「羊頭狗肉」本にご注意。

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正月、知人と最近読んだ本の話をしていたら、
その人は、「暇と退屈」をテーマとする本を入手したが、
むずかしくてさっぱりわからない、とぼやいていた。
そのテーマに大いに興味を感じて、
ぜひ見せてほしいとお願いした。
「予暇研究者」としては、無視できない書名である。
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数日後、届いた本に飛びつくようにして読み始めた。
362ページ、並製ながら大著である。
「まえがき」が5ページ、それから「序章」ときて、
これが17ページ、なかなか本論に入らない。
ジレてきて、結論から読もうとしたら、
結論1、結論2、結論3までがある。
いやな予感がしたが、予測どおり、結論がビシッと決まっていない。
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書物にしろ、講演にしろ、講義にしろ、
それは一種の作品だから、
結論はもちろん重要だが、論理の展開の仕方、
つまりプロセスにも価値がある。
だが、この本の場合、「論」というより饒舌なおしゃべりで、
いきなり退屈させてくれる。
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私なら、50ページもあれば結論を出せるが、
退屈というものを実体験させることが目的なのか、
362ページも費やして、退屈の辛さを強要する。
そのダべリングに使う体力と、
用紙のムダをいとわない著者と版元の太っ腹ぶりには感心さえする。
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一言でいえば、「はずれ」である。
その理由を詳述するのは時間と労力のムダなのでやめるが、
「暇」と「退屈」を哲学で解釈するとこうなるのか、
ということを教えてくれる。
そんなことをいったら、ホンモノの哲学者には
叱られるだろうが、この本に関しては、
哲学者の実力の低さを露呈している。
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1974年生まれ、東大卒で博士号を持つ大学教授だが、
「暇」や「退屈」を自分の頭で考えず、
もちろん、自分で定義することに時間をかけず、
ヒントを過去の哲学者や諸学者に求める。
バートラン・ラッセルの幸福論によると……、
ブレーズ・パスカルは……、
フリードリッヒ・ニーチェは……、
マルティン・ハイデッガーは……。
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「退屈」(ここでは定義を省く)について論ずるのなら、
ヒトのモチベーションとはなにか、人間の「欲求」とはなにかなど、
生物学的・行動科学的・心理学的・精神医学的視点で入っていくのが有効だと思うが、
この本には、それらの領域の用語がほとんど出てこない。
「モチベーション」というコトバはゼロ、
「ストレス」も数回、マズローの「5段階欲求説」にも触れない。
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こうして、論じていると、これ自体がダべリングになってしまうので、
このブログの論旨を明かしておこう。
つまり、看板倒れの本が、世の中には少なくない、
といいたいのである。
それと、この程度の人物が、3つの大学で教えている、
という現状は情報として指摘しておきたい。

「まえがき」の終わりの部分で、筆者はこう書く。
「この本は俺が自分の悩みに答えを出すために
書いたものである。自分が考えてきた道がいかなるものであるかを示し、
自分が出した答えをいわば一枚の画として描き、
読者のみなさんに判断してもらってその意見を知りたいのである。
  そのことを記して、この本を開始する」


公的な場で「俺」などと自称するのは、
世間に対して甘ったれている人間である。
「この本を開始する」などという、尊大な言いようはなんだろう。
自己中心的で、気弱で、甘ったれ気質がよく出ている。
さらに、読者を低く見ているような筆致が気になったが、
あとがきで、大学での講義をベースにしてまとめた本だ、とある。
それでわかった。改めて、学生たちの将来が気になる。
お子様タッチの文章、内容は、そこに原因があるらしい。
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「羊頭狗肉」とは、羊肉の看板を掲げて(上等品)
犬(狗)の肉(下等品)を出す、つまり「看板に偽りあり」の意だが、
そういう本は少なくない。
やはり本は(なんでもそうだが)、自分の目で吟味して選ぶことを
怠ってはいけない。そういう本の一例を、写真で示しておこう。
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by rocky-road | 2013-02-02 22:57  

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