旅の宿でコーチングを学ぶ。

夏の、それなりの多忙と暑気による疲労とを癒やすこと、
そして、広島周辺の健康支援者と交流することを目的に
広島のコテージで過ごす、という旅行にお誘いいただいた。

日中はコテージ界隈の緑に包まれ、
時間があればプールで泳ぐつもりだったが、
ただただぐったり過ごすことに徹し、
水着を持参はしたものの、泳ぐこともしなかった。

なか日の10日の夕食から、
みなさんとご一緒し、楽しく語り合った。
どこにも輝きのある人はいるもので、
そういう人たちのライフスタイルの一端をうかがえることは、
楽しく、有意義であった。


メンバーには10月初旬に沖縄の座間味島に
スノーケリングを楽しみに行く人が4人もいて、
やや海の話が多すぎたかな? と少し反省はした。

それにしても、健康支援者のみなさんと
こんなにも海の話をする機会があるのは意外。
わがダイビング歴50年目にして初めてのことである。
「海と島の旅」に終わりのないことを改めて知る。

その旅先で、9日の夜、
NHKテレビの「プロフェッショナル 仕事の流儀」を
ゆっくりと見た。
たまたま、広い意味での「コーチング」のダイジェスト版。
5人のコーチの流儀をじっくりと見た。
午後10時の番組なので、
栄養士のみなさんと一緒に見る機会はないが、
今回は、旅先のこと、
みなさんと、この関連深いテーマの番組を見た。

登場した5人は、
プロ野球、楽天イーグルスのピッチングコーチの佐藤義則氏。
「マー君」こと、田中将大投手らのチームコーチ。
水泳コーチの平井伯昌氏。平泳ぎの北島康介のコーチ。
宮大工の菊池恭二氏。師匠の西岡常一氏(故人)の教えを紹介する。
小学校教諭の菊池省三氏は学級崩壊状態のクラスを立て直す。
定時制高校の教諭、岡田倫代氏は、不登校気味の女生徒を
立ち直らせる。

佐藤氏は、ピッチャーをコーチするとき、
「悪いところを修正するよりも、いいところを伸ばしながら、
悪いところを直すほうがよい」という。

平井氏は、「むやみにほめず、簡潔にポイントを示す」という。
菊池氏は、宮大工の師匠・西岡氏にいろいろと尋ねると、
「お前はどう思う?」と聞き返されたという。
そしていう。
「わしはな、学校の先生やあらへんのや。自分で考えなはれ」
といわれた、という。

もう1人の菊池氏、
菊池省三氏は、「啐啄」(そったく)というコトバを
行動規範の1つとしているという。
親鳥が卵の周囲をつつきながら、
卵の中の雛鳥とコミュニケーションをとるように、
生徒にもこれを当てはめ、
生徒の潜在意識になにがあるかを
日記を書かせるなどして察知し、
それに呼応するように支援をする、という流儀。

岡田倫代氏は、目的もわからず教員室にやってくる
女生徒の話を何回も何回も聞く。
先を急がず、結論を求めない。
促すことなく耳を傾ける。
「寄り添う」というコトバが何回か使われた。

それぞれの「流儀」に共通するのは、
怒鳴ったり貶(けな)したりすることがない。
佐藤氏の場合、ときどき小さく叱るが、
そこが修正されると「ほら、できるだろう」と
しっかりほめる。


分野の違う一流コーチの「流儀」を見ていて、
食事相談との大きな違いを感じた。
チームコーチや教諭の場合は、
対象者と持続的な関係ができていること。
いわばチームの仲間でいられる。



それに比べて、食事相談の場合、
とくに「特定保健指導」のような形では、
栄養士とクライアントの関係は、一過的。
組織や規則によって2者の関係がくくられているわけではない。
ほとんど「行きずり」といってもよい。

この状態で相手のライフスタイルを向上させるのは、
並み大抵のことではない。
が、ここにも「名人」が生まれるはず。
栄養士が「プロフェッショナル」に出演する日は
きっとくるだろうが、
それはだいぶ先になるだろう。

すぐに到達できないということは、
うれしい状況ではないだろうか。

旅先でテレビ番組を真剣に見る機会は少ないが、
今回の旅では、そのゆとりがあった。
「する」ことが多い、わが旅のスタイルだが、
「する」ことの少ないこの旅では、
別の収穫があった。

by rocky-road | 2013-09-12 17:11