「人間学」をどこで、どう使うか。

「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23425134.jpg

2月5日、NHKテレビの『クローズアップ現代』で
患者や寝たきりの人へのケアスキルである
「ユマニチュード」のポイントを紹介していた。
ひとことでいえば、
ベッド上にある人を人間として扱う、
その基本理念とスキルである。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23431398.jpg

この方法でアプローチすることで、
認知症が出始めている高齢者の人間性が回復する
という例が解説や映像で紹介されていた。
90歳を越えた人が
取材スタッフにVサインをする映像まであった。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23432824.jpg

よくいわれることだが、
怪我や病気で入院した人は、
寝かされっぱなしの生活をすることで、
人間機能が後退し、認知症が早く発症する。
双方向のコミュニケーション環境が狭く、
というより、ほとんどなくなることが主因である。

「ユマニチュード」の考案者がフランス人と聞いて、
またまた日本人のコミュニケーション力の弱点を
鼻先で示された感じだった。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_2347886.jpg

日本を代表する自動車メーカーの経営危機を
救ってくれたのもフランス人だった。
この場合も、
社内のコミュニケーション環境をよくしたことが、
経営状態改善の大きなポイントであった。

日本人のコミュニケーション力の特徴とはなにか。
それは、
恩師、芳賀 綏先生が指摘する「凹文化」圏の
人間に特有のコミュニケーション力だろう。
(『日本人らしさの発見』大修館書店 
過日、このブログでも触れた)
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_2347287.jpg

先生によると、日本人は、自然・植物性・静的・内向・
受容・流動(無原理)民族ということになる。
そして、やさしく、温和で、正直で、律儀で、
生真面目な日本人とくれば、
介護の仕事などにぴったりではないか、と思いたくなる。

ところがところが、ここでもフランス人の教えを受けないと
あと1歩が出なかったことが証明された。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_2348767.jpg

「ユマニチュード」の原則は、
見つめること、触れること、話しかけること、
自分で立つことを支援する……などだという。

早い話が、コトバと支援行動の合わせ技を
提唱しているように思う。
凹文化圏の日本人は、「沈黙は金」の世界だから、
黙々と介護の仕事に専念するのが性に合っている。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23482764.jpg

立食パーティは、いろいろの人と交流するための仕組みだが、
日本人の場合、飲食に時間と労力をかける。
口を飲食物でふさぎ、
知らない人と話をしなくてもよい状態をつくる。
日本の立食パーティがごちそうずくめなのは、
「沈黙は金」を正当化するためだろう。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23484423.jpg

が、フランス人は、
「沈黙は金」式の介護ではダメだという。
手を上げてほしいときは、
「腕を拭きますから、左手をあげてください」と、
はっきり言うことだという。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23491428.jpg

こうしたサポート姿勢は、
すでに「食コーチング」に採り入れられている。
自発性の刺激であり、肯定的指摘である。
それらは、フランスの教えではない。
ヘルスコミュニケーション論を展開したことによる
当然の帰結である。
健康支援は「話芸」である、と私は言い続けている。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_2350912.jpg

健康や幸福、生きがいは、
コトバでしか説明できない。
時と場合に応じて、
印象的にそれらのイメージを伝えられてこその
健康支援であろ。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23502155.jpg

コミュニケーション環境ということで、
もう1つの話題を。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23531966.jpg

「おれおれ詐欺」の被害が減るどころか、
増えるばかりだが、
これも高齢者のコミュニケーション環境から生まれる
犯罪、と見ていいだろう。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23534743.jpg

人間にとって、頼まれること、泣きつかれることが、
どれほど本人の自尊心を刺激し、
モチベーションを高めるものであるかを
如実に示す犯罪の流行である。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23541956.jpg

人から頼まれる頻度が減っている高齢者にとって、
「なんとかならないかな?」と持ちかけられると、
「なんとかしなければ」いられなくなる。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23544640.jpg

高齢者が、電話の声を
本当に息子や孫と思っているかどうかは
不確かである。
詐欺にひっかかる高齢者にとって、
そのこと以上に重要なのは、
自分が人の役に立てるという事実である。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_2354596.jpg

その結果、味方であるはずの銀行員を
「家の改築に必要」などとだまして、
預金を下ろしてしまう。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_2355178.jpg

だまされている人が、自分を守ってくれる人をだます。
大金は持っているが、
淋しい高齢者のモチベーションというものが、
どういうものであるかがよくわかる。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23553284.jpg

「ユマニチュード」などの健康支援と
おれおれ詐欺には、
人間を人間として扱うという点で(一方は悪意に満ちているが)は
悲しいかな共通性がある。
われわれは、
人間を、もっともっと学ばなければならない。
「人間学」をどこで、どう使うか。_b0141773_23554268.jpg

by rocky-road | 2014-02-09 23:54  

<< 人間をやめますか、動物をやめますか。 『芸術を創る脳』でひらめくもの。 >>