海、たび旅……山、久びさ。
富山県と石川県の有志の栄養士によって
結成された「能越・栄養士会」のお招きで
2講師による2日間のセミナーに参加した。
6月15日、16日。
初日の会場は、高岡市にある厚生連高岡病院会議室。
講師は影山なお子さんによる
「健康を支えるコミュニケーション力を磨く。
――食コーチングによるアプローチ――」
(くわしくは影山さんのブログ)
http://palmarosa.exblog.jp/
最近、いろいろの栄養士さんと話をしていて、
日本人として普通の日常会話が充分とはいえない人に
食事相談ができるのだろうか、ということが話題になる。
日本語で魅力的な話ができない人が、
外国語を習ったからといって急に雄弁になったり、
人を引きつける〝なにか〟が出てきたり、
などということがないのと同じである。
あるいは、パソコンやスマートフォンを与えれば、
みんなが文章を書くのがうまくなる、
というわけにはいかないように。
栄養士が、
人間対人間の基本的なコミュニケーションスキルを磨くことなく、
ここまでやってこられたのは、
業務の中心が、厨房とか病室とか、自分のデスクとか、
いわば楽屋裏の仕事にウエートがかかってきたからにほかならない。
その結果、栄養士の仕事は「地味だ」などと、自身が思うようになった。
が、健康前線が予防領域へと展開することによって、
相手が有病者とは限らず、フツーの生活者の割合が多くなった。
この段階で、一部の栄養士は、
フツーのコミュニケーション力不足に気がついた。
気がついたのは、それでもごくごく一部に過ぎない。
気づいていない人は被害者ともいえる。
養成校の教員や先輩たちから、
意味のわからない「専門性」を叩き込まれ、
いわば洗脳されてしまっているからである。
その洗脳を解く意味でも、
コミュニケーション力を見直すことは賢明である。
一部に「伝える力」を説く書物もあるが、
相手かまわず伝えようとするから、
話が伝わらなくなるのである!!!
「伝える前に問いかけよ」
「問われたら問い返せ」
食コーチングはそこを大事にする。
乗り物に乗るのに、行先を決めずにキップを買う人はいない。
「発券者」たる栄養士は、
まず相手の行き先を確かめる。
「北に行きたいのですね。
北とは、東京の北ですか、富山の北ですか」
「コーチ」とは、もともとはヨーロッパの某国にあった
「コーチ村」の乗合馬車だったとか。
そして馬車の「御者」からスポーツの「コーチ」の意味が生まれ、
馬車からは「バス」や「客車」の意味が生まれた。
「指導駅」に向かっていた栄養士のごく一部は、
「支援駅」へと方向を転換しようとしている。
コミュニケーション力を磨くと、
大事にしていた「専門性」は薄まる?
まったく逆である。
コミュニケーション力とは、
究極的には相手のニーズを察することであり、
自分の思考力を深めることである。
見たことがない「病気」や「健康」が見えるようになるはずである。
食コーチングは、結果的に栄養士の「専門性」を
深めるとともに、広げることにも、なるだろう。
2日目は、場所を南砺市の庄川峡にある長崎温泉「北原荘」に移し、
午前は「栄養士のライフデザインをどう描くか」という演題で講義。
午後は食材、献立の撮影実習。
いずれも私が担当した。
セミナーでは、今回初めて、「栄養士は地味」の意味を分析した。
「理系だから地味」「もともと地味な人が栄養士に……」
などは、俗説であり、原因と結果の取り違えである。
先輩たちが仕事の多様性を説かず、生きることへの動機づけをしない
といったミスリード(主要な原因)をしたから、
おかしな思い込みを招いたに過ぎない(結果)。
もっとも、「地味」の反対語は「派手」では困る。
せいぜい「明るい」「快活」「より健康的」とするか。
写真教室は、初めて献立撮影のトレーニングをした。
写真は「真実」を撮るとは限らない。
出てきた献立をそのまま撮っても、おいしそうには写らない。
写真的なコーディネート、いわば演出が必要である。
その実践をした。
栄養士業務も撮影技術も、
トレーニングが必要。
そうか、からだを使ったトレーニングをしなさすぎる。
トレーニングを怠る名選手は少ない。
新しいスキルはどんどん磨こう。
初めての富山。
半世紀は「海、たび旅」だったので、
以前から見てみたかった合掌造りの古民家集落を
訪れたことはうれしかった。
日本海には何回か潜ったが、富山の海は未経験。
太平洋とは明らかに違う、
奥ゆかしい海岸風景を久々に鑑賞した。
そして、関係者の方々のおもてなしの心のレベルの高さに感動した。
日本はいい国だと思った。
6月1日から始まった「バースデーウイーク」は、
15日の北原荘でのサプライズで、
いよいよエンディングとなった。
「バースデー2ウイーク」の終焉である。
by rocky-road | 2013-06-22 23:08