管理栄養士が、やっちまった!!!
言うべきか、言わざるべきか、迷うところだが、
やはり言うべき、との結論に達した。
昔、仕事で親しく接点のあった人が、
マユツバ本を出した。
書名は写真に譲るが、1食品の生理的効果を過大に期待する
フードファディズム(食品と健康との関係を
過度に結びつける思考法)の壁を
あっさりとすり抜けてしまった本である。
いわく、たまねぎ氷によって3キロやせた、
血圧や血糖値が下がった、便秘や糖尿病が改善した……。
本を買って検証するまでもなかろう。
昔から常用しているある野菜をどう加工してとったとしても、
薬以上の治療効果がある、などということは、
常識では考えにくい。
もしそうなら、小さな版元(?)から
定価1,050円なんていう値段で出版をせずに、
製薬会社と組んで世界的な特許をとったほうが儲かりそうだし、
あるいは、大きな学会で発表したほうが、
世のため、人のためにもなるだろう。
その人は、著名な大ベテランの料理研究家で、管理栄養士である。
かねがね私は、ドクターに怪しげな食事論を書かせておくのは、
栄養士の社会的発言力の弱さにも一因がある、と指摘してきた。
が、その管理栄養士が、
こういうマユツバ本を書いてしまった。それが現実である。
この状況に対策はあるのか。
まずは、出版を決めた事情について、
いくつかの想定が可能だろう。
①言っていることは正しい。それ相当なエビデンスがある。
②エビデンスの有無は別として、本人がそう信じている。
③本人は疑っているが、版元から依頼されたので、それに乗った。
④本人も版元も疑っているが、売れそうだから「行ってみよォ」
いくらなんでも、④の線はなさそうだが、
すでにこんな本がたくさん出ているので、
「何万部突破!」などということになる可能性は少ない。
筆者も版元も、そうそう「いい思い」をするわけではない。
一部のマユツバ医師の信頼性が落ちているので、
管理栄養士の権威なんぞ、だれも気にはしなかろう、
そう割り切るべきか。
その人のキャリアや年齢にもよるが、
未来のある管理栄養士に限って言えば、
やはりフードファディズムで手を汚すのは避けたい。
ただし、二流や三流で栄養士活動をしたい人は、
その限りではない。
もっとも、そういう非実力派は、
二流を続けることだってむずかしく、
少しずつ高度を下げて行って、いずれは不時着する。
一流を目指す人にとっての難関は、
依頼者からの甘い誘いである。
版元の場合もあるし、メーカーや事業体の場合もある。
「○○というモノは、動物実験によって効果が確かめられた。
ついては、この食材を使ってメニュー開発をしてほしい」
などといってくることが多い。
こんなときに、国家試験合格者としての「専門性」と
センスとが試される。
事業体の担当者にしろ版元の担当者にしろ、
自分の商品や企画内容については詳しいとしても、
食生活全体から見たときの「それ」の位置づけ、
健康の概念、その「マユツバ健康法」の持続性、
つまり一生、続けることができるのかどうか……
などについて、クールにチェックする必要がある。
最近は、医師だけでなく、学者や大学まで、
フードファディズムに加担することが珍しくなくなったし、
マスメディアはもともと怪しいから、
ここは栄養士のがんばりどころである。
で、結局、栄養士の責任の話になるのだが、
企画の主導権はプロたる栄養士がとるべきである。
マスメディアは専門外であったり、
真似っこだったり、マンネリだったりするから、
信用度を確かめるまでは、
諾否の返事には少し時間をかけよう。
このとき、会うたびに親近感が増すものだから、
ウエットにならないことが大事。
マスメディアのマンネリ、っていうかァ……
横着というか、その例は、
魚の話になると「さかなクン」が登場する、この安易さ。
日本には優秀な魚類学者はゴマンといるのだぞ!!
このバカタレが!!!!!
日本の栄養士のピンチ。
三流以下には大チャンス。
いずれにしても、いい時代に生きているじゃないか。
バカタレでない栄養士だって、
日本にはゴマンといるのだぞォ!!!
by rocky-road | 2013-03-18 00:19