こんにちは……? こんばんは……?

「読売新聞」(4月5日)の書物紹介ページ
「よみうり堂」に目を通していたら、
いくつかの本、いくつかのフレーズに目が止まった。
そもそも、「よみうり堂」のロゴ、いや「書」は
敬愛する榊 莫山(さかきばくざん)さん(故人)
のものである。それも目を引く要素の1つである。
さて、目を止めた本の1つは
『ヒトはなぜ笑うのか』(原題 Inside Jokes)
アメリカの認知科学、進化心理学、哲学などの
学者を「総動員」したという本である。
その本を、同志社大の学長、村田 晃嗣氏が紹介している。
その中のフレーズ。
(この本の)「成功の秘訣は優れた問いかけにある。
つまり、ユーモアとは何かを越えて、
なぜユーモアが必要なのかを問うているのである」

もって回った表現だが、
要は、出版物や新聞記事の定番的タイトルにしたことが、
興味を引く理由の1つだ、
といっているようである。
「なぜ、リンゴは木から落ちるのか」
「温暖化は人類を滅亡させるのか」
「宇宙の果てはどうなっているのか」
よくある「問いかけ」型タイトル。

『ヒトはなぜ笑うのか』も、
そういう「柱立て」で構成されている本らしい。

いきなり脱線するが、
私の私的な理論では、
タイトルで「笑うのか」と問いかけたら、
中身は「(それは)悲しみを緩和するシステムである」
「失敗のダメージを分散させる生理現象である」
のように、答えてゆく形式にすべきである。
タイトルで問いかけておいて、
中身でまた問いかけていたのでは、
着地点を失うか、あいまいにしてしまう。
(本当に「成功の秘訣なの?」
正確には「秘訣」ではなくて「理由」では!?)

それはともかく、
ここで私が反応してしまうのは、
「問いかけ」のカタチのほうである。
問いかけには、
「相手に知りたい衝動を起こさせる」という
もう1つのバリエーションがある、
そのことに気づいたのがうれしい。
これは、幼児が母親などに、
「なぜお月様は黄色いの?(皆既月食でないとき)」
「どうしてお洗濯をするの?」
と問いかけて、
「答えたい衝動」を起こさせ、
母親との時間を長引かせようとする問いかけと
対比できる「問いかけ」のバリエーションである。

同じ「よみうり堂」欄にはもう1つ、
『殷 中国史最古の王朝』の紹介記事が載っていた。
「殷」(いん)といえば、漢字を生み出した国である。
その漢字、当初は甲骨(カメの甲羅や動物の骨)に
筆記具(焼けた火箸?)を当てると
どんな記号(文字)が描かれるかを占った。
「占」という字は、当時の甲骨文字の象形という。
占いとは、神や見えない力、
自然などへの問いかけにほかならない。
それから3000年、
いろいろの問いかけのパターンが生まれたが、
人類は、それを整理し、体系化することには不熱心で、
日本語では「質問する」「聞く」「問いかける」
などの定義も充分なものとはいえない。

カウンセリング技法としては
「傾聴」などの用語が生まれたが、
その方向としては、やや治療に軸足を置きがち。
とかくするうちに、
「食コーチング」では、
おもに健康支援の技法、
好ましい人間関係づくりの技法、
思考を深める技法などなどを前提にして
体系化が進められている。
体系化ということでは、
道を尋ねるような場合の「質問」から
婉曲表現としての「4階を押していただけませんか」
親が子を叱るようなときの詰問
「こんなに遅く帰ってきて危ないと思わないのか」
当てこすりとしての
「あなたは自分が世界一偉い人と思っているのでしょ?」
気づきを促す「職場では、どなたかから
なにかご指摘がありました?」
などに至るまで、
20通りほどの体系化が進んだ。

そして、
去る3月22日の
「食ジム」(食コーチング ディスカッションジム)では、
「問いかけ上手」になるための10か条を
みんなで考えた。
そのまとめを任され、
きょう(4月5日)、それをまとめた。
食ジム参加者には配布されるという。

上達にコツなどない。
が、この技法が人類をハッピーにする
貴重なコミュニケーションスキルであることを
深く認識することから始めることである。

「こんにちは」「こんばんは」も、
もともとは問いかけであった。
「今日はご機嫌いかがですか」の
文末を省いたカタチである。
表記法として、
「こんにちわ」が優勢だが、
問いかけ表現であることを意識するには、
「こんにちは」を守りたい。

問いかけは、
人間の認識を深める、すぐれた表現形式である。
そのことに、もっと驚いてもいいし、
だから、もっと追究すべきテーマである。
by rocky-road | 2015-04-05 21:58