広島って、なんやなんや行路。
ロッコム文章・編集塾/能登教室に続いて、
「コミュニケーション強化セミナー」が始まった。
といっても、
こちらは《コミュニケーション研究会 ひろしま》の主催。
文章だけではなく、
食コーチングとのオムニバス方式。
3か月に1度、
文章教室と、食コーチングの講義や演習とを
交互に行なうというもの。
12月6日(土)は、
このシリーズセミナーのオープニング。
文章であれ食コーチングであれ、
栄養士または健康支援者が
コミュニケーション力を強化する意味は、
ヘルスプロモーション、
つまり「社会に対する健康行動への動機づけ」の
必要度が高まったからにほかならない。
本当は、
特定保健指導制度が始まろうが始まらなかろうが、
健康支援者の仕事は、
つねにヘルスプロモーションの要素を持っていたはず。
が、多くの健康支援者は
専門知識や技術を極めることに追われ、
社会的アプローチができなかった。
と言いたいところだが、
実のところは、
コミュニケーションが苦手なために、
あるいは、
自分の社会的使命に気づくだけの洞察力が
不足していたために、
「専門性」へと逃げ込んできた、
というのが真相である。
ある栄養士会会長が、
盛んに「栄養士の専門性」を説くのを聞いて、
その図式が、むしろはっきり見えてきた。
そう、苦手なものから逃げる方便として、
「専門性」という煙幕を張って、
その間に姿をくらまそうという、
寒~くてセコイ戦術である。
原理主義というのはどの世界にもあって、
適応力や協調性のない個体は、
昔へ昔へと帰ろうとする。
「基本を見直す」というとカッコはいいが、
要は、適応力不足、努力不足、
思考力不足が要因である。
世の健康支援者養成校、
現役のベテラン健康支援者、
栄養士会のリーダー、
健康情報を扱うメディアなどの多くは、
軽い原理主義に陥っている。
「和食を見直そう」(いまさら)
「食の洋風化によって生活習慣病が急増している」
「若いうちからダイエットをすると骨粗鬆症になる」
「肉を食べるとキレやすくなる」
などと本気で言っている者を
あまり信じないほうがいい。
間違いなく、自分の目で世の動きを把握できない、
大人としては少しおバカなタイプだと、
99パーセントは思って間違いない。
そうしたおバカににはなるまいと、
自分の頭で考えようとする人たちが、
少しずつ行動し始めた。
行動科学の理論によると、
「チェンジ」のプロセスとして、
こんな段階を経るという。
①知識を得る。
②態度が変わる。
③行動に現われる。
④集団への働きかけや参加がある。
数字が上がるほど困難度が増し、時間もかかる。
が、集団行動になったとき、
チェンジ度がもっとも大きくなる。
東京、横浜、能登、広島と、
変化は限定的に見えるが、
それがさらに広がるのは時間の問題である。
健康支援者にコミュニケーション力は無用、
などという理論は、
まちがっても生まれることはないはずである。
おバカを2度経験したいという人は、
まずいないだろうから。
ところで、広島でのセミナー前日、
尾道を案内してもらった。
尾道といえば、志賀直哉である。
志賀直哉は、
私が高校から大学時代に出会った作家で、
その簡潔な文体に魅せられた。
それと、執筆する場所が
京都であったり尾道であったりして、
旅をしながら文章を書いている人のように思えた。
そこにも憧れた。
「小僧の神様」「好人物の夫婦」「城崎にて」
などの短編を書写して、
その文体のコツをつかみたいと思った。
その人の葬儀の日には、
勝手に斎場に赴き、焼香をした。
尾道には、その旧居があった。
実際には長く住んではいなかったらしいが
(旅型作家だから当然?)、
志賀直哉が腰かけたであろう縁側に腰を下ろすと、
いまさらながら、若いときに感じた感慨を味わった。
夕暮れ時だったので帰りを急いだが、
再度、訪ねてみたいと思った。
街に降りてきたとき、
「パン屋航路」という看板を見て、
ヘンなネーミングと思ったが、
数秒後に気がついた。
志賀直哉の長編『暗夜行路』の
もじりであった。
by rocky-road | 2014-12-09 00:08