やっぱり「私だけ」は気づけない。
ゴールデンウイークの前半の3日間は、横浜に滞在した。
27日は、ロッコム文章・編集塾の「遠距離クラス」。
28日は、「食ジム」で「健康をカタチにする
写真コミュニケーション力強化 大公開」
29日は、横浜、山下公園界隈での撮影会。
これらのうち、
今回は「遠距離クラス」の宿題に関して、
もう一度書いておこう。
遠距離クラスや毎月のクラスでは、
宿題として、「いま、私だけが気がついていること」というテーマで
一文を書きなさい、という出題をしたところ、
大半がギブアップした。
出題の仕方が悪いのかと思ったが、
きちんと対応している人もいる。
その例として、谷口佳津子さんが書いた
「不思議発見」という文章を、このブログの1月29日でも紹介した。
テレビやラジオのスポーツ中継では
女子アナによるものはゼロではないか、という指摘である。
しかし、ほとんどの人は、惨敗しているので、
遠距離クラスでも、再度このテーマで出題し、
リベンジの機会を与えた。
辛いだろうが、このハードルを乗り越えないと、
オリンピックはおろか、地区予選にも出られないのである。
あえてこの課題にこだわるのは、
みんなが知っていることのうち、
その事象の原因や事情、解釈において、
自分だけが気がついていることをあげて指摘し、
分析する能力を養うことにある。
これは、オピニオンリーダーにとって欠かせない能力である。
リンゴが木から落ちることは、だれもが知っていた。
が、その現象には万有引力の法則があることを指摘する人は、
ニュートン以前にはいなかった。
そんなデッカイ話ではなくても、
谷口さんの指摘に倣えば、
①ニュースキャスターにも女性が1人で担う例はごくマレなこと、
②アナウンサーはインタビューがとても下手なこと、
などに気づき、分析をすれば、「私だけ」の気づきになりうる。
(アナウンサーは、インタビューのトレーニングなどしないから、
当然と言えば当然)
今回の宿題に、これから取りかかる人へのヒントにもなりそうだが、
あえて、もう少し続けよう。
③NHKニュースでは、外国の事件の時刻を日本時間でいう伝統があるが、
5W1Hの原則からいって、いかにも不自然。
オランダ国王の即位式が日本時間の21時ころ行なわれた、
という情報をもらっても困る。
こんな情報提供では、インターネット情報に負けるだろう。
あるいは、⑤女性が乗っている自転車の多くは、
1キロ先で曲がるにしても、曲がる側の道路を走る傾向がある。
(左側通行には無頓着)
⑥飲食店の従業員の中には、前の客が帰ったあと、
その客が使ったおしぼりでテーブルを拭くヤツが少なくない。
⑦「世界のユニクロ」を目指す会社の新聞やチラシ広告では、
衣服の素材を意図的に表示しない。
などなど、みんなが見てはいても、
それらの原因や問題点を洞察する例は少ない。
情報化とは、みんなの知らないこと、考えていないことを
記号化することにほかならない。
そこから改善への糸口が見つかることはよくある。
「世界のユニクロ」についていえば、
新聞広告やチラシを目にする消費者は、
衣服の素材に関心を持つタイプは多くない、と見ているようだ。
素材表示を忘れているわけはない。
すでに数回、本社宛のアンケートに書いて出した経験がある。
それでも、なんの反応もないのは、
広告に素材を入れることをあえて不要としているからである。
これは創業以来の伝統と思われるが、
インターネットの普及に伴って、
ホームページでは、一般的な、詳細な素材表示をしている。
商品説明の詳しさでは、インターネット専門のアマゾンなどよりまさっている。
もっとも、素材を表示しないがために、
独自のアピール表示を生み出してきたという実績はある。
「ドライTシャツ」「ヒートテック」「フレンチリネン」
「コットンリネン」などである。
これらは、一種の翻訳表現だろう。
栄養素表示でこれに匹敵するのは
「ヘルシーランチ」「ダイエットメニュー」というところである。
衣服の素材や栄養素の含有量などに予備知識のない消費者には、
馬の耳に念仏、ネコに小判と考えるのは、
一種の驕り(おごり)である。
ビジネスの大原則は、クライアントに有効な情報は、
可能な限りオープンにすることである。
地図を出版する企業は、国土地理院のデータをそっくり提供する。
その地図をドロボーが利用する可能性があるとしても。
さて、「世界のユニクロ」は、
消費者の潜在ニーズをどこまで洞察するか。
連戦連勝気分のユニクロに、
眼を細めて視界を見極める余裕があるだろうか。
by rocky-road | 2013-05-01 23:11