パルマローザ 写真教室 コンテスト作品評

パルマローザ 写真教室
コンテスト作品評
2015年4月29日に行なわれた、
恒例のパルマローザ主催の
写真教室に参加した方々の、
コンテスト応募作品を鑑賞した。
この写真教室では、初回から、
インターナショナルスクールのフードフェアをコースに入れていたが、
移動距離や要素が多すぎるという理由で、
今回は割愛した。
その結果、
山下公園から大桟橋に至る海岸を半日かけて歩くことになった。
花壇の展示などもあって、
被写体不足ということはない。

しかし、海は大きすぎてカメラには収めにくく、
花は、みな同じような撮り方になってしまう。
それをどう克服するか、
ということが今回の隠しテーマであった。
みなさん、苦労したせいか、
小学生のモデルさんをモチーフにして、
そこに集中した。
いつの間にか、人物撮影会のようになったが、
それも経験になることだろう。
一歩一歩前進してゆくしかない。
今回も「金賞」はなし。
銀賞1、銅賞に2、入選3という結果になった。
以下に全作品の講評をあげておこう。
(作者の敬称は略す)
大橋 予暇研究所主宰 大橋 禄郎

銀賞

エントリー7
タイトル うす紫色の帽子がお似合い
撮影 山同 紀子
(神奈川県 全国健康保険協会
神奈川支部 管理栄養士)
【選評】
帽子も衣服も思い切ってカットして、
少女の穏やかな表情の一瞬をとらえた。
構図、表情ともに申し分ない。
モデルが目線をずらすことで
記念写真の域を超えた。
それにしても、少女の表情はプロ級。
★タイトルは説明し過ぎ。
写真がそのことを語っているのだから、
「屋上屋を架す」は避けよう。
せめて「潮風はスミレ色」くらいにしたい。
銅 賞 2作品

エントリー1
タイトル 船上カメラマン☆
撮影 さいとう はる子
(東京都 行政 管理栄養士)
【選評】
後ろに停泊中の豪華客船に
自分を入れ込んで撮ろうとしている少年のアイディアがおもしろい。
その瞬間を脇から撮ったタイミングはさらに見事。
瞬時の判断ながら、構図が整っていて、
少年の撮影意図を十二分に表現している。
★「戦場」にかけた「船上カメラマン」
というタイトルもシャレがきいている。

エントリー5
タイトル パンダ忍法 つつじ隠れの術
撮影 塚本 初音(はつね)
(長崎県佐世保市 小学生)
【選評】
小学生の作品としてはアイディアがあり、
その作画意欲を評価する。
大人の作品として見た場合には、
絵を作り過ぎるという評になるが、
写真歴の少ない少女が、
自分のマスコットをツツジの中に配するセンスは認めてあげたい。
★タイトルは大人のアドバイスなのか、
ひねり過ぎ。
素直な作品には素直なタイトルをつけたい。
「かくれんぼパンダ」くらいでいいのでは?
入選 3作品

エントリー11
タイトルシャボン玉連射
撮影 三奈木博文(東京都 株式会社ミナキ)
【選評】
シャボン玉の写真は意外にむずかしい。
透明な玉がバックに溶け込んで
見えなくなることが多い。
この作品では、
ジャストタイミングで
たくさんのシャボン玉をとらえた。
カメラの位置も少女の目線近くにまで下げていて
臨場感を出した。
女の子の真剣な表情は可愛らしさとは異なるが、
これも写実の一面だろう。
★タイトルは、そのまんまだが、
ひねり過ぎよりはよい。

エントリー12
タイトル 横浜の友好関係。
撮影 みなき まゆみ
(東京都 行政 管理栄養士)
【選評】
スナップ写真は、
ある場面に出くわして
シャッターを切るのではなく、
ある場面から次を予測して、
コンマ何分の1秒後をキャッチするものである。
ここでは、
大人が子ども目線で話を聞いている姿勢に
温かさが漂う。
対話のお手本のような瞬間である。
★タイトルの「横浜の」と「友好関係」は、
どうつながるのだろうか。
さらに「友好関係」はマジメすぎないか。
さりげないスナップ写真の感じを出すなら、
子どもに語らせるのが定番。
「これ、な~あに?」とか「これ見てぇ!」とか。

エントリー6
タイトル 大人の世界、子どもの世界
撮影 岩崎 智子
(広島県 廿日市野村病院 管理栄養士)
【選評】
人間のセンスには「不調和の調和」という、
不思議な美意識がある。
それの見本のような作品。
3人の大人と3人の子どもが、
てんでバラバラの世界の中にいて、
しかし、それが共存し、
一定の構図を生み出している。
東と西、光と影、さらに晴天と雨天、
それらの共存が日常というものだろう。
タイトルはそのことを前提として
ネーミングしている。
今回は、モデル撮影会的なエントリーが多い中で、
この作品の不調和感はユニーク。
その他の作品

エントリー2
タイトル マリンタワーのバトンタッチ!
撮影 さいとうかずさ
(東京都大田区 小学生)
【選評】
2人の鋳造作品の中央にマリンタワー、
それをバトンタッチと見た着眼はおもしろい。
写真のおもしろさは、こういう絵作りにもある。
露出補正の技術がないので、
鋳造がアンダー露出になってしまった。
もう少し明るく撮ると、楽しい作品になる。
カメラを縦に構えて、
足や噴水まで入れると情景がわかるし、
水平線が傾かない構え方もあるので、
工夫したい。

エントリー3
タイトル BLUE YOKOHAM
撮影 塚本 剛志
(長崎県佐世保市 株式会社 塚本工務店)
【選評】
撮影地らしさを見つけて記念写真を撮る、
それも旅の楽しみ。
いかにその土地とわかるものを見つけるかが、
写真の楽しみの1つ。
この作品の場合、
このロケ地のスペース目的は不明だが、
シーサイドにあるここを「ブルー コハマ」と
ネーミングして提供しているのだろう。
あるいは飲食店の一部か。
この写真は、その情景を作為なしに撮影し、
タイトルもペイントに従った。
ここから出発して、自分の被写体を見つけ、
自分の構図を発見し、
人とダブらない写真を撮ることへと発展してゆくのだろう。

エントリー4
タイトル ちょっと、ひとやすみ
撮影 塚本 ゆみ子
(長崎県 佐世保市立総合病院 管理栄養士)
【選評】
コンテストは他流試合だから、
類似作品との競合はあり得る。
この作品の場合、
銀賞の「うす紫色の帽子がお似合い」
と比べたとき、
どちらにインパクトを感じるか。
ポーズでは断然、この作品のほうが可愛いが、
作品として見た場合、表現が散漫ではなかろうか。
スナップ写真ではなく、
モデル撮影であるとすれば、
白いバッグ、手前のタイルの模様、
遠景の人物など、
モデルへの集中力を弱める要素を
除外してもよさそうだ。
そうすれば、
お転婆しているポーズの躍動感が強くなる。
表情も、笑顔としても、
フォトテクニックとしても、
もっと明るくしたい。

エントリー8
タイトル 今、幸せ。
撮影 奥村 花子
(東京都 Hanaヨガ&食スタジオ主宰 管理栄養士)
【選評】
親子のカタチ、石像の位置、
噴水の勢いなどがきちんと1枚に収まっているし、
母子のポーズと石藏のポーズの類似もおもしろい。
なのに、
いまひとつ「今、幸せ」感が
伝わってこないのはなぜか。
それは、情報の多さなのかもしれない。
要素が多くて、テーマへの誘導力が落ちている。
親子の露出不足も一因だろう。
白い噴水に露出が引っ張られたために、
一家の明るい表情などが減じられた。
構図への目配り、
気配りはスキルとして伸ばしていきたい。

エントリー9
タイトルvernal flower
撮影 甲斐 勧(神奈川県横浜市 会社員)
【選評】
押しも押されもしないモデルの決めポーズ。
切り取り方は悪くないが、
やや表情がカタいし、顔が暗い。
表情のカタサさの責任はモデルにはない。
カメラマンには、
最高の表情を求める権利(?)があるし、
義務もある。
何枚も撮るか、
コトバをかけて和ませるか、じっくり待つか。
液晶画面が見にくい曇天ではあったが、
画像チェックはしっかり行ないたい。
★タイトルは適切。

エントリー10
タイトル 海賊船をキャッチ
撮影 甲斐 和恵
(神奈川県 船員保険健康管理センター管理栄養士)
【選評】
撮影中のカメラマンの定番的決めポーズ写真。
カメラマンの位置、港の様子、
横浜を物語るホテルの遠景など、
よく考えられた構図。
「海賊船」とは、
クルージング用ボートのネーミングだろうか。
記念写真はこうありたい。
が、フォトコン作品としての競争力は
強いとはいえない。

エントリー13
タイトル横浜へようこそ!
撮影 植村 寿香
(千葉県 浦安市特別養護老人ホーム 管理栄養士)
【選評】
屋外売店の販売員たち。
女性カメラマンにはフレンドリーなポーズを見せてくれる。
これを「記念写真」から「作品」にするには、
もう少し離れて、
どういう店なのかを説明すること。
後ろの船を入れれば土地柄も表現できる。
さらに、販売場面でも撮れば、
情報価値がぐんと高まる。
(記念写真は作品にはならない、
とまでは言えない)

エントリー14
タイトル 未来展望
撮影 花崎智恵美
(三重県 「はなさき料理教室」主宰
国際製菓技術専門学校講師 管理栄養士)
【選評】
エントリー作品中、数少ない風景写真。
それにしても重い写真。
「未来展望」は無理で、
暗雲立ち込める未来になってしまう。
作品とタイトルのイメージとのズレは、
作品分析が行き届かないせいか。
天気のせいにせず、明るい撮り方をする、
別の時間帯に撮る、
この写真を選ばないなどの対策を考えよう。

エントリー15
タイトル お花畑のプリンセス
撮影 影山なお子
(神奈川県 食コーチングプログラムス主宰/パルマローザ主宰
食コーチ/管理栄養士)
【選評】
晴れやかな笑顔がとらえられている。
しかし、作品として創意工夫はあまりない。
花畑と看板の関係、
後ろのビルなどはないことにして、
ただ笑顔だけを撮った、ということだろうか。
作品とするには、もっと意欲を感じさせる構図、
アングルなど、表現力を発揮したい。
★タイトルの花畑とプリンセスの関係が
写真からは浮かび上がらない。

エントリー16
タイトル 昭和の日 咲く
撮影 郷右近みちる
(神奈川県横浜白光会 今井の郷 管理栄養士)
【選評】
花の下から撮った風景写真という点ではユニーク。
アイディアはよいか、
かんじんの花が散らばっていて、
後ろのビル群に負けそう。
たくさんの花を狙わないで、
1~2輪に絞ってこのアングルを狙うともう少しすっきりするだろう。
基本的な問題として、
露出補正をプラスにして、
花の色を鮮やかに出したい。
さらに、日付入りは不可。
「メニュー」を選んで、
日付表示は「オフ」にしておこう。
それでも、日付はデータとして残る。
★タイトルは、大きすぎないか。
撮影日をタイトルと表示で
二重に入れるほどの希少種でもないのだから。
by rocky-road | 2015-05-12 09:49 | 写真教室