集塾の生徒さんが、
2冊の本を送ってくれた。
その1冊が『Advanced Style』
《ニューヨークで見つけた上級者おしゃれスナップ》
(アリ・セス・コーエン著 岡野ひろか訳
 大和書房 2013年3月初版 2,500円)である。

もう1冊は、上記をヒントにしたか、
偶然の一致か、日本版ともいうべき
『OVER 60 Street Snap』
(MASA&MARI著 主婦の友社 
2014年10月初版 1,500円)
b0141773_23191315.jpg

どちらも、街で見かけた、
おしゃれな高齢者をスナップ撮影した、
という設定の写真集である。

男の私には、さほど興味を引かれる写真集ではない。
さっと見て、テーブルに置いておいたら、
妻が一所懸命、何回も開いている。
そこで、知人を訪ねるとき、
1冊を持って行って見せたら、
「しばらく貸してほしい」と。
彼女も70代の女性である。
b0141773_23192893.jpg

ここで初めて、
出版プロデューサーの目で
この本がヒットしている(?)理由を考えてみた。

60歳を過ぎると、
少なからずの人は、
ファッションへの関心を弱めるか、
自分ではがんばっているつもりでも、
いろいろの事情で冴えなくなっている。
そういう自分に気づきを促すのが
上記の写真集ということだろう。
b0141773_23194782.jpg

とすると、
いずれ、これの60歳以下版が出そうだし、
男性版も出そうである。
いやいや、もうとっくに出ているかもしれない。
あるいは企画中か、制作中か。
b0141773_2320925.jpg

日本のファッション雑誌は、
「街で見かけた……」企画は得意中の得意で、
数十年の歴史がある。
テレビでも、
それを受けた企画がしばしば放送されている。
b0141773_23202517.jpg

そういう実績があるのに、
高齢女性の写真集出版を
あっさりアメリカに持って行かれたのは、
出版プロデューサーに油断があったのだろう。

企画は、
「売れる」「売れない」ということだけで
練っていてはダメ、ということだろう。
『アドバンス スタイル』には、
高齢者への関心、もっといえば
尊敬や愛情がある。
b0141773_23204093.jpg

日本の「街で見かけたおしゃれ」は、
もっぱら若い女性で、
それだけが「商品価値」と思い込んでいた。
『よいこ』『一年生』から始まって、
『蛍雪時代』へと、
年齢を追いかけ、
世代を輪切りにして商品にするのを得意とする
日本の編集者にとって、
高齢者は視界外、関心外の対象だった。
b0141773_2321694.jpg

よく言うことだが、
「生活習慣病を防ぐ食事」
という本への需要は少ない。
しかし、
「がん術後の人の食事」や
「透析を受けている人のライフスタイル」
という本への需要はある。

「不特定多数」を追うのは初心者で、
深い読みのあるプランナーは、
「特定少数」を見逃さない。
b0141773_23212368.jpg

あと知恵でいえば、
『アドバンス スタイル』は、
先進国に見られる高齢化を計算に入れた企画
ということになるが、
この本は、
そういう、いやらしい発想から
生まれたものではあるまい。

個人的にがんばっているファッショナブルレディを
いち早く発見し、それを映像化した。
彼女たちがすぐに応じたかどうかは定かでないが、
発見者の交渉力も才能だろう。
b0141773_23213861.jpg

さて、映画を観ての感想だが、
いやにテンションの高いドキュメントに仕上がっている。
まず写真集のヒットがあり、
それを受けて、
モデルになった人たちに
動画でインタビューを行なったのがこの作品である。

一躍、話題の人になったせいか、
対象者たちは、やや上ずっている。
もともとデザイナーや編集者など、
創造性のある人たちのせいか、
ファッションでもトークでも雄弁である。
b0141773_23215585.jpg

撮影時の年齢は、93、81、80、79、67、62
といったところである。

「人生という劇場のために毎日を着飾るの」
b0141773_2322780.jpg

「いつかだれかが、わたしはじゃが芋を入れる
麻の袋でさえ着こなせる、と言ったのよ。
スタイルって、自分をどう表現するかなのよね。
私はアクティブでいるのが好きだし、
それが若さを保つ秘訣だと思っているの」

そういう年代であれば、
このくらいのことは言えるだろう。
企画が企画だから、仕方がないとは思うが、
アメリカ人にしては、
年齢のことを言いすぎるな、と思った。
b0141773_23222534.jpg

ファションは、
アンチエージングの秘訣としてあるとは思わない。
ファッションを楽しんだ結果として、
見かけを若々しくさせることはあるかもしれない。

それは、登山でもダイビングでも、
競馬でも乗馬でも、
「予暇活動」に共通する一面ではある。
が、「逆も真なり」ではない。
予暇活動を続ければ
だれもが若々しくなれる、とは言えない。
b0141773_23225391.jpg

ここで、ファッションの意味が出てくる。
登山、ダイビング、弓道、ヨガ、自彊術などを
心から楽しみ、後進を導き、
かつ、ファツションに気をつかった人の中には
若々しさを漂わせる人の割合が多い、
というのが、慎重な言い方だろう。

もし、自分がこの映画のインタビュアーだったら、
もう少し、彼女たちのテンションを抑え、
知性を引き出す問いかけをしただろうと思う。
ファッションと知性(学力や学歴とは無縁)とは、
共存しやすい。
それを引き出すことにポイントを置いただろう。
b0141773_23232239.jpg

さて、
最初に紹介した2冊の本を
男の私に贈呈してくれた人の意図はなにか。
たぶん、塾生の大半は女性なので、
彼女たちに見せて、刺激してあげては?
ということだったのだろう。
もう1つは、
ファッション論に関心のある私に
資料を提供してくれたのだろう。

それがきっかけの1つとなって、
栄養士、健康支援者をモデルにした、
「健康支援者の輝きのスタイル」の写真集が
生まれることになるかもしれない。
栄養士のファッショナブル写真集は、
疑うことなく世界初だろう。
b0141773_23233499.jpg

by rocky-road | 2015-07-12 23:23  

<< からだによくないコトバ。 「スリム体型」のリテラシー >>