穏やか前線・日本海

ロッコム文章・編集塾/能登教室
第3回の授業が終わった。

このクラスは3か月に1回ということもあって、
早くから企画が進み、
会場の確保、受講者への呼びかけ、
実行委員長をはじめ、各委員の選定、
教室内の展示物の準備、
司会進行役のリハーサル、
空港への出迎え組、
終了後の見送り組などと、
準備万端、怠りない。

人口、政治、経済、文化、活力などの
一極集中の弊害が指摘される昨今、
ささやかであっても、
文章力のように、
思考力、人生観、コミュニケーション力に
効果が現われる学習を続けるコミュニティが
地域に存在することはうれしく、頼もしい。


一極集中については、
集中させるほう、
つまり都市のほうに問題や
その責任があるかのようにいわれるが、
果たしてそうだろうか。

自分の人生を
自分の住む地域、自分が行動する範囲でとらえ、
そこに安住しようとする地域住民にも、
責任がないとはいえない。


ひっそり暮らしていた日本人が、
世界でも知らない人の少ない大国(?)にまで
発展したのは、
先人たちのモチベーションと行動力があればこそ。
人間はカゴの鳥ではない。
自分の描いた世界で生きることができるのである。

「自分の描いた世界」とは、
「描く」(えがく)とはいっても、
それは映像表現ではなく、言語表現である。
文章力強化は、究極的には自分の人生を描くための
主要な表現手段を得るためである。
そのことの意味を、すでにわかっている人もいるが、
だだ単に「情報発信のため」と、
どこかで聞いたようなコトバで想定するのが精一杯、
という人も少なくない。

能登教室は、
横浜で開講しているロッコム文章・編集塾に
長年通っている人によって企画・運営されている。
「最初にコトバありき」ではないが、
まさしく文章力の効用を理解した人の
着眼と実行力による実践のカタチそのものであろう。

今回の教室は、
1.宿題の発表。前回の講義、
「『なじんだコトバを見直す。』を受けて、
感じたこと、考えたことを
約600字にまとめなさい」

2.前回宿題のお返しと講評。
「『私はこのように文章力を活用したい』
というテーマで、私的・公的な目標や夢を
示してください。ボールペン使用。600字以内」

3.講義「文章力強化のための『自主トレ』メニュー」
「1」の講義の感想として、
大きく分けると
文字どおり、感想を順序どおりに示すもの、
受講内容をふまえて自説を展開するもの、
などがあった。


あたりまえの「感想」にとどまらず、
受講内容を自分の今後の思考法に
組み込んでゆこうとする意欲が
感じられるものが多かった。

講義で触れた「健康の6大要素」、
コトバの定義を見直すこと、
自分で定義するの意義などに対する
気づきや共感を示す文章がいくつかあった。

原稿用紙を使って手書きをする経験は、
だいぶ遠くのことになっている人が
ほとんどと思われるが、
その割にはしっかりと書いていた。
パソコンによる文章と違って、
1字1字、自分の筆圧で綴る文字の持つ
パワーが感じられて快かった。

文字を手書きする機会は、
いかにデジタルコミュニケーションが
盛んになっても、ゼロになることはない。
むしろ、隠し技的な、
つまりは教養評価基準として
ますます意味を持つものになるだろう。

「3」の「自主トレ」講義では、
ひと口に「文章」といっても、
事務文書から手紙、論文、解説的文章まで、
どんな数え方をしても数百にもなること、
したがって、「文才」などというコトバは
軽々しく使うものではないことを話した。

事務文書の名人が、
エッセイの名人である可能性は低く、
大ヒット中の小説家が
事務文書の名人である可能性も
ますます低いことをお伝えした。

文章は才能で書くものではなく、
自分が習熟したい文章を
トレーニングによって熟練してゆくしかない。
もし1つだけ「才能」を求めるなら、
それは「持続性」であろう。

繰り返すが、
文章は
コミュニケーションのメディアにとどまるものではなく、
思考を深めるための手かがりであり、
よりよい成果を生むための
プロセスということである。

会場には、遠距離クラスの方々にも
各地から来ていただいたが、
12月からは広島でも
コミュニケーションセミナーが開催される。
その説明に、長谷 泉さんが
広島からおいでになってごあいさつされた。
詳細は『栄養と料理』や『食生活』で紹介されるという。

さて、9月14日は、
以上の講義のために午前5時に起床、
9時5分に羽田空港を離陸し、
43分間で能登空港に着地した。
そして、午後1時30分~5時30分までの講義。

翌日と、翌々日は、
能登島・七尾の里海でスノーケリングと
ダイビングを楽しんだ。
文章論の講義とダイビングを
1度の旅で試みたのは、
わがダイビング歴50年にして初めてである。


講義用の荷物と、
ダイビング用に荷物を送ったり
持ったりするのも初めてだから、
何度も荷物チェックをしなければならなかった。

日本海での海中散歩は
若狭湾、粟島、天橋立、佐渡などについで5~6回目だが、
「日本海」などとひとくくりにはできない、
またまた味わい深い海であった。

繁茂するホンダワラなどの海藻、
太平洋に比べて
はるかに穏やかな動きをする魚たち、
「ベタなぎ」というより「盆水」といいたいほどの凪(なぎ)。
「海に抱かれる」心地よさを味わう海の旅であった。
錯覚ではなく、ガイドをしてくれた人までが、
盆水を思わせるほどの静けさと落ち着きを保っていた。

佐渡ダイビングリゾートのお世話になったが、
なんと東京での水中映像仲間であった阿部秀樹氏に
数十年ぶりで出会った。
ここの常連ビジターだという。
海洋写真家となって活動中という。

そして、栄養士との海中散歩、
数十年前の体験を、
いままた、
2014年にも続けている幸運を
心から味わった。

見送り組のみなさんのお・も・て・な・しを受けて、
17日まで、いくつかの観光や日常的コースを見学し、
楽しむことができた。




by rocky-road | 2014-09-19 23:06