5月19日は「食事力」の日。
5月19日、パルマローザ主催の輪読会の日、
朝刊の「三・八つ広告」で
『うつを改善する食事力』(昇 幹夫/渡辺雅美著 春陽堂)
という書物の出版を知った。
翌20日、近くの書店に行ったら1軒は売り切れ、
1軒は配本なし、ということだった。
(「さんやつ」=新聞の一面にある
おもに書籍の広告。「三・八つ」とは、3段×8点の広告の意、
版元は、ここに広告を出すことで自社のステータスを示す)
ちなみに売り切れになったのは、
配本数が少ないだけで、ベストセラーという意味ではない。
したがって、中身を見てはいないが、
内容はともあれ、「食事力」というコトバが使ってあることで
ある決断が生まれた。あたかも宣戦布告を受けたようなもの。
パールハーバーに日本海軍零式戦闘機(ゼロ戦)が襲来したときの、
ハワイに集結していたアメリカ海軍の心境かもしれない。
「食事力」というコトバは、12年ほど前に、
管理栄養士の宗像伸子さんとの話し合いのときに生まれたコトバで、
それは人間の咀嚼力から食による健康意識までを指すものである。
以後、このコトバの定義やその補強は私が引き受け、
その普及は宗像さんが行なうこととなった。
このコトバのインパクトはあって、新聞の対談形式の全面広告でも、
宗像さんがその意味について語った。
さらに『40歳からの「太らない食事力」』という本が
講談社のα新書で出た。(宗像伸子著 2004年5月)
また、「食育」に関する講演会などでも、
宗像さんは、食事力の意味について語ってきた。
そうした一連の活動の影響なのか、
別の人が、いま、そのコトバを思いついたのか定かではないが、
ついに別ルートから「食事力」というコトバを使った本が出た。
宗像さんの造語とはいえ、一般名詞に組み込まれるであろうコトバだから、
だれが使っても問題はない。
「ストレス」学説は、ウイーン生まれでカナダ人となった
ハンス・セリエが唱えたことも、
カウンセリング技法が、C・Rロジャースという人の
説や技法によって、とりわけ普及が早まったという事情を知らなくても、
「ストレス」も「カウンセリング」も現代の日本でも日常語になった。
そのように「食事力」も、遅かれ早かれ日常語になるだろう。
現に、宗像さんに、前述の本が出たことを知らせたら、
「よいことではないですか」と、きわめて寛容な反応を示した。
確かにそうだが、ここはやはり、定義をしっかりしておくべきだろう。
でないと、「食育基本法」のように、定義がないまま、
理念を示すと、行政の施策に組み込まれたとき、
末端では大きな混乱が起こる。
以下、本家(?)「食事力」本舗の定義を示しておこう。
前述の本が、「食事力」をどう定義しているか
まだ見ていないが、以下の定義との異同を確かめるのが楽しみである。
【食事力】の定義
人間の資質的・社会的能力の1つで、自分に適量の食事を、
一定の時間で摂取する能力、決めた時刻に摂取する能力、
食事によって健康を維持する能力、
食事をおいしく、同席する人とは楽しく食事する能力など、
食事の多様な目的に沿った食行動のすべてを指す。
歯茎がはれていて物がかめない、食欲がない、
食べたものを吐いたり下痢したりする……などの状態は
「食事力が落ちている」といえる。
【補足・解説】
人間の能力には、「気力」「体力」「活力」「視力」のように、
多分に資質的(生まれつき)のものと、
「学力」「経済力」「指導力」「影響力」のように
社会に出てから身につける社会的能力とがある。
さらに、資質的な能力と社会的な能力との中間くらいの能力としては
「脚力」「記憶力」「忍耐力」などがある。
「食事力」も、このあたりに位置づけられる能力。
食欲は本能であるが、自分に合った食事の量や、
味覚的・栄養的なバランスを考えて食事をする能力などは、
成長とともに身につけてゆく能力である。
「食事力」は、人間の生存を左右するほどの大事な能力だが、
このことばは、国語にはなかった。
宗像伸子によって2002年に造語され、
雑誌、書物、講演などで提案された。
さらにいえば、「食育」の目的は、年齢に関係なく、
個々人の食事力をつけることではないのか。
もし、「食育基本法」が生まれるずっと前に、
このコトバが提案されていれば、「食育」の目標は、
ずっと明確になっていたのではなかろうか。
「要介護にならないための食育」などは
なんとも不釣り合いな用語であろう。
高齢者に「食育」はおかしい。
これも「食事力をつけて、要介護になるのを遅らせよう」ということで
大人のテーマとしてしっくり収まるのではないか。
2013年5月19日は「食事力」解禁の日。
私の中では、そう記憶されることになるだろう。
宗像さん経由の普及を考えていたが、
きょうからは、日本語の新語として、登録することになるだろう。
いや、すでに、一部の関係者の中では、
とっくに日本語になっていたのだから、
「いまさらそんなことをいうのはおかしい」といわれることだろう。
では、きょうからは、全栄養士、全健康支援者の用語として、
どうぞお使いください、と宣言してはどうだろう。
ただし、定義の更新は思慮深く、ていねいに。
これとは別に、
一部の学者は、いよいよ「うつ」を栄養障害、または、
食事性の病気として位置づけようと動いているようである。
だとすると、戦中・戦後の飢餓状態の日本では、
「うつ」が蔓延していたことになるし、
世界に分布する数億人といわれる飢餓状態の人々にも
「うつ」が蔓延していることになる。
WHOは、いずれ「うつ予防にヨウサンを」などと宣言するのだろうか。
食事で「うつ」を防ぐとか、改善するとかといっている学者諸氏、
大丈夫ですか。
よ~く考えてから、いや、しっかりエビデンスを示して主張しましょうね。
by rocky-road | 2013-05-21 23:35